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リミッターによる音のイメージの変化を抑える

DAWの最終段にリミッタープラグインを挿してラウドネスをコントロールしようとすると、その前までのミックスで整えたイメージが少しだけ変わってしまうと感じたことはないだろうか?

時間をかけて作ったミックスバランスが変わってしまったり、サウンドが変わってしまうと最後の最後でがっかりしてしまうものだ。ここではそんなリミッターによる音の変化を最小限に抑える2つの方法について、FabFilter Pro L2を例にとって紹介していきたい。

方法①:アルゴリズムの変更

使用するリミッターによってもちろん挙動は異なるのだが、同じリミッターでもプリセットのモードを切り替えるとアルゴリズムそのものが変わり、音も変化する。Pro L2には8つのスタイルが用意されており、それぞれ以下のように異なるキャラクターのアルゴリズムを持っている。

Transparent:原音に忠実で色付けのない音を目指すアルゴリズム。
Punchy:8つのスタイルの中で最も特徴的なサウンドを持つアルゴリズムで、サウンドにパンチと色付けを加える。歪みは最小限に抑える仕様になっており、ボーカル、ベース、ギターなど個々のトラックや、エッジの効いた音を求める場面での適用が推奨されている。
Dynamic:リミッティング適用前のトランジェントを改善することで、オーディオに元々あるパンチやクリアさを維持するアルゴリズム。ロックに適しているが、他のジャンルにも驚くほどマッチすることがある。
Allround:どのような素材にもマッチするようにデザインされたオールラウンドのアルゴリズム。ラウドネスと透明感との間で程よくバランスをとる。
Aggressive:アグレッシブなアルゴリズムで、クリッピング近くまでリミッティングするのが特徴。EDMやトランス、ロック、メタル、ポップスなどに最適。
Modern:デフォルトのアルゴリズム。あらゆる場面にマッチし、透明感のあるリミッティングを特徴とする。非常に高いラウドネスと、限りなくゼロに近いルックアヘッドの設定を実現しながらも、クリーンでナチュラルなサウンドにすることが可能。
Bus:ドラムバスや個別のトラックの処理に最適なアルゴリズム。透明感のあるリミッティングではなく、色付けのあるリミッティングを行うグルーコンプのように音を圧縮することで糊付けするような効果が得られる。
Safe:一切の歪みを排除したセーフモードのアルゴリズム。デリケートなアコースティック音楽やクラシック、または個別のトラックに最適なスタイル

それぞれのアルゴリズムは目指しているところが異なるので、トラックや曲調にマッチしたスタイルを選択するのが良いだろう。

方法②:オーバーサンプリングの適用

使用するリミッターによって搭載の有無はあるが、オーバーサンプリングも有効な手段だ。オーバーサンプリングは本来のサンプリングレートより数倍高い周波数で処理を行うことにより、ノイズの低減と折り返し雑音(エイリアシング)対策という2つの効果が生まれ、よりスムーズなサウンドにする手法。

例えばサンプリングレートが48kHzだった場合、x2だと96kHz、x4だと192kHz(イチクニ)となる。

CPU負荷が高まるが、それによってサウンドがよりナチュラルになるので、マシンの性能や求めるクオリティーによって必要な数値を選択するのが良いだろう。サウンドの質感にも変化があるので、単に高い数値を選択すれば良いというわけではない点に注意。試しながらいい塩梅になる数値を探すのが良いかもしれない。

まとめ

リミッターは本来サウンドそのものを変えることが目的のエフェクターではないが、実質的にサウンドに影響してしまうことがある。それをコントロールするには、リミッターのアルゴリズムの変更やオーバーサンプリングの適用が有効のようだ。

リミッターによるサウンド変化に悩んでいる方は、ぜひこの2つの方法を試してみてはいかがだろうか。

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