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ミャンマー訪問記②

ミャンマー訪問記② 〜アウンクリニック〜
 
 ミャンマーでは5つの精神科医療機関と3つの非政府組織活動を視察した。そのどれも心に残っているが全てについて書いていては誰も読む人がいなくなる程長くなる。主には私の今回の視察のメインの目的であったアウンクリニックについて書く事にするが、その他についても簡単に触れておきたい。国立の精神科病院は広大な敷地に1600床。コロナ禍を経て800床にサイズダウンしたという事で使われていない病棟もあった。玄関には使用可能な薬剤名称が掲げられており、リスペリドン、オランザピン、アリピプラゾールと馴染みの名前が並んでいた、クロザピンまであったのは意外であった。どう管理されているのだろう。製薬会社から寄贈された事が書かれた設備もあった。薬物療法のみ実施しており長期入院者も多いという事だった。私立の病院については、ほとんどが20床程の小規模病院でアットホームであった。医療費を個人負担しないといけないという事で来れるのは一部であるとのこと。入院は薬物やアルコール依存の方が一番多く、うつ、双極性障がい、認知症と続く印象だった。統合失調症の方はどこも少なかった。

 私が行きたかったアウンクリニックは視察二日目の午後に行った。 素朴な街並みにある、普通の家のような場所であった。絵画スペースであるthe roomと先生家族が住む居住スペースがあり、どちらもオープンな場所であった。the roomでは既に5・6人の当事者が創作活動をしていた。一人は日本からの訪問者にウェルカムとボードを作ってくれていた。Aung Minさんは「この人は絵の具をたくさん使う」と笑いながら話していたが、本当にホイップクリームのようにキャンバスに絵の具を盛っており、私がこの場所を管理していたら「お願いだからやめてくれ、みんなが使うからもう少し少なく」と間違いなく注意していただろう。この様子を見ても、どれだけ制作者の思うように実施せているかがわかった。制作している方々はとても穏やかで、英語で話しかけても動じることなく、笑顔を返してくれたり、かたことの英語で返してくれたり、ミャンマー語で返してくれたり、作品を立てて見せてくれたりと、大いにアクションを返してくれた。対人緊張が高い特性がある方も多いだろうに、これだけ対応できるとはいかにこの場が彼らにとって安全で安心できる場になっているかが伝わってきた。

 倉庫には多くの作品が積み上げられており、Aung Minさんが書いたポスターにはNO turauma,No artと書かれていた。ミャンマーの当事者は精神疾患とは別に多くのトラウマを負っていると話してくれた。それは、政治的な事もあるし、家族から友人から社会から受けたトラウマだという。その説明を聞いてアートは、そのトラウマを自分ん中に包み込むことができるとても優れた手段である事を感じた。トラウマは消そうとしたり外に出してしまおうと努力をすると、心や身体に負担が現れてしまう。なので、アートを用いながら自分の中にそっと置いておけるようになるといいのかなと思いながら聞いていた。 また同じポスターにはcricis=denger+oppotunityと書かれており、危機的状況には回復の機会も含まれると話してくれた。cricisに希望を見出す言葉はとても勇気づけられた。 person centerd appuroach,rights-based approachについて質問すると、一緒に料理を作り、一緒に食べ、とにかく一緒にいる家族のように、そして時には友人ように振る舞い、病者としてみない事が重要であると話した。話の中でも「saef」という言葉がよく聞かれ、ここに集う人達にどう安全と感じてくらうかを考え、具現化しているのだと思った。 薬剤治療は最小限にしているとのことだった。とにかく暖かい空間と人々であった。

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