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邪馬台国は見つかっていた【4】正しい倭人伝訳で「水行十日陸行一月」問題は解決した



おじ:
読んでみてどうだった?

レン:
僕が本で読んだ訳文よりも現代語に近くて、わかりやすい文章でした。例えば人家の説明は、僕が読んだ本にはただ「千余戸ある」としか書いてなかったけど、この訳文には「人家は千戸以上ある」という書き方でした。それから、距離の表現についても、「東行して不弥国まで百里」という記述に対してこの訳文は「東に向かって百里行けば不弥国に着く」と丁寧に書かれています。だから曖昧だったり意味がよくわからない箇所がありませんでした。

おじ:
「漢文読み」は中国語を学ばなくても日本語に近い形にして簡単に読める素晴らしい技法なんだけど、それゆえに様々な読み方がされて、いくつもの邪馬台国論が展開された。これが、邪馬台国問題が複雑化した大きな原因の一つだよ。

ゆい:
なるほどね。

おじ:
余談だけど、中国を訪れた日本人が手紙を出すために、ホテルのカウンターで「手紙」と書いて見せたら、従業員がトイレットペーパーを持って来たというエピソードがある。これは日本語と中国語の意味が同じだと日本人が錯覚している典型的な例じゃないかな。それはさておき問題の箇所は次のようになるよ。

・ 水行十日 陸行一月
「水行十日または陸行一月」と読むのが正しい。
訳者註 「水行十日陸行一月」は「水路で行けば十日で行けるが陸路を行けば一月を要する」の意味である。

・ 連続説と放射説
連続的に読むのが正しい。

おじ:
これまで論争が続いてきた2つの問題は正しい翻訳で答えが出てしまったんだ。

ゆい:
じゃあ、これで邪馬台国問題は解決するのね?

おじ:
まあ、はじめの一歩というところだね。

レン:
ちょっと待ってください。失礼ですけど、この専門家の方の訳文は本当に正しいと断言できますか?「水行十日 陸行一月」もそうですけど、これまでの邪馬台国研究では違う説が多く唱えられていますよね。

おじ:
その質問はもっともだよ。僕は中国語を学んでないから訳が正しいかどうかは判断できない。でも僕はこの訳文を正しいと思っている。

レン:
どうしてですか?

おじ:
なぜならこの訳文をもとに研究に取り組んだ結果、邪馬台国の位置を特定できたからだよ。倭人伝の真の内容を理解し、疑問を一つ一つ丁寧に解決していったら、邪馬台国にたどり着けたんだ。

ゆい:
えっ!?じゃあ、おじさんはもう邪馬台国の場所がわかっているの?

おじ:
うん。僕の中では見つかっている。だからレンくん、僕の話を最後まで聞いてその内容に納得できたら、この訳文も正しかったと思ってもらえるかな?

レン:うーん。まだいろいろと疑問はありますけど……。とりあえず、この訳文が正しいかどうかは、僕の中では「保留」にさせてもらいます。

おじ:
それじゃあ話を進めよう。2つの答えが出たことで大きなメリットがある。このあとの邪馬台国探しがとても楽になるんだ。正しい訳により、投馬国から邪馬台国までは「水行十日または陸行一月」だからそれほど遠くない場所だとわかった。もし「水行十日と、さらに陸行一月」だったら、合計40日のかなり遠い場所になるからね。

ゆい:
確かに、これで邪馬台国の候補地もかなり減りそうだね。

おじ:
それから訳文の中にもう一つ重要なポイントがある。倭人伝には「七千餘里」とか「千餘里」という記述が出てくるんだけど、「餘」は「以上」の意味であり、「約」とか「余り」の意味ではないんだ。あとでもう一度出てくるから頭の片隅に留めておいて。さあ、このあとはさらに倭人伝の謎を解いていくよ。

ゆい:
これで倭人伝の「漢文読み」の限界を突破できたね。

おじ:
ほらほら。すぐそこに邪馬台国が見えてくるだろう。

2人:え?

おじ:
想像してごらん。弥生人たちの暮らす竪穴式住居、卑弥呼の王宮、古代のロマンを感じるだろう……。

レン:
あ、僕そういうのはいいです。

ゆい:
早く次に進んでちょうだい。

おじ:
……ハイ。

【1】~【4】のまとめ

■ 倭人伝の漢文読みによって邪馬台国問題は複雑化した
■ 倭人伝を正しく翻訳すれば邪馬台国を見つけやすくなる
■ 「水行十日 陸行一月」の正しい訳は「水行十日または陸行一月」
■ 伊都国以降の国々の配列については連続的に読む

【5】につづく


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