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斜線堂有紀先生『不純文学』読書感想文

   解説

 この国にこんな場所があったのかと目を丸くして入った幻想的な森の奥で出迎えてくれたのは、おとぎ話のようなレストラン。
 かの物語のように、入店の際に多くの注文をつけられるようなことはなかったものの、メニューは少なく、コースが二つだけ。
 あなたは上のコースを、友人は下のコースを、それぞれオーダーした。
 一つしかないテーブルにあなたと友人は向かい合い着席して料理を待つ。
 絶妙なタイミングで運ばれてくる皿の上に彩られていたのは、食材たちの奏でる交響曲。
 それらは目と耳と鼻を楽しませ、それ以上に口を喜ばせた。
 食事を終えると、おもむろに友人はこんなことを語り出す。
 実は自分はマジシャンなんだ。それも世界的に有名な。
 友人がマジシャンでもなければ世界的に有名な何者かでもないことは、あなたが一番よく知っている。
 それでも優雅な食事の余興として友人のジョークにつきあうことにした。
 なにか手品でも見せてくれるの? と、あなた。
 よくぞ訊いてくれたと笑みを浮かべた友人は紙とペンを取り出し、ここに何か言葉を書いてほしいと言って、背を向けた。
 すぐにあなたは一つの言葉を思い浮かべるけれど、それは世界であなたしか知らない、あなただけの特別な言葉。
 こんなことを書いても理解されないだろうし、なんだかいじわるをしているみたいだったので、ありふれた言葉を書いて、準備ができたと告げた。
 こちらを振り向いた友人は、ではその紙をこの中に入れてと言って、封筒をわたしてきた。
 その通りにするあなた。
 すると友人は、どこに隠していたのか、マッチを擦って封筒を一瞬で灰にした。
 驚くあなた。とはいえ熱さも何も感じなかったので、手品用の仕掛けなのだと理解する。
 友人は天井を指さし、そこから秒針のようにゆっくり指先をある場所に向ける。それを目で追うあなた。
 離れた場所に小さなテーブル。
 その上にカゴ、その中にナイフとアボカド。
 持ってきて切ってみてと言う友人。言うとおりにするあなた。
 アボカドの中には大きな種ではなく、ビニールに包まれた紙。それを開くと、あなたの書いた言葉が。あなたの筆跡で。
 確かに炎に包まれたはずの紙が復活していた。
 そういう手品だろうと予想はできたけど、それでもそれなりに驚く。
 このマジックを成立させるトリックはなんだろうと考えてみても、答えはみつからない。
 小さな謎を残して、ディナーはお開きに。
 数日後。
 本屋で特に理由もなく雑誌たちの表紙を眺めていると、目を疑う。
 有名なファッション誌の表紙を友人が飾っていたのだ。
 有名なマジシャンだと紹介されている。それも世界的に有名な。
 思わず店を飛び出して、近所のコンビニに入って同じ雑誌を確認すると、当然、表紙には友人が。
 自分をからかうためにやっているのだとしたら手が込みすぎていると、スマホを手に検索サイトに飛び、友人の名前を入力。
 シロナガスクジラを検索すればその詳細が表示されるように、世界的なマジシャンのプロフィールが画面にあらわれる。
 困惑。
 スマホをしまって、雑誌をめくる。
 読み応えのあるインタビューのしめくくりに、これを読んでいるあなたにとっておきのマジックをお見せしますと、友人は読者に語りかけてくる。
 お手持ちのスマートフォンでここにアクセスしてみてくださいと、ページのすみにQRコード。
 この雑誌はあとで必ず買うのでと心で誓って、スマホでそれを読み込む。
 そして表示されたものを見て、思わずあなたはスマホと雑誌を落としてしまう。
 世界であたなしか知らないはずの、あなただけの特別な言葉。
 あのとき紙に書こうとして、書かなかった言葉。
 それが表示されていた。
 隣で小さな悲鳴。
 見ると、スマートフォンを片手に、雑誌を開いた女性が固まっていた。
 あなたは察する。
 彼女もまた、自分しか知らないはずの大切な何かを、見抜かれてしまったのだと。
 イタズラ好きの子供が用もないのに何度も扉をノックしてくるように動悸がとまらない。
 一体、この不思議は何なのか。
 このマジックはどこからはじまっていたのか。
 あるいは
 自分はまだマジックのなかに閉じ込められたままなのか────。

斜線堂有紀の新たな傑作『不純文学』は、あなたを否応なく神韻縹渺しんいんひょうびょうの世界へといざなってしまうだろう。
 それは世界初の言葉の連なりによるマジック。
 ミステリーでもコメディーでもドラマでもなく、もしくはその全て。
 マジシャンがシルクハットをはずせば、鳩か旗が出てくるお約束は、ここには一つもない。
 124あるエピソードは、それぞれ異なるスパイスのように、あなたに未知の刺激を与えてくれるだろう。
 はじめから読んでもいいけれど、まずは魔法の杖をふるように、無意識にめくったページから読んでみてほしい。
(編集者注。『魔法の杖』ジョージア・サバスのベストセラー。書物占いビブリオマンシー。全てのページにメッセージが書かれており、知りたいことを思い浮かべながら開いたページにその答えが記されているといわれている。Amazonでも購入可能

 世界初の言葉によるマジックというのは語弊があったかもしれない。
 思えば斜線堂有紀はデビュー当時からマジシャンだった。
 卓越したセンスとストーリーテリングに僕たちは魅了されつづけた。
 まだ名前のついていない自然現象のように、物語に吸い込まれてしまう。
 それが斜線堂有紀が僕たちにみせるマジック。
 困ってしまうのは、斜線堂有紀のマジックはときどき日常生活に影響を及ぼしてしまうこと。
 遅効性のおとぎ話みたいに、読後に、ふと、世界が違って見えてしまう。
 ただの友人が、実はマジシャンだったと明かされてしまうような。
 物語が背中から肩を叩いてくる不思議。そこにタネも仕掛けもない。
 いや、タネはあった。
 日常と寓話の境界を曖昧にする124のタネ。
 僕はそれを『不純文学』と呼ぶ。

 ところで、僕たちはなんと幸運な時代に生きているのだろう。
 世界最高のマジシャン、斜線堂有紀のパフォーマンスがリアルタイムで目撃できるのだから。
 ショーはいつだって満席。だけど小説チケットはアラスカにいたってWi-Fiがあれば電子で買える。
 僕たちは今日もそれを最前列で楽しむんだ。


 書評家紹介
 コンラッド・アンウィン
 英国の奇術師。史上最年少で数々のコンテストでグランプリに輝き、SNSのフォロワー数は2000万人以上。TIME誌の発表した最も影響力がある100人に選ばれ、国や世代を超えて愛されている。
 日本語の勉強用に購入した斜線堂有紀の『私が大好きな小説家を殺すまで』に魅了され、ファンに。
 マティーニとカニカマを好む。


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斜線堂有紀先生の二次創作で電撃小説大賞四次選考まで残った話。

2019年11月
斜線堂有紀先生の『不純文学』にありえないくらいハマって毎日のように、二次創作活動に勤しんでました。
その一部を紹介。



『ミシュラン』
 先輩と一緒に地獄に堕ちた。聖人君子の如く生きてはいないものの、血の池に頭を突っ込まれなければ贖えないほど罪を重ねた覚えもない。閻魔大王に理由を訊くと、先ほど部室で手に紙くずを持った先輩が少し離れた場所にあるゴミ箱に向けて、これを入れられたら夢が叶う、はずしたら地獄に墜ちると宣言して紙くずを投げた。そして、はずした。だから、堕ちた。のだそうだ。納得はできないけれど、筋は通っている。
 それから数日後。地獄での生活もそれなりに慣れてくるもので、今では針の山も足ツボマッサージ器具として日々私の血行を促進させていた。
 さらに数日後、天から何かが降臨し、そこに魑魅魍魎たちが集まっていく。それは一本のひどくくたびれたニンジンだった。察するに、あれに掴まると地上に戻れるのだろう。
 仔犬を持ち上げる強度もなさそうなニンジンに無数の亡者が群がり、考えるまでもなくニンジンは崩れて残骸だけが転がる。それを端から見ていた先輩は、その残骸でキャロットグラッセを作ってみせた。それは味も見た目も絶品であり、地獄の住人を虜にした。
 以来、天からのニンジンは先輩の腕によりグラッセされ、鬼や罪人たちに舌鼓を打たせつづけた。そんな先輩はどこか不服そうで、その理由を訊くと、隠し味にカボチャを入れるとより美味しくなるのに地獄では手に入らないのが惜しいというのだ。
 そこで先輩は気づいてしまう。少し離れた場所にゴミ箱があり、自分の手には紙くずが握られていることに。
 先輩は宣言する。これを入れることができれば、カボチャが手に入る。はずせばニンジンを失う。放たれた紙くずは、優雅な軌道を描きながらゴミ箱に入る。
 地獄に喝采が響いた。

『グンペイ』
 夏休みに先輩と同じ会社でバイトをすることになった。
 そこはゲームメーカーであり、私と先輩はテトリスの新しいテトリミノとして採用されたのだ。
 私に与えられた役割は██████████だった。
 間違いなく一番人気の████████よりも一段多いブロックである。
 つまり私を上手に扱えば掟破りの五段同時消しができることになる。これはテトリスの革命だ。
 一方、先輩は〆になっていた。
『〆切』という単語以外でお目に掛かったことのないあの記号である。
 先輩にどんな効果があるのかわからないまま、私たちはゲームの世界に入っていく。
 案の定、私はプレイヤーの気分を高揚させ、ここぞというときに投入され、スコアアップに貢献した。
 案の定、先輩はプレイヤーを困惑させ混乱させ、人によってはゲーム機に物理的な怒りをぶつけるものさえいた。
 しかたなかろう。〆である先輩は他のどのブロックと混ざることもなく、孤高の存在としてゲームに君臨しているのだから。中世を舞台にした物語にウォシュレットが出てくるような異世界観。
 とはいえそれは与えられた仕事でしかなく、夏休みの間、私はユーザーから愛されつづけ、先輩は舌打ちをされづづけたとしても、私と先輩の勤務時間は同じであり、私と先輩は全く同じ額の給料を受け取った。
 給与明細を見て先輩は、割のいい仕事だったな、冬休みもやろうかな、といった。

『オックスフォード公』
 先輩が記憶喪失になって一週間経過したある日の放課後、勢いよく部室のドアを開いて、なんだかご機嫌な様子。
 記憶が戻ったのかと思えばそうではなく、すごい発明をしたので見てくれと言って、丸いパンを出してきた。
 私には、ただのあんパンにしか見えない。
 実際、半分に割ってみると、つぶ餡が入っていた。どうしようもなく、あんパンだ。
 どうだすごいだろう、と得意になっている。西洋のパンと日本の餡を融合させた画期的な食品だと胸を張る。翌日には細い金属のフレームにレンズを入れて、ものを見やすくする『メガネ』や、プラスチック製の容器『ペットボトル』などなど、先輩の【発明】はつづいた。
 先輩はどうなってしまうのだろう。
 数日後。
 それでこのスプレー缶の中には四次元粒子と反次元粒子が入っていて、これをスプレーしたものは、過去と未来、望んだ形状にトランスフォームすることができるんだ。
 そんなことを言うと昨日持ってきたタイムマシンのほうが便利だと思うかもしれないけど、実はあれにはまだ──。
 興味深いことに、先輩の【発明】は日々、飛躍的且革新的な速度で進化をつづけていた。
 明日はついに念願の、聞いたこともない概念と理解できない論理を融合させた、現代科学では説明のつかない事象をお披露目してくれるのだという。
 先輩はどうなってしまうのだろう。

『Üトピア』
 ある日、私は先輩の先輩となり、先輩は私の後輩となっていた。
 夜中にこっそりと私の中にある後輩成分を削減し、空いたスペースに先輩由来の成分を注入したのだそうだ。逆に先輩は自分の先輩成分を減らして、後輩成分を増やしたという。
 本来であればお互いの先輩後輩的要素を中和して同級生にしたかったのだけれど、まだ調整が上手くいかず、体内の成分を安易に逆転させてしまったと先輩(後輩)は私に頭を下げた。
 先輩(後輩)は世界を調整したいのだという。
 それから鍛錬を重ね技術を向上させた先輩(後輩)は手はじめに長年世界が求めていた植物由来の成分だけで作った食肉を完成させてしまう。そんなニセ肉は認めないと声を荒げる食肉業界の重鎮に、味も香りも感触も完全な肉でしかないと太鼓判を押させる偉業を成した。
 他にも、未成年に成人由来の成分を注入することで法的制約から解放された新成人の誕生や、男性由来の成分だけで構成された女性、女性成分だけで構築された男性など、人類は各々の望むかたちに調整されつづけたのだ。
 誰もが生物学的になりたい自分になることのできる世界。
 ここは人のつくりし楽園。しかし、そこを破壊してしまうのも、やはり人だった。
 天から与えられた体に手を加え、自然の摂理に逆らうなど神への冒涜だと非難され、その声は拡大し、世界に波及し、私たちは調整人と呼ばれ新しい差別の標的にされた。
 かつて誰もが渇望した理想の社会を手に入れたはずなのに、叶った瞬間、つばを吐く。人間ってユニーク。
 結局、全ては元通りになったけれど、ことの発端である私と先輩の立場逆転がなかったことになった点においては、どこか安心している自分もいた。


20本くらいは書いていたような記憶があったのですが、そんなもんじゃなかったです。
2019年の11月から12月にかけて、あなたは何をしていましたか? と面接官に訊かれたら迷わず、不純文学の二次創作を毎日書いてましたと答えます。
これで相手がネットフリックスだろうと任天堂だろうと採用間違いなしですよ。黒板消し係として。
で、問題は次のこちら。


『架空過去形』
 私と先輩がアニメになった。
 監督、脚本、音楽、キャラクターデザインなどは既に決まっていたけれど、声は本人の意見を尊重したいといわれ、声優の審査に参加する運びとなった。
 しかし、私の声のオーディションを受けた女の子たちは明らかに声も顔も私より可愛らしく、なぜ私の声帯なんかに応募したのですかと、純粋な疑問をお訊ねしたくなったものの、本人とはいえ素人がでしゃばるのもなんだと思い、誰が私を演じるかは偉い人たちにお任せした。
 一方の先輩は網膜に焼きつけるが如く声優陣のプロフィールに目を通し、参加者全員に専門的な質問をいくつもぶつけていた。
 先輩、まさかの声優オタク。
 壮絶なオーディションの末、最終的に先輩の声帯候補は二名に絞られた。
 一人は四十代でキャリアも人気もあるベテラン。声も先輩のそれにかなり寄せてきており、油断すると先輩の声と間違えそうになる。
 もう一人はデビューしたての二十代。正直、声は似ていない。だけど、うまくいえないけど、この人の声はちゃんと『先輩している』のだ。
 それは先輩とそれなりの時間を共に過ごした私にだけわかるニュアンスなのかもしれない。
 それもそのはず、この新人さん、小さいころから先輩のファンだったらしく、先輩の小学校から高校までの卒業アルバムも極秘で入手して読破どころか丸暗記しているらしい。
 圧倒的な技術を持つベテランと情熱だけは負けない新人の戦い。先輩の掲げた腕はベテランのものだった。その選択に私はなぜか心の中で幻滅のランプを点滅させてしまったけれど、どういうわけか新人さんは、それでこそ先輩ですと、むしろ納得していた。どうやらファン目線では先輩の選択は正解のようだった。
 後日、動画サイトにアップされていた私と先輩のPVについたコメントに『先輩の声は上手いけどちょっとイメージと違うかな』というものを見つけ、私はそのコメントにいいねをした。


このエピソードを我ながらものすごく気に入ってしまって、といいますか『私と先輩がアニメになった』という書き出しが完璧すぎて、これ無意識に原典からパクったんじゃないかって思えて、速やかに読み返しても該当する箇所が見あたらず、おそらくオリジナルである可能性が高いという結論になりました。
そして、そこから派生した短編を一つ書いて電撃小説大賞におくりました。
それから月日が流れたある日、メールをチェックすると四次選考まで残ってまっせ的なメッセージが届いてました。
その当時、そこそこ多忙でその時点でそういえば応募していたことを思い出して、そこではじめていくつかの選考を通過していたことを知り、それからテンションがかなり上がりました。
その理由は明白で、もし大賞でデビューできたら、デビュー作は例年通りなら2月10日に発売されるわけですよ。
もう心臓ばくばくなわけですよ。
説明は不要だと思いますが、一応させていただきますと、その時点でThe King'sman(邦題は『キングスマン :ファースト・エージェント』)の公開日は2021年の2月11日だったわけですよ。
つまり、私のデビュー作発売直後にキングスマン最新作が公開されるという、おそらく一世紀に一度あるかないかの奇跡が起ころうとしているわけなんですよ。
その数日前だったと記憶しているのですけれど、元々予定されていた公開日は2月26日だったのに、なぜか謎の前倒しになったのですね。
喜ばしいことだけど不思議だなと思っていたけど、まさかこんなことになろうとは。全ては天のお導きだったのか。
まあ、四次で落ちるんですけどね。
あのときの私よりおめでたい思考回路の持ち主がいたら、ぜひともお会いしたいです。
補足するとコロなんとかのせいでその年の受賞作は例年より一ヶ月遅れて発売され、キングスマンの公開日は12月24日に決まりました。

件の作品。

もし受賞したら斜線堂有紀先生に感謝を込めてプレゼントしようと考えていた、自分の人生を変えられた作品たち。

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斜線堂有紀先生のおかげで完成したお話しの話。

話の時系列は前後するんですけど、2020年の1月某日。
『夏の終わりに君が死ねば完璧だったから』を読み終わって、くらくらした頭で日課の電撃オンラインを徘徊していたら
『READING × READING LOFT9 Shibuya ルーキー声優対決の陣』なるイベントが紹介されていまして、人気作家さんの完全新作ストーリーを新進気鋭の声優さんが朗読で対決するというイベントで、音響監督さんもまじえて指導の様子も生で見られると。
参加される作家さんは乙一先生、斜線堂有紀先生、渡辺浩弐先生と、私の尊敬している作家さんの欲張りセットみたいになっていますし、これはもう天が我に与えし恵みの類いだろうと。
というのも、ご存知の通り、当時の私は謎の使命感で史上最高の声優小説を書き上げなければと奮起しておりました。
しかし話の山場である最強の声優に素人同然の主人公が喫茶店のメニューを読み上げる対決でなんとか勝利して相手を泣かせるロジックが全く思いつかなくて完全にお手上げ状態でした。
主人公を覚醒させる、相手を弱体化させる、の二つは冷めるので何かいいアイデアないかしらと考えるだけの日々がつづいておりました。
一つでも閃きを授かればと思いイベントの前売り券を買って参加すると、これがもう大当たりですよ。
エヴァンゲリオンが使徒を倒して大量の赤い生命のスープを浴びてるときみたいに、どんどんアイデアがふりかかってくるんですよ。
音響監督の納谷僚介さんが演技について解説してくれているとき、ずっとメモを取っていたら隣の人に、こういうイベントでメモ取ってる人、はじめてみたと話しかけられました。
作家さんたちのストーリーも強烈でしたし、帰りの際に出入り口にいた太田克史に感動と感謝を伝えて、握手までしてもらいました。
あの当時(2020年2月)は人と接近してもまだ許されていました。
帰りの電車で、あちきもいつか、あのイベントに作家側で参加したいでやんすと思いながら書いたのがこちらです。

最高のアイデアを授かり、完成した声優物語。
さあ、これで大賞はもらったぞと思って投稿した結果、一次落選でした。
どうして。
四次選考の評価シートで指摘をいただいた
【✓】次は長編で。
【✓】キャラクターに名前をつけましょう。
【✓】伏線を入れましょう。
【✓】誰が主人公なのかはっきりさせましょう。
といった問題点は全て解決して、句読点もいつもより多めにつけたというのに。話が違うじゃないですか。
とはいえ結果は結果です。
だけど、とてもおもしろいのでよろしければ読んでください。

誰に見せる予定もないもの、みたいなやつを結構書いてまして、不純文学の二次創作も完全に自己満足で、人目にふれさせる予定はなかったのですが。
そういうものを書いていると、好きな作品と対話しているようで、心が満たされます。
特に最近は斜線堂有紀作品の二次創作のようなものばかりやっていて、今は『楽園とは探偵の不在なり』に出てくるサウザンドメモリアル号殺人事件について考察しながら、勝手に話をふくらませています。とても楽しい。

人目にふれさせる予定の今書いている次の新人賞向けの新作『ガールフレンド ガールフレンド(予定)』も、とある斜線堂作品からの影響が強くて、ここ二年ほど、私のなかの何割かは斜線堂有紀作品に操られているのです。


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