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恐怖を感じた激辛料理

おはようございます。
kindle作家のTAKAYUKIでございます☆彡
本日はとらねこさん企画、文豪へのいざない第11弾、《恐怖を感じた激辛料理》について書きます。書かせて頂きます。書く運命にあるのです!

過日、中華料理店の暖簾をくぐった。真っ赤な椅子に座ると、テーブルも真っ赤だった。僕は迷わず麻婆豆腐セットを注文した。お値段1200円。
「えっ…ご飯と麻婆豆腐って合うの?」と思うのは至極当然。だけど、とろみと挽肉と程よい辛さがご飯と合うのだ。麻婆豆腐丼でもいいし、今や麻婆ラーメンすらあるのだから。
「こちら麻婆豆腐セットです。ご注文は以上でよろしかったでしょうか?」
殆どの確率でこの間違った日本語に出くわすが、僕はいつもスルーしている。むしろ、この「よろしかったでしょうか?」が正しく思えてしまう今日この頃である。

それでは喫食。
湯気が立ち上っている麻婆豆腐を蓮華ですくうと、ふーふーしながら口に運んだ。
「うん…うまい。うまいじゃん。か、辛いッ」
僕は急いでグラスに入っている水を飲んだ。そしてすぐグラスに水を注ぎ、もう一杯飲んだ。
ビビった。マジでビビった。すでに口内がヒリヒリしている。
そう、麻婆豆腐の辛さは普通だが、山椒が辛いのだ。唐辛子の辛さではなく、あの独特のスパイス系? の濃さがとても辛い。
僕はお味噌汁を飲んだ。味がしない。味噌の味さえも飛んでいる。白米を食べた。もちろん味はしない。キュウリのぬか漬けも沢庵も味がしない…。
たった一口で僕の味覚は山椒に奪われてしまったのである。

後は大汗と冷や汗を流しながら、ただ漠然と食べ続けた。味がしくなった固形物を。
店内を後にした僕は、上着を脱ぎながら車に移動しエンジンをかけた。僕は車をうんならかしてコンビニに行くと、ロックアイスを購入。しばらくの間、僕は両頬を膨らませながら、ロックアイスを舐め続けた。
山椒の辛さ、要注意です!


過日、友人宅に招かれた。
「同士よ。乾杯!」
久しぶりに僕等は杯を交わした。
「美味そうなカツオじゃないか」
僕は早速、カツオのたたきを箸で掴んだ。そして葱とニンニクのスライスをのせると、大口を開いて食べた。
「うまい。これは酒にあう………辛いッ」
僕は急いで舌を出した。そしてハーハーしながら舌の熱さを空気で冷す。その姿は腹を空かせた野良犬のように見えるだろう。これは唐辛子の辛さだ。なんでカツオのたたきに唐辛子が入っているのだ?
爆笑しながら友人の奥方が、グラスに入った氷水を持ってきてくれた。
「同士よ。まさか一計を案じたのか?」
僕は友人に訪ねた。
すると友人がお猪口を呷ってから言った。
「笑止。なぜ友人の君に計略を用いるのだ? 疑心暗鬼に陥ってはならぬ」
僕はその通りだと思い、氷水を飲み続けた。
「言わなかった俺も悪い。君がカツオの上にのせて食べたのは刻んだ葱と青唐辛子なんだ。僕は辛党でね」
友人の告白に対し、僕はしぶしぶ頷いた。確かに友人は昔から辛いのが好きなのは知っていた。だけどここまで辛党になっているとは思わなかった。
「奥方も辛党なのか?」
友人はゆっくり頷いた。
「このカツオのタレもポン酢の中に葱、青唐辛子、みょうが、大根おろしを入れて作ってくれたんだ」
僕はお猪口を呷った。
「僕の舌はすでに味覚を失った。悪いが退却の鐘を鳴らしてくれないか」
僕の要請に、友人が笑った。
「マテ。まだその時ではない。さあ、飲み直そう」

その後も奥方が拵えた、ニャンヨムチキン、シーザーサラダ、トムヤンクン、そして〆のグリーンカレーまで、全てが辛かった。僕の舌はずっとヒリヒリしていた。酒を飲んでいてこの辛さだ。もし素面だったら僕はちゃぶ台をひっくり返し、友人との関係を解消していたかも知れない。
まるで激辛選手権に参加しているかのような食事会だった。
帰宅した僕はしばらくの間、トイレに籠っていた。

みなさん、辛い料理はほどほどに。


【了】

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