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ノスタルジックな味

みなさん、おはようございます。
kindle作家のTAKAYUKIでございます☆彡

過日。チンラをどうしようかと悩んでいた。あっ…チンラとはランチのことで、まあ自分なりに気にっている言い方なので悪しからず。

新店のように外観が素敵なラーメン屋にするか、はたまた外観が乏しく、看板に書かれている字が薄くてほぼ読めない老舗店にするか…。

結果、後者のおそらく老舗であろう中華料理屋へ入店した。

入店すると、まず店内がとても暗い。若気の至りで何回か行った『おねーちゃん』のお店かと勘違いするくらいの暗さ。それでも店内には4人の客が飯を喰らっていた。

「いらっしゃいませ。どうぞ」
店員のおばさんに言われ、僕は2人掛けのテーブルに座った。
「おすすめは何ですか?」
僕が店員のおばさんに聞くと、「全部だよ」と厨房から声が飛んできた。
「そうなの。全部なの」って、店員のおばさんが苦笑しながら言った。

そこで僕は、本日のチンラメニューである「五目そば」を注文した。

薄暗い店内では、スマホを見るだけで目が疲れる。

出された麦茶には氷が沢山入っていて、冷たい。お腹を壊しそうだ。

10分後、五目そばが到着した。

熱々の餡がかかっている五目そば。烏賊、人参、筍、玉ねぎ、ニラ、豚バラ、叉焼、きくらげ、メンマ、白菜が入っている。

「熱ッ」

僕は口の中を火傷した。
熱々なので、中々麺までたどり着かない。

出された麦茶になぜ氷が沢山入っていたのか、その理由が理解できた。これは初めて入店した客は、必ず口の中を火傷することに相違ない!

だけど味は大変美味しい。
本当に子供の頃に家族・親戚と食べに行った中華料理屋の味だ。テーブルが回転して、有料で円形の「おみくじ機」が置いてあった、あの頃の味だ。



熱々の五目そば。これで700円はお安い。この器とレンゲがレトロですよネ☆彡


ようやっと面が顔を出した。
麺は細い縮れ麺。
これが餡と合わさって、最高に美味しい。
まさに「ノスタルジックな味」である。

僕は大汗を流しながら、五目そばを完食した。

僕が食べ終えると同時に、店員のおばさんが言った。
「あがっていいの? それぢゃあ」

今日は朝から雨が降っている。時刻は13時20分。
おそらく大将が、「もう客はこねー」と判断したのだろう。

僕は大汗をかいたあとで麦茶を飲んでいると、大将が厨房から現れた。

おそらく齢70を超えているであろう大将。背筋こそピンとしているけど、足元がおぼつかない。
ゆっくりと椅子に座った大将。
両腕を組んだあとで、僕の方を向いた。

大将の丸ブチメガネと、僕の裸眼1.2がぶつかった。

大将の顔が一瞬だけどニヤついたように見えた。だけどあまりにも店内が薄暗いので、確認はできない。

だけど本当に大将がニヤついたのなら、「もう食い終わったんなら早く帰ってくれ。店を閉めて一杯やりてんだョ」っていうサインだと思うのだ。

すると、僕の後ろの男性客が、「麦茶ください」と大声で言った。

大将はわずかに視線を上げると、「そこ。見える?」と言った。
「見えねーよ」
男性客がツッコんだ。
僕は吹き出しそうになった。
「ちがう。そこの扉を開けるんだよ」
この説明じゃ、初めてきた客が分かる訳がない。

男性客は尚もブツブツ言いながら、扉を開けて無事に麦茶のおかわりに成功した。

もっと店内にいたいけど、大汗をかいたので退散しようと思う。

「ごちそうさまで………」
「700円ネ!」
僕が「ごちそうさまでした」と言い終える前に、大将が被せて言ってきた。
どんだけ早く店を閉めたいのだろうか。

僕は財布から5000円札を取り出し、大将に手渡しした。
「はあッ」
大将の小さなため息が漏れた。
僕は再度笑いそうになるも、何とか堪えて店内をあとにした。

傘をさした僕は、どこか懐かしい気分に酔いしれながら、久しぶりに路線バスに乗った。

僕のノスタルジックな味は、このあともしばらく続いた。


とても楽しいチンラとなったとサ。



【了】


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