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初彼②当時の出会い

 まだ携帯もガラケーで、アプリなんてものはなく、友達の紹介で繋がる、メール友達『メル友』が出会いの主流だった時代。友だちから「メールアドレスはコレだよ」と教えてもらい、相手にメールを送る。

相手から送ってもらうには自分のアドレスを伝えてもらわないといけない。相手からメールが来るのを待つのがいつ来るかいつ来るかと何度も画面を確認して待つ緊張感があまり好きではなかった。

「ゆみー!メールくるかソワソワでしょ!」

同じクラスの親友の理恵が休み時間になるとニヤニヤしながらやってきた。理恵とは小学校から高校も一緒だ。
もちろん理恵も彼氏ができてるし、メル友を教えてくれたのも理恵の繋がりだ。

「本当にー。この緊張感が無理ー!早く家帰りたい!ねぇねぇ、相手どんな人⁈かっこいい⁈」

ゆみは理恵と休み時間が1分で終わったかのように女子トークを弾ませた。

また授業が始まり部活へ。
部活中もずっとメル友になる人の顔も性格も知らないのに、どんなデートができるのかなど想像が盛りだくさんすぎて集中できなかった。

部活終了後自転車で帰宅。自転車を漕ぐペダルが軽い割にはスピードが速い。坂道なんてバランスを取るのに必死。いつもならそんなことないのに。

「ただいまー!」

早速メールのチェック。

当時親が厳しく、友美は携帯を持たせてもらえなかった。りえとも代わりにパソコンでのやり取りをしていた。

「まだきてない…」

送受信ボタンを2回ほど押したが変わらない画面に安心感と少しショックを受けている自分がいた。
アドレスが機種のアドレスではないのでパソコンからだとわかる。これが原因で自分は他の人とは上手くはいかないとも思っていた。

「お風呂入ってご飯食べるよ!」

ゆみのお母さんが声をかけた。パソコンはリビングにしかない。

「わかった!」

表情を悟られないように、女優になって笑って返事した。心穏やかではない。いつもよりもスピードをあげて風呂も終わらせてご飯にした。宿題はいつもなら父親をさけるかのように部屋からでないがリビングでめずらしく終わらせた。

親も寝静まった深夜、送受信何度目だろう、画面が変わった。知らないアドレスからだった。

「きたーーーーーー!」

一気に目が覚めた。今でいう「既読」なんてものは付かないのに、そのアドレスをクリックするだけの右手が固まった。

「すーーーふぅーーー」

深呼吸をして10分ほど経ってメールを開く決心をした。


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忘れられない恋物語

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