SLN第一弾「Palade!!!」から「グッドバイ・サマーライツ」までについて。

セルフライナーノーツ一回目の今回は、1stアルバム『Pastel*Planet0.01-finished a la carte-』から始めの四曲を解説しようと思う。

【一曲目「Palade!!!」について】
アルバムのリードトラックとして制作した作品で、元々は夢の中で何と無しに思いついたメロディをベースに作曲した。
特徴は、曲中でのノイズの扱い方だろうか。導入部のフレーズに使われている、シ・ド・ファ・ミという音それぞれに一つ、ノイズを割り当て、それをフレーズに合わせて組み込んでいる。因みにこのノイズは、それまでに完成しているアルバムの曲を逆再生させ、そこにエフェクトを加えてノイズサウンドに仕上げている。
また、殆どの音を外部音源を用いて制作している。その時に多く使用していたのが、1998年制のヤマハの音源モジュールなのだが、それが色味のキツイ炭酸飲料の様な独特の雰囲気を作り出したのではと感じている。

【「セカイのアニマ」について】
これはマジカルミライ2018の楽曲コンテストに応募した曲の、ミックスをし直したバージョンである(URL:https://piapro.jp/t/s1JP)。
歌詞については、私にとっては珍しい試みなのだが「一般的な初音ミク像」を私なりにイメージして、それをもとに書いている。例えば、登場人物は「ワタシ」と「キミ」で、つまりは「画面の向こうの彼女」と「キーボードで数値を打ち込むこちら側」である。そしてその二人(或いは一つと一人だろうか)の創作上の共同体的な関係とそれらから織りなされる「ミライ」の希望について書いたつもりでいる。
曲においては、マジカルミライという舞台を想定して、ト長調という比較的明るめの調の、四拍子のポップサウンドにした。また、最後のサビで、ト長調から変ロ長調へと、短三度の転調をした直後、1/4拍子の変拍子を一小節分だけ入れている。この時のスクラッチ的な音は、実際にレコードに針を落とし、逆向きにレコードを回転させたものを録音して使用した。アルバムの始めのボーカル曲として、良い導入になったと思っている。

【「シャウト☆新興終末教」について】
これは「とにかくアホな歌詞を書く」というのをコンセプトに、初めてボーカロイドで制作した曲だ。
歌詞を書く際、上のようなことを考えたのともう一つ、なんて人間は馬鹿馬鹿しい生き物なのだろうか、ということも考え、結果的にそんな嫌味も僅かに入った歌詞となった。
歌の中に登場する「終末教」は、文化が著しく後退した未来にぽっと出て現れた新興宗教で、その過激思想の非現実性と、指導者のカリスマ性で、一気に若者の間に広まった。そして後には1つの政治組織となり、独裁政権を築き上げていく……という設定である。こんな未来にはなって欲しくないものだ。
そして音楽の特徴は、Aメロの早いスピードでのオクターブパッセージと、インストの密度の低さだ。ベースは基本完全5度音程でコードを取るのと、さらにはリズムトラックとしての役割を果たしている。また、シンセサイザーパートでは、32分音符での高速アルペジオを用いている。ボーカルもやたらと歌いづらく、まさしく人間の演奏しない「ボーカロイドのための音楽」になった。
また、この作品では、初めてuotaK氏(Twitter @_uotaK_)とコラボした動画を制作した(URL:https://sp.nicovideo.jp/watch/sm32397625)。この動画の制作に難航したため、公開は二番目となってしまったが、それでも、全てにおいて初めてだったこの作品には、それなりの思い入れがある。

【「グッドバイ・サマーライツ」について】
トラック4番目となるこの曲では、2000年台前半のノベルゲームのオープニング風な、どことなくノスタルジーを感じるエレクトロサウンドを意識した。4つ打ちのリズムに、シンセサイザーによるストリングスサウンドなどが、それに当てはまるだろう。
また、原型のメロディは、私がパソコンを使用して作曲を始める前から、ピアノで弾いていたメロディであったので、エレクトロにアレンジするのに、非常に苦労をした。
思い返してみると、当時から自分で作った音楽には何かしらのストーリーを絡ませたものが多く、音楽と物語のつながりというのは、無意識のうちに私の創作において大事な命題になっていたのだろうと、この曲を制作した時に感じた。そのため、タルバムのタイトルは「finished a la carte」(そもそも造語であるが)日本語に直すと「終わった物語たち」とした。ちなみに、この曲を作っている途中に、このような考えに至っていなかったら、アルバムのタイトルは「fool time」となっていた。今になって考えると、冷や汗ものである。

(次回に続く)

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