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おばちゃんIC(インテリアコーディネーター)が深掘りする「なんでもいいです」の裏側

先日、住宅メーカーさんの新規のお客様のH様(奥様)との打ち合わせがあった。あまりこだわりのない方で、言い方が悪いけど「住めりゃいい」的な感じのスタートだった。
内装材やカーテンも「なんでもいいです。普通でいいです」と言われるのだが、これが一番困る。こういう方は本当になんでもいいのかというと、そうではない場合が多いからだ。

コーディネーターとして使命を全うせねば!!とお好みがない場合のプレーンな提案をすると、あんなに「なんでもいい」と言っていたのに「こんなのはあまり好きじゃない」とか言い出す。心の中で「そら、きた・・・」と嘆きながら目の動きや表情を観察してみる。カタログやサンプル帳をめくってはいるが、どこか投げやりで雑な感じ。目で追っているが果たして情報として捉えているか?表情はなく、椅子をちょっと引いて座っているようすから拒絶の雰囲気もある。

「じゃ、こんな感じはどうですか?こんなのお好きですか?」と聞きながら、サンプル帳をめくって見せると、諦め顔で「ん・・・それいいです。もう分かんない」ときた。んんん・・・これは何かおかしい。

私はこの「それいいです」の「で」が好きではない。「それで」いいというのは、納得してない感が溢れている。
「それ”が”いい」にどうしたら持っていけるのか。

一旦打ち合わせを休止し、世間話にシフトしたり、コーヒーを追加したり、モデルハウス内を見てもらいながらお話ししたりして「で」に至った経緯がないか探る。せっかくの新築、一般的に一生に一度のお買い物。楽しい未来への生活をスタートしていただきたい。
そのためには「なんでもいい、どうでもいい」のではなく、「引っ越しして生活がスタートするのが楽しみ!」という内容にしていきたい。死んだ目で決めずに、この打ち合わせをワクワクしてキラキラした目で楽しんでいただきたい。

スタッフとの前打ち合わせによると、今回H様はお一人で来られていたがいつもはご主人が一緒に来られていたらしい。あとは内装という段階でご主人が多忙になり、あとは奥様が決められますということだった。

天気の話とか、お子様の話とか、家電の話などをしていると、だんだん打ち解けてきてくださり、ポツリポツリと経緯や気持ちをお話しし始めた。
家づくりのスタートからご主人と奥様の好みがまったく合わず、結局ご主人が奥様の意見を全く聞かない形で間取りや外観が決めてしまったためもうどうでもよくなってしまったという。他人からの評価を人一倍気にするご主人は、外観で満足したらしく「中は好きにしていいよ」とおまかせされてしまった。だけど間取りも外観も納得しておられない奥様はやる気0。なるほど・・・

お話を一通り聞いていると少しお顔に表情が戻ってきた。
「主人と離婚することまで考えたんです。営業の人もぜんぜん私の話を聞いてくれなかったし、離婚したら私この家に住まないしなって思ったらどうでもいいなって。でも話を聞いてくださって気が晴れてきました。まだ住みたい家に近づけれるなら近づけたい」・・・そこまで思い詰めていらっしゃったのか。

よっしゃ!よく分かった!
「変更できるところは変更しちゃいましょう!好きにしていいんですから!営業担当は私が叱っておきます」
やっと打ち合わせに入ることができた。
そこまでで所要時間2時間。でも必要な時間だった。

「なんでもいいです」は本当になんでもいいのか。その真意を探って解決してあげないと私も後悔することになる。
こういう世間話+「ちょっと踏み込んで内情を聞ける」のはアラフィフおばちゃんの強みだと自負している。
この後、若い担当営業マンに文句をタレタレしたのはいうまでもない。(一応年上だし、外注という立場だし、おとなしめで)

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