「動物病院四方山話」08(きれい・きたない、のお話し)
私の名前は「みぃ」
動物病院で暮らしている猫
私が経験した動物病院での四方山話を紹介しています
前回の動物病院四方山話はこちら
看護師さんたちがお昼休みからあがってきた。
「田中さーん。」
「田中さんは、今日はきれいな人ですよね?」
「そうなの。鈴木さんは?」
「私は今日はきたない人だから、入院している子達の世話をしますね。」
えっ、何?
きたない人だから入院している子達の世話をするって、どういうこと?
ちょっと失礼じゃない?
って私も最初は思ったわ。
皆さんもそう思うわよね?
安心して下さい。
この場合の「きたない」っていうのは、「不潔」っていう意味ではないの。
手術をするときによく使われる言葉だったの。
手術をする先生や、助手として手術に携わる人はきっちり消毒して、滅菌された手術着を着て、滅菌された手袋をはめるのね。
そういう人たちのことを、「きれいな人」というの。
手術に携わるために「きれい」にしている人を基準にしているから、それ以外の普通にしている人は、分かりやすいように全員「きたない人」という事になるの。
だから、一般の人が連想する「きたない」ではないのよ。
でも、知らない人が聞いたらあまり良い印象は持たないわよねぇ。
「チーム・バチスタの栄光」の作者の海堂尊さんって、人のお医者さんなのね。
海堂さんが書かれた小説の中にも、研修医の人が手術前に手を洗っている時に、同じように「きれい」の話をしていたわ。
だから、人間のお医者さんたちもおそらく同じように使っているんだと思うわ。
・・・知らんけど(笑)
では、この場合の「きれい」になる方法を説明するわね。
ちなみに、この方法は里塚先生が当時やっていたもので、今は少し変わってきてるんだって。
まず消毒液入りの石鹸で手をごしごし洗います。
この時にブラシで手をこすりまくらなけらばいけないの。
そのブラシは、デッキブラシの先についているブラシみたいな形をしているの。
手のひらサイズだけどね。
昔は、馬の毛でできていたらしいわ。
今はほとんど人工的に作られたブラシだと思うけど。
まず手先(爪の部分)
→ 指
→ 指の股(指を広げて指の間までしっかりと)
→ 手のひら
→ 手の甲
→ 手首
→ 手首から肘まで、
の順番でそれぞれ1カ所あたり10回以上ゴシゴシ擦ります。
手が荒れているとヒリヒリして辛いのです!
その後、石鹸を洗い流し、乾かして消毒して出来上がり、
その後に手術用の服を着て手袋をはめるの。
これだけしないといけないので、「きれいな人」って言いたくなるのが分かってもらえるかもしれないわね。
でもね、今はブラシを使ってゴシゴシしなくてもいいんだって。
ブラシを使っても使わなくても、同じくらいきれいになる事が証明されたみたいなの。
だから、消毒液入りの石鹸で手と手でこすって、しっかり洗った後に消毒すればいいそうよ。
時代によっていろいろ変化していくわね。
あっ、そうそう、里塚先生の病院では、手術に直接携わらない人たちを、「外野」とも言ってたわ。
おそらく野球に例えて、手術に携わる人たちを「内野」、携わらない人を「外野」って言ってたんだと思うわ。
「今日私外野なんで、雑用があれば何でも言ってくださいね。」
みたいな感じで。
* * *
世の中にはいろんな分野のお仕事がありますよね。
それぞれの職種や、その業界でしか通じない言葉も多いと思います。
皆さんの業界でも、通じないだけだったらまだしも、全く違う意味にとらえられて誤解されそうな言葉なんかもあったりするんでしょうね。
おわり
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