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線香花火さんと君。

秋の夜になる手前のある夜、お風呂上りにすいかを食べて

「花火やる?」と聞いたとたんに、君は小さな手を叩いたね

「うん、やるやる!花火さんやる!」急いで草履を履いた君は、玄関の引き戸を開けて走り出した。

たくさんの花火セットの中で、君が好きだったのは線香花火さん。

じっとしてられなくて、途中で火の玉を落としてしまうと

「あーーーっ落ちちゃったよ、どうしてなの?ママ」

じっと待てばいいと何度言っても、君は動くの

花火が花をつけだせばなおの事動くから、落ちちゃうんだよ。

「ジーって言うから、お花が咲くのに落ちちゃうのはどうして?」

「次は違う花火さんにしたら?」と聞いても

また新しい線香花火に火をつける君が、ろうそくの火に照らされて真剣な顔をしているね。汗でびしょびしょびしょになった君のおでこをタオルで吹きながら

「動いちゃだめだよ」と静止させる・・・・

「あ~お花が咲いた~きれいだねきれいだよ」

うん、一瞬で終わっちゃうお花を見たくて何度もしゃがんでいるんだよね。

「喉乾いたから、ラムネ飲もうか?」と聞いても君は

「もっかい、花火さん見るの」としゃがんでいる

蚊取り線香と花火の煙の臭いは、ちいさな幸せの時間だ

花火のじーっという音と、小さなお花は君の瞳に移っている

このまま秋にならなきゃいいのにね

小さな浴衣が可愛いね。

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