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落選作の講評をもらった話

去る11/23に東京ビッグサイトで開催されたCOMIC CITY SPARKの出張編集部に行ってきました。コロナ禍前以来なので5年ぶりくらいかな?
そこで先日「週刊少年マガジン原作大賞」に応募し落選ホヤホヤの下記作品の講評を頂いてきたので、備忘録+反省としてここにメモしておきます。


出張編集部とは?

COMIC CITY Pro Debut Project 新しい才能の探求

COMIC CITY プロデビュープロジェクトは、各漫画誌編集部とCOMIC CITYが、共に作家を応援し、新たな才能を探求するコラボ企画として、2010年5月スタートしました。 同年10月には多くの協力を得て、COMIC CITYの参加者からプロ漫画家への輩出が始動しました。アマチュアからプロへ、趣味を職業へと、発表場所の垣根を超えて『これから面白い漫画』を創る新しい力を発掘したい。 あらゆる創造が漫画界に輩出されるキッカケを目指す、コラボレーション・プロジェクトの提供です。

COMIC CITY「プロデビュープロジェクト」
https://www.akaboo.jp/PDP/index.html

平たく言えば、同人誌即売会内に出版社が出展し、現役の編集者さんが無料で指導をくださる……それもプロ・アマチュア問わず、一次創作・二次創作・エログロTLBLNL問わず! というとんでもない企画です。
上記は二次創作をメインとしたCOMIC CITYからの引用ですが、コミティアや地方のガタケなどでも行われています。先駆者はコミティアみたいですね。

見て頂けるのは基本的に漫画作品のみです。
私は一次創作のネームを持ち込み、指導を頂いた後に「あの……こんな話も考えてみたんですが、企画としてどうでしょう?」といった流れで見て頂きました。
ちなみにマガジン編集部ではないです。

落選の理由を知る

読んだ瞬間の編集者さんの反応は「ああー……(苦笑)」でした。その瞬間、「あ、これは間違いなく″落選作”なんだな」とわかります。
読者の反応を生で感じられるのは対面の最大のメリットですね。

まず指摘されたのは下記の点です。

  • セットアップが長い

  • キャラクターの行動原理が弱い

  • 物語のゴールがわからない

本当に基礎的な部分です。自分ではできていたつもりでしたが、読者には全く伝わっていませんでした。
受賞どころか、作品として成立してさえいなかったのです。

よりよい物語にするのなら

自作品「スカイライツナイツ」は、ジャンルで分けるなら「職業モノ」です。「職業モノ」を活かすシナリオ展開は「プロジェクトX」です。
つまり……

「新幹線を作った男たち」は「社内の一番の落ちこぼれ部署」だった――

これ!!!
目的(ゴール)、主人公の立ち位置、ゴールまでの道のり(長ければ長いほどよい)
上記の全てが一瞬で伝わり、「読みたい!」と思わせる力がある。この力が、私の作品にはありませんでした。

ではどうすればよかった?

主人公のヒナセはパイロットですが、これはもう地下100メートルを掘る土木作業員とかでよかった。
最初の1ページで宇宙を飛ぶヒナセとパートナーキャラのリヒトを描いておいて、次のページでは地下深くでドリルを回すヒナセを描く。「ま〜〜〜た地面掘ってマンションマンションマンション! 宇宙エレベータなんて全然完成しねーじゃねーか!!」とでも叫ばせながら。

で、リヒトは変わらずエリート国際線パイロットとして大空を飛んでいる。ここで幼馴染の二人に対比が生まれ、ヒナセの宇宙への憧れは自尊心と共にいっそう踏みにじられます。

主人公にちょっと親近感が生まれてきました。

薄々気付いてはいましたが、「現役パイロットが宇宙を目指す」というストーリーには少なからず「いやそれなりのとこ飛んでんじゃん、現状で満足しろよ」って思いが湧くんですよね。
見て見ぬふりで書ききってしまいましたが、無視すべき部分ではなかったと猛省しました。

そんなこんなで、夢を諦めきれない土木作業員のヒナセは何とかして宇宙を目指すすべを探し奔走します。
そしてヒロインのロザリアと出会う。

彼女は応募段階では「元宇宙飛行士の祖父の夢を叶えたい天才エンジニア」として書きましたが、まるで弱かった。
世界は彼女の祖父を宇宙技術界から永久追放するくらい過激でよかったし、彼女は「私の知識と技術で全てのデブリを駆逐し、お爺ちゃんの名誉を取り戻すんだ! その時は全世界に土下座させてやるから待ってなさい!!」
くらいのストロングスタイルでよかったのです。

主人公のヒナセも、3話の中には書きませんでしたが、幼い頃にリヒトの過失で片目を失明し義眼(人並みに見える)を入れている──という設定があります。
それが枷となりパイロットとしての未来が絶たれているのですが、片目がないから何じゃい! 四肢をもがれようが異端で焼き殺されそうになろうが血ヘド吐いて宇宙を目指せよ! 「チ。」読め!!!!
……と今では思います。それが主人公なのだから。

デブリの空白の航路も、リヒトのチート能力で見つけるなんてファンタジックな方法じゃなくて、なんなら全世界のツールが同時に見つけたって構わない。
それをきっかけに全世界で最初で最後の宇宙飛行士の募集がかけられ、主人公は夢を叶える唯一のチャンス──超難関の宇宙飛行士採用試験に挑む!
……というシナリオなら、今回のマガジン原作大賞も少しは戦えたのではないでしょうか。

まとめると、

  • 主人公の目的は宇宙に行くこと!

  • そんな主人公の仕事は地下100メートルを掘る土木作業員! 空遠いなァ(物理的に)

  • 幼馴染かつ親友は優雅に空飛ぶ国際線パイロット! 死にたい!

  • 世界は勝手に戦争を始め宇宙をゴミだらけにし、宇宙開発を凍結させたに留まらず、宇宙に関わる技術を規制! 更に宇宙飛行士を危険因子として迫害するまでに! 圧倒的悪!

  • ヒロインはそんな世界にブチ切れ、デブリ駆逐を掲げる狂気の天才エンジニア!

  • 果たして主人公は宇宙への切符を手に入れることができるのか!?

こんな風に組み直したら、幾分マシなものができる気がするのです。
主人公なので当然最終的には宇宙への切符は手に入れますが、そこに至るまでに彼が主人公たる理由、他者にはない秀でた能力をどんどん見せていく……これがキャラ立てであり、作品の面白さになるのでしょう。
(ここまで書いて思いましたが「怪獣8号」や「ヒロアカ」の系譜ですね)

宇宙を相手にするには主人公の熱意、狂気が足りなかった。
宇宙を夢見させるのなら、もっと地面に縛りつけてやればよかった。

そんな感じです。

上手くなるために

つらつらと書きましたが、これらの気づきを得るのに編集者さんとお話しした時間はわずか5分程度です。
それもメインのネームの指導ついでの講評ですから、「とりあえずざっと見た感じで言えるのはですね……」程度。
それでも自己分析で辿り着ける遥か先まで前進できたのは明白です。

ここ1年半ほど色んな賞に挑戦しては落選し、感じたのは「講評の得られない賞への応募はあまり意味がないなぁ……」ということです。
達成感は得られますし、締め切りに間に合わせる力もつく。ただこれは二次創作でガンガンに本を出してきた私のような人間は真っ先に身につける能力なので……。

目の前で読み手の反応を見て、講評とまでいかなくても生の感想を聞くことに勝るものはないです。
1週間かけて自己分析したところで、そんなものプロは3秒で見抜いちゃいますし……。
これらを無料でプロに頼める出張編集部は本当に最高の企画だと思っています。出版社への直接持ち込みとは違うメリットもたくさんあります。
常に相談できる編集者さんのいないアマチュアの修行の場として、活かさぬ手はありません……!

最後に

あまりにも未熟だった自作品ですが、こんな風に紹介して頂けてすごくすごく嬉しかったです。
二千を超える応募作の中で見つけてくださってありがとうございます。

また、今回メインのネームとともに他社落選作の講評をくださったトムスラボさん、貴重なお時間をくださり本当にありがとうございました。
多くの漫画をアニメ化してきた老舗アニメスタジオのトムス・エンタテインメントさんならではの、作品に命を吹き込むノウハウ、想像力、創造力の数々には心が躍りました。
どんな物語の中にも面白さの種を見つけ出し、大樹に育て上げようという気概。それは信念というよりも愛情に近くて、私の拙い作品を目の前でどんどんブラッシュアップして「ね、こうしたらもっと面白くなるでしょう?」と笑顔で語る姿の眩しさ。
私の作品はここまで面白くなれるのだという希望だけで、私はこの先も描いていける気がします。

他にも多くの出版社の方々に読んで頂き、本当にあらゆることを教えて頂きました。
創作は孤独な作業なんて誰が言ったのか。こんなにも人に教えられ背中を押されて描いている!

次はもっといいものが描きたいし、今回の落選作も愛着のあるうちにネームに起こしておきたいなと思いました。
今回頂いたご縁も全力で縋らせて頂きます!

ものを描くのは本当に楽しいです。
少しずつでも前進していきたいものです。


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