コインの日企画・個人的見解・なぜ500円硬貨は悲劇に見舞われたのか?

結論から言うと、使いやすさを重視して小さく作りすぎたことにつきる。

ときは1979年、アメリカで1ドル紙幣の置き換えを意図して小型1ドル白銅貨(通称、アンソニーダラー)が発行される。しかし図柄を旧大型1ドル硬貨と同じく「月面着陸するハクトウワシ」のままにしたため「(国章である)羽を横に広げたハクトウワシ」を描く25セント硬貨との区別がしづらく、不人気ですぐに製造が中止された。交通機関の券売機の釣り銭用としてほそぼそと使われ1999年に再生産された後、2000年以降にサイズを変えずに図柄と材質を一新したサカガウィア・ダラー、大統領ダラー(いずれも銅貨)の発行が開始され、それらは現在まで発行が継続されている。しかし当初の目的であった1ドル紙幣の廃止にはいまだ至っていない。

このアンソニーダラーをモデルとして自国通貨をデザインした国がいくつかあり日本と韓国がそうであった。近接国が同じコインをモチーフにした硬貨を開発したことが悲劇につながった。ヨーロッパでしばしばあったような類似規格の硬貨によるよく知られた自販機荒らしである。なおヨーロッパの方はユーロによる通貨統合の前までは、かつてあったラテン通貨同盟による規定サイズの名残で少なくない数の国で共通、類似するサイズの硬貨があった。

その500ウォン白銅貨による被害は語り尽くされているので別稿に譲るとして、その影響で500円硬貨の材質が黄銅貨に改められた。ただし単一材質ゆえこれはこれで後に変造ではなく偽造硬貨が出るようになり、記念硬貨発行という名の製造テストを経た後、2021年に現在のバイメタル貨に改められた。

話を戻して、なぜサイズの問題と言えるのかと言うと、世界最高額硬貨であるスイスの5フラン白銅貨が現行通常貨幣最大級の物理サイズゆえ、他に同サイズのコインを発行する他国が存在せず、こういった問題がほとんど起きなかったことである。かつては現在の物価で数百円、数千円前後相当の中額硬貨を銀で作って額面に近い価値を持たせていたが、それが遠い昔の話となった今となっては大型硬貨が嫌われる事が多く、新規で直径3cmを超える硬貨が発行されることはまずない。5フラン硬貨にとって唯一発生した自販機荒らしがベラルーシ人が持ち込んだ旧ソ連の1ルーブル記念白銅貨によるもののみだった。ソ連時代の1ルーブル硬貨は通常貨は小さく、記念貨は大きく作られていた。小さい方は500円に稀に混ぜられてこれも問題になったが、大きめの記念硬貨は5フランとほぼ同じ重量と直径であった。だが、当然現存枚数は通常貨幣より少なく犯行に及んで採算を合わせられる量を集めて用意するのが困難でこのような事件は繰り返されていないようだ。

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