止まり木

止まり木

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空色に、白い猫の毛1本。

30分ほど車を走らせて辿り着いたスーパー銭湯。 久しぶりに来てみた。 空は文句なしの快晴。青一色だ。心も晴れる。 青と一言で云っても200種類以上あるらしいので、これは「空色」と呼んでおこう。 いや、待てよ。 東西に目を向けるとやや白くグラデーションしているので、一色ではない…。でも、まあ、今日ぐらいは細かいことを考えるのはやめにしよう。 人工の瀧が見える露天風呂で、足を伸ばす。ついでに両腕も。文字通り『大』の字になって全身でお陽さんを浴びる。もはやこれは入浴ではなく日湯浴

    • ピアノの音

      降りしきる雨の音 さっきより勢いを増した あなたにさよならを告げられた 泣きたい私に代わって泣いてくれた 雨はいつしか小雨になっていた 遠くに小さな青空が見えた 庭の草花についた雨の雫が光っていた 窓から差し込む陽射しが優しく包んでくれた 私は1人になったのではなかった 私は1人になれたのだ 鍵盤の一番端のキーを叩いた 刻まれた音は刻まれた時間と同じように 何もなかったように消えていた 光っていた雨の雫も消えていた 青い空は新しい私を連れてきた 降り注ぐ空の青 さっきより勢い

      • 昨日から明日へ繋がる今日

        新しいノートを買った。 特にかわいいとか、かっこいいとか、気に入ったわけでも、使いやすそうだとか言うわけでもなかった。 文房具屋さんをぶらぶらと目的もなく歩いていたら、なぜかそのノートが目に付いた。 何の変哲もない、普通のノート。表紙に観葉植物の写真が印刷されているだけだった。 それまで、立ち止まることもなく店内をただ歩いていただけだが、そのノートと目が合った瞬間に立ち止まってしまった。 手に取り、ペラペラとページを捲る。 紙の匂いと同時に、懐かしくもあり親しみのある匂いが混

        • 36.5℃の優しい空間

          言葉を投げかけても そっけない返事ばかり 迷惑なのかと黙っていたら 他に好きな子できたの? なんて ネット越しのラリーはいつも あなたからのスマッシュばかり 求めているのは体の関係? 違う ほしいのは甘い時間 36.5℃ の優しい空間 放り出された過去の自分の 傷を癒してほしいんだ 2人の世界で 2つの傷を 振り向かせようとしているの? 弄ぼうとしているの? 踊る人見て笑っているの? 恋と呼ぶにはまだ遠い 恋のかけひき 苦手なわたし ひとこと「会いたい」と言ってほしい

        空色に、白い猫の毛1本。

          re:start

          自動車修理工場の始業開始時間までまだ3時間はあった。 近くの駐車場に車を停めて仮眠をとることにした。 ハンドルが邪魔になるため、助手席のシートを倒して眠りに落ちた。 強い日差しに耐えられなくなって、目を覚ます。 後部座席のシートを倒して女が寝ている。 かつて同級生だった大崎だ。 あとで妻が迎えに来ると言っていたのを思い出し、起こさないように静かに車を降りて、ハッチバックの扉を開けてラゲッジルームから荷物を取り出した。 車を離れて歩き出す。ちょうどその先から妻がやって来た。 「