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『ちょっと共感してほしいだけなのに』

20240331


 先日、浅草から都営浅草線を使って帰ろうと改札に向かう階段を下りていた時、天気が良い日なのに階段の端が濡れていることに気付いた。

その時ふと、地下鉄の床とか階段ってなぜか濡れていることが多い気がした。
 
 なぜかわからないけれど、普段から地下鉄の駅の構内はなんとなくどんよりしている気がするし、湿った灰色に囲まれているようなそんなコンクリートの風味が漂っている感じがする。

そんな駅の階段を濡らす水はどこから来ているかを考えた時、僕は、地中にある水が地下鉄の階段に染みだしている可能性がゼロではないと考えた。

もし、本当にそうだとしたら、その水は地下水ということになり、黒っぽくて汚く見えるその水も、案外、水質は悪くないのかもしれないという結論に、改札を抜けながら思い至ったのだ。


 
 自分の中でこれは、周囲の人に結構共感してもらえるような気がした。もし地下水がしみ出しているのであれば、その水の質が良さそうというのは、容易に理解できると考えたからだ。
 
この話を同期のアミダラインというコンビの和氣(わけ)君と陽常(はるつね)君にしてみたところ、大きめの声で「そんなことねえだろ!」とか「外の雨の水が入ってきてるだけでしょ!」と、リハーサルの合間であまり大きい声は適さない場にも関わらず、スタイリッシュな二人に両脇から強めにツッコまれて、「いや、でもほら地下水の可能性だってあるし、そうだとしたらさ、、、」といった必死の僕の弁明も彼らには届いていなかった。

おそらくあの瞬間、彼らの中で僕は訳の分からないことを言うやつというレッテルを貼られてしまったと思う。

僕は彼らが野球人であることを理解しているというのに。


 
 どうしてもこの自分の小さな発見を誰かに少しだけでもわかってほしくて、これまた同期の埼玉出身の松平(まつだいら)に、一通り事務的な話のLINEが終わった段階で、この内容を送ってみたところ、2、3日経ってから、件の内容には一切触れずに、強めの「駅のコインロッカーあるある」が送られてきて面食らってしまった。

どうやら僕とのトークルームを、「駅」を題材とした「あるある」を発表する場だと勘違いしているのだと思う。その「あるある」の内容が割と共感できるものだったことも悔しくて、次はやり返してやると勝手に意気込んでいる。
 
いずれにせよ、僕の周りの同期から肝心の共感は得られずに終わってしまった。


 
 しかし、ここまで書いていて考えたのだが、そもそも地下鉄の駅の構内のどこかから地下水がにじみ出ているとしたら、水の質どうこう以前に、それは施設の構造上の欠陥ということになりそうで少しまずい気がする。

小さな水の漏れが何か大きな事故につながってしまう可能性も捨てきれず、地下水がにじみ出ているなんて、そんなことあるはずないと否定したくなった。つまり、地下水がにじみ出ていたら、それはそれで問題な気がするため、もう誰にもこの話をするべきではないという結論に現段階で至っている。


 
それでもやっぱり、なんというかニュアンスでいいから、なんとなくでいいから、少しだけ誰かに共感してほしかったと思う自分もいる。



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