どうしてもコウノドリが大嫌い

x年前のある日、モーニングを開くとやわらかくふわりとしたタッチで新連載の産婦人科のマンガ、コウノドリが始まっていた。

一読してああ人気出そうだな、と思った。柔らかいタッチの絵柄、出産にまつわる事柄をうまくまとめた点、個性のあるキャラクター、魅力のある主人公、医者と看護師の嫌な面は決して出さないところ、悪役にしても叩かれない人間を悪役にしているところ、等々。

しかし、俺はどうしてもこのマンガが正直に言うと大嫌いである。その理由2点を以下に述べる。

1 パワハラ炸裂                                                                        研修医に対して血圧のことに対して高圧的に注意してあろう事かビンタである。また、産婦人科に回ってきたあまり興味のない研修医にももちろんパワハラである。そして全く悪びれていない。まあ、はっきり言ってクソの中のクソである。本当にクソなのは全く悪びれていない点である。つまり自分達の正義のためにはこうした高圧的なパワハラ、暴力もありと思っている雰囲気を感じるのだ。正直に言うとこの思想がマンガ全体を貫いていると感じるのである。フィクションだからとかそういう問題でなく、自分達の正義のためになにをやってもいいし、逆に自分達がやられるのはNGという雰囲気がごみなのだ。じゃあ、おまえならどうすんだよと言われるかもだが、現役の医師でもある俺なら、一生懸命やってるならもう少し柔らかく注意するし、ローテで回ってる興味のない研修医には面白さを感じてもらう努力をする。はっきり言うと、自分の正義を疑わず、その正義のためならなんでもあり、そして反撃は許さないという人間のいうことなんかクソ以下である。

2 いつも被害者                                                                     いつも主人公達は被害者で、理解される事を望んでいる側なのが無理なのだ。クローズやろくでなしblues ですら主人公達はお互いの事情や立場を慮って行動している。しかし主人公および彼らの側の人達は被害者を気取るばかりで他人の事をあまり考えない。考えたとしても常に自分たちが中心である。大変で被害者なのは常に自分達で、理解する側になろうとしない、おそらく精神年齢は野原しんのすけ以下である。この物語のなかにははっきりした被害者とはっきりした加害者しかおらずその点はほぼ水戸黄門である。


という感じである。読者は出産という物語の中で、悲劇に涙したり、悪役的な人が困った状況になることにカタルシスを覚えたり、医師の過去に感動したりする。

しかし、その世界には本当にどうにもならない葛藤や、リアルな苦悩はない。明快に正義と悪があるだけである。

そして、自分達が絶対の正義であり、そうでない側には何をやっても良いというグロテスク極まりない思想に気づかないうちに酔わされながら、上手くパッケージングされた出産にまつわるエピソードを味わって感動したりするのである。

最後にいうが俺はこの作品を否定してはいない。むしろかなり良くできたマンガであり、素晴らしい作品だと思う。ただ俺は生理的に嫌いなのは事実だし、おれが嫌いという事でこの作品の価値が揺るがないのも、また事実である。





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