「フーテンのトラさん」01(猫社会の掟)
みぃ物語(みぃ出産編)で登場した『トラさん』
『フーテンのトラさん』シリーズ
・・・つづけてしまった
・・・いや、つづけていいのか?
・・・この先の話、何も考えていないじゃないか!
・・・まぁ、
・・・いっか
と、いう事で・・・
見切り発車ですが、獣医の知識もちりばめたりできたらな~、なんて思ってます
・・・が、どうなることやら・・・
前回はこちら
トラさんはタマのしつこさに負けたようだ。
ある日、トラさんはタマと日向ぼっこをしながら話し始めたのでありました。
* * *
俺は神社の床下で生まれたんだ。
母ちゃんの名前は覚えちゃいねえ。
物心ついたころには母ちゃんはどこかへ行っちまってたからな。
でもよ、神社の人達はみんないい人だったよ。
妹のサクラと二人、よーく面倒を見てくれてなぁ。
神社のおばちゃんはいつもニコニコ優しくしてくれてよ。
よく缶詰なんかをくれたもんだよ。
おじちゃんは毎日庭掃除の時に声をかけてくれてよ。
おじちゃんの掃くほうきめがけて突進したりして、よく遊んだもんだよ。
おじちゃんもほうきをシャカシャカ動かしてくれたりして・・・
せっかく集めた落ち葉にも突進したりして。
その時は、
「こらっ!」
て、怒られたりしたけどな。
あの頃は楽しかったなぁ。
特にかわいがってくれたのは、神社のお嬢さんかな。
時々、鰹節をくれるんだよ。
俺がおいしそうに食べていると、優しく撫でてくれたもんだ。
妹のサクラは神社のおじちゃんの家に上がり込んだりもしてたっけな。
家の人も神社の猫が家の中に入り込んでも怒りもしなかったしな。
でも、その時の俺は家の中に上がり込むのは何だか違うんじゃねぇかな、なんて思っちゃってよ。
結局家の中には一度も入らなかったよ。
自由気まま、ってのが俺の性に合ってたのかもしれねえなぁ。
* * *
そんな幸せな暮らしをしていたトラさんであったが・・・
その当時、『ギン』という名のボス猫が神社の周辺で幅を利かせていた。
トラさんがそろそろ大人になろうかという頃だった。
それまでトラさんに何の興味も示さなかったギンだったが、ある日突然トラさんに睨みをきかせてきた。
そう、猫社会での
『恋の季節』
が始まったのである。
ボスであるギンは、自分以外のオス猫の排除にかかったのだ。
オスとしてはひよっ子のトラさんだったが、ギンはそんなトラさんをも許さなかったのである。
まだ体も小さくひ弱なトラさん。
「何するんだよ!」
と、粋がってはみたものの、ギンにかなうはずもない。
喧嘩にもならなかった。
ギンに目を付けられた以上、この住み心地の良い境内を出て行くしかなかった。
・・・これが『猫社会の掟』である。
行く当てなんてどこにもなかったが、もう神社には戻れない。
トラさんは後ろ髪を引かれながらも住み慣れた神社を後にするしかなかった。
こうしてトラさんの放浪の旅が始まったのであった。
神社ではトラさんの姿が見えなくなったことで、おじちゃんたちは方々を探し回ってくれたらしい。
特にお嬢さんはたいそう気をもんでくれたらしいが、結局トラさんを見つけることはできなかった。
・・・そんな事を後で聞いたんだけどな。
こんな俺を探してくれていたなんて、本当にありがたい話だねぇ。
「フーテンのトラさん」シリーズは、いつかきっと・・・つづく
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