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グットバイ・フェルナンデス・ベース (Hさんに捧ぐ)

割引あり

かたすみをかえりみるとき思い寄せ
かの人にまた一世あれかし


今日はとある有名な方について、筆者が「人生で持ちうる全ての運」と引き換えに経験した出来事について告白させて下さい。

この事を、私は本当に仲の良い友人2人ほどにしか話した事がありません。このまま幸せな思い出として、心の奥底に大切にしまっておくつもりでした。
しかし、報道でかの人の訃報を知り、突然お別れすることになってしまったファンの皆さんの悲しみ、つらさに触れるにつれ、同じようにいちファンである私の個人的な思い出が少しでも誰かの心の糧なるかもしれない、報道には出ない小さなエピソードでも誰かに和んでもらえたら……。
そして何より、あの貴重な時間を忘れないためにも「きちんと形にしておきたい」と思うようになりました。

正直にお話すると、素人が有名人のプライベートを文字に残し、いけしゃあしゃあと世にさらす事への申し訳なさはあります。この告白を、ビュー数稼ぎ目的の創作、フィクション、あるいは妄想だと思う方もいるかもしれませんが、そう感じた場合は閉じてお忘れになって下さい。

そして、どなたの事か分からなかった方は、どうかそのままでお願いします。プライベートをほとんど明かさないグループの、中でもひときわ私生活が謎と言われた方の話ですので。


昨年、美麗で知られた某カリスマボーカリストが50代にして突然亡くなった後、プライベートで遭遇した事を文章にし、ネット上で発表した方がいたのですが、それが虚実を織りまぜ「あたかも全て本当の事」のように書かれた「創作」だった…… という衝撃の事件がありました。
昨年の11月頃の話ですので、記憶にある方も多いと思います。あれを全て本当だと信じて読み進め、後から嘘だったと知ったファンの悲しみはいかばかりであったかと思います。

筆者がこれから書く事も、あの事件を知っている方から「二番煎じ」「脳内妄想乙」などと指をさされる可能性はあります。なぜなら、これから告白する事は、私と相手の2人しか知らず、そこに立ち会った人がいないから。
興奮のまま書き残した当時のメモと記憶を元に、素直に再現した文章を残すよう心がけますが、筆者のあまりの常識外れな言動とアホさ加減に「嘘松」「夢小説」というご意見を持つ方がいらっしゃるのはやむを得ないかと思います。
けれど、私も人間なので、見ず知らずの誰かに心無い事を言われるとつらいので、暴言などは吐き出さず筆者の事は放置して下さい。
もし「あっ…(察し」と思われた方は閉じて頂けるとありがたいです。お目汚し、失礼いたしました。

元々、この話を告白した友人2人以外には、もう話すつもりはなく、文字通り「墓場まで」持って行く予定でおりました。
ただ今回、かの人とのお別れが突然だった事もあり、私の記憶に留めておくのは勿体ないのでは……と考えるようになりました。
とにかく、あの方の穏やかな人柄の良さを知ってもらいたい、彼の大ファンである私のフォロワーさんにだけでも伝えたい、といった風に思いが変わってきましたので、ここに書き記します。
もし、フォロー外の寛大なファンの方に届くことがあれば幸いです。

どうかこれだけは言わせて下さい。
これから書く事はノンフィクションです。文章にするため体裁を整える部分はありますが、起こっていないことは書きません。あるがままを書くのがエッセイですし。
いや、これほどたっぷり言い訳を書きながら、厚顔無恥にも「エッセイ」と自己申告するのもいかがなものかとは思うのですが。

フィクションでも、創作でも、夢物語でもなく、ただただ親しいフォロワーさんに宛てた手紙のような自己中心的な書き物であるので、まぁエッセイと名乗らせて下さい。
このような体裁にしたのは、文章を読んだ方も筆者の経験を追体験できるように、そして当時の私の嬉しさやときめきはもちろんのこと、会話相手の様子を一層近くに味わうことができるのではないかと考えての事であります。

そして、その日の出来事を証明する唯一の品は、今も筆者の部屋に飾られています。
もし私に何かあれば、これだけは一緒に持たせて欲しいと家族に頼むほど大切な宝物です。それくらい私にとって輝かしい思い出のフォルダ、それを今ここに解放します。


1.静かなるバンドマン

2023年11月初旬、突然の訃報が私の思考を止めた。何の前触れもなく知らされたニュースは、まさに青天の霹靂だった。
その後の続報、翌日のニュースを見ているうち、心の片隅に大切にしまいこんでいた甘美な思い出が一気に浮き上がってきてしまった。

「彼」を初めて直接見たのは、関東の某巨大会場でのライブでのこと、あちらはステージ上の人、私は一介の客でした。
超有名バンドの久しぶりの大型公演。激しいチケット戦国時代を制し、ようやく手にしたスタンド席。
子どもの頃から名前は知っていたものの、初めて見るそのバンドのライブに開演前はソワソワしっぱなしでした。

開演時間より遅れてオープニングSEがかかると、場内のボルテージが一気にあがり、ライブがが始まる。
子どもの頃から知っている有名曲が目の前で演奏され興奮したけれど、憧れが目に見える形になるとはこういう事なのかと、妙に冷静な自分がいたのがおかしかったのを覚えています。

バンドメンバーの中でも、特に目をひいたのがベース。
スリムですらりとした、いかにもバンドマンらしい容姿、派手なヘアスタイルと、ダークで華やかな独特の衣装。時おりドラムを見つめ寡黙にルートを刻む静かな様子。
曲がガタついた瞬間には、ドラムの方をバッ!と振り返り、「音についてこい」と言わんばかりに正確に弾きこなすたくましい姿。そこにバンドを支えるベーシストの理想像を感じ、どうにも目が離せなくなってしまいました。

曲の途中、ボーカルがベーシストに絡みに行くと、場内から両者の名を呼ぶ悲鳴にも似たかけ声が飛ぶ。

「○○ちゃーーん!!」

そうか、ファンから「ちゃん」づけで呼ばれているのか。男らしいわりに可愛いあだ名を持っていると知り、急に親近感がわいたのは、私が惚れっぽいからでしょうか。
場内の熱気に巻き込まれ、アンコールの頃には、知ったばかりの彼のあだ名を懸命に叫ぶ私がおりました。


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