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「高市早苗さん死なないで」総務省テレコム村一揆反省会会場(追記&修正あり)

 騒ぎになってますね。

 現在私がクソ忙しくあまり時間がないので、詳細は今夜久しぶりに収録するYoutubeで語るとして、誤解が広まっているので困っているそうなので個人的に知り得るところを掻い摘んで妄想も交えつつ書きたいと思います。

 「お? 事実関係と違うな?」というところがあるとしたらそれは私の妄想です。

第一話『礒崎陽輔、大地に立つ』

 この作品の主人公は礒崎陽輔さんです。総務省出身の元参議院議員で、19年の参院選大分選挙区で落選し、現在はただの人です。長期政権となった故・安倍晋三さんの第二次政権では官邸の要職である総理補佐官を歴任した「アベトモ」の一員ですが、何より大変なクソだと好評だった自民党クソ改憲案の立案責任者をされていました。クソが。

 まず、この問題を理解するためには「テレビ朝日椿事件(1993年)」を知っておく必要があります。面倒くさいので興味のある人はググってください。要するにテレビ朝日報道局長(当時)の椿貞良さんが日本民間放送連盟の第6回放送番組調査会で「テレビ局内で何でもよいから共産党を排除した反自民の連立政権を成立させることで局内をまとめていた」という発言を行ったことで、同93年に自民党が総選挙に敗北し細川護熙政権が成立した件もあり、大変な政治問題化した経緯があります。

 公共の電波を使う放送行政について、国から認可を受けて放送事業を行っているテレビ局が政治的公平な(番組)放送を行う義務について、93年の非自民で構成される細川連立政権誕生にあたりテレビでの報道番組などで自民党に対して批判的に報じられたことで、選挙への影響を踏まえ直す問題へと発展したのです。

 民放連の会合で椿さんが「『ニュースステーション』に圧力をかけ続けてきた自民党守旧派は許せない」と語って見事に政治問題となり、後日椿さんの釈明ののちに国会での証人喚問まで行われて、最終的に総務省による厳重注意で終わった経緯があります。その後、選挙報道の在り方も含めていろんな制限がつきましたが、この際に出た放送法に基づくテレビ局などの放送事業者が遵守するべき政治的公正についての政府見解が確立したのもこの事件がきっかけの一つです。

 で、時は流れて2015年、第二次安倍晋三政権において総務大臣は高市早苗さん、総理を支える首相補佐官は元総務官僚の参議院議員・礒崎陽輔さんであります。

 この礒崎陽輔さんが、TBS系『サンデーモーニング』は偏向報道であるとして、ムカついていることから、総理である安倍晋三さんに放送法に基づく何かをしようと思いつきます。

 それを聞いてびっくりしたのが総務省放送村の村長(当時)である安藤局長であります。それまでの政府見解で言えばテレビ局全体において政治的偏向があるのかどうかで判断していたものが、磯崎さんが騒いだのが『サンデーモーニング』という番組単体の問題ですから、当然政府見解の変更になってしまいます。

https://www.soumu.go.jp/main_content/000866745.pdf

 すったもんだあり、安倍ちゃんの総理秘書官(のち内閣広報官)であった山田真貴子さんも交えた話し合いをし、山田さんらの反対もありつつ最後は安倍ちゃん自身が前向きな結論を出して、最終的に、総務大臣・高市早苗さんの国会答弁として落着し、礒崎陽輔さんの勝利に終わりました。

 ただし、2014年暮れから15年3月の大臣の国会答弁までの間に起きた本件の後、あれから8年ほど経過しましたがこれといった偏向報道の問題が具体的な事件となることなく今日まで来ているということは、所詮その程度のネタであったのだとご理解ください。

 一方で、放送村からしますと公式文書の中に山田さんによる「礒崎補佐官は官邸内で影響力はない」「今回の話は変なヤクザに絡まれたって話ではないか」という素敵な文言まで公式文書に明記されているというのもまた味わい深いところがあります。村民の抱く「クソが」という真心が行間から溢れ出している気がします。

 ここで出る高市早苗さんは、資料にもある通り、礒崎陽輔さんがやろうとしていた放送局への圧力は大臣として消極的だったものの、ボスである安倍ちゃんが前向きであったために、部下として突っ張らず、そのまま大臣として喋ってしまったことになります。

 本来であればこういうタイプのメモ書きは行政文書としてあまり残さないし、官房長(福岡さん)宛に入ったとされた問題のメモも着弾していたかの確認が取れないということを踏まえれば、実際には安藤局長以下村人がガチで礒崎陽輔さんにムカついたので、いずれ必要なこともあろうとメモを残しておいたのではないかと思料するところでございます。よくやった。

第二話『礒崎陽輔破壊命令』

 その後、冒頭で述べた通り19年7月21日に行われた参議院議員選挙で礒崎陽輔さんは野党統一候補であった安達澄さんに敗れ、落選してしまいます。一定方面では「ざまあ」という声がこだました… かどうかは分かりませんが、ともかく落選してしまいました。ざまあ。

 ところが、ここで礒崎陽輔さんに勝った安達さんが、今年4月の大分県知事選挙への立候補を表明します。この安達さんも、まあ、いろいろある人ですが本筋ではないので割愛します。

 当然、大分では大分県知事選立候補のために参議院議員を辞任する安達さんの議席を巡る補選が行われるわけですが、ここで大分県連がうっかり礒崎陽輔さんに公認を出してしまうことを怖れた人たちがおります。

 前述の通り、礒崎陽輔さんに煮え湯を飲まされて、意味の分からないテレビ局への圧力のための放送法政府見解の変更をやらされた総務省の村人は祟りを思い出して怒りと怖れを抱き、8年越しに抱えていた公式文書を炸裂させることを思い立ちます。具体的な経緯は自粛しますが、放送村からすれば取り扱う案件としては一丁目一番地でありど真ん中ですからブチ切れ案件なものの、世間一般の週刊誌メディアなどはこの問題が持ち込まれても地味過ぎます。しかも当の礒崎陽輔さんは落選してただの人のネタなので取り上げようがなく、結果的に、小西洋之さんという立憲民主党のクイズ王に国会で質問してもらい、当時総務大臣で原経済安保担当大臣である高市早苗さんにぶつける計画が持ち上がります。もちろん、国会での質問ですから失言待ちのメディアもスタンバイさせていたようです。

 しかし、そもそもこのネタは、礒崎陽輔さん破壊命令専用ミサイルなのです。官邸によるテレビ局報道への圧力をかけようとする横暴が知れ渡ることで礒崎陽輔バーカという声が永田町全体を駆け巡り、大分参院補選で自民党候補者に礒崎陽輔さんがならないことを期待して、本来であれば「取扱厳重注意」なのか「厳重取扱注意」なのか知りませんが絶対に流出するはずのない一連の政府見解変更の経緯がすっかり分かってしまう文書がクイズ王に流れてしまうのです。恐るべし。これはもう、恐怖しかありません。

 ところがですな。クイズ王の顔がムカついたのか、国会でアテられた高市早苗さんが「自分への攻撃だ」と誤解して盛大にブチ切れてしまいます。なぜか「捏造だ」と言い出し、最後には「捏造でなかったら大臣も議員も辞める」とまで啖呵を切ることになります。なんせ大西さんが提示した75ページほどの資料のうち高市さんへの言及はわずかに2枚、それも焦点となるのは平川参事官から安藤局長という村人同士の伝達メモで「安倍ちゃんが高市さんに電話して本件で話したかどうか」という極めてどうでもいい内容です。むしろあれは礒崎バーカと山田真貴子万歳となるのが普通の読解で、高市さんは関係なく、もしも咎があるのだとするならば安倍ちゃんが実はサンデーモーニングが嫌いだったことと、部下であり大臣である高市早苗さんが安倍ちゃんの後ろ盾で出世したこともあり道理のない政府見解変更に反対しなかったことぐらいでしょうか。

 ついでに、時を同じくして高市さんは奈良県連代表として、奈良県知事として5選を目指す現職の荒井正吾さんへの対抗で自身の手駒とも言える総務大臣時代の秘書官だった平木省さんを立ててしまいます。確かに荒井さんは5期目であり御年78歳とジジイではありますが、それを言い始めたら副総裁麻生太郎さんは82歳、元幹事長二階俊博さんは84歳ですから、78歳とかマジでまだまだ若手です。5期どころかもう2期できちゃう。その荒井さんを降ろす説得も終わらないうちに自民党公認候補を高市さんがほぼ独断で立ててしまうことで目下猛烈に揉めているのですが、触りの部分は集英社オンラインが書いていたのでこちらをどうぞ。おそらくこの辺の話も含めて、高市さんは本件地元問題でも経済安全保障担当大臣としてもピリピリしており、そこへ目の前にクイズ王が来たのでキレてしまったのでありましょうか。

 とにかく高市さんもの凄い剣幕で激怒してしまったのですが、喧嘩を買うのが速い一方さすがに賢い人でもあるので途中でハタと「これは自分への攻撃ではなかった」と気づきます。また、総務省側で小西ひろゆきさんにネタをぶん投げた官僚もまた澄み渡った青空よりも青くなって「誤射である」ことを小西さんに伝えます。小西さんも慌てて高市さん辞任は要求しつつも「行政文書の中身を精査すんな」と派手に軌道修正に追いやられることになります。

 ネットでは小馬鹿にされがちな小西さんなのですが、事態を分かって軌道修正できるあたりは野党筋で頼りにされる有能な政治家であることは間違いないところですし、実は撃ち落とすべき的は礒崎陽輔さんであって、その弾も持ち込まれたマスコミが一足先にスルーしていたものだったわけで、本件では自らが当て馬の役割であると割り切った理解をして落としどころを見ているのはさすがだと思います。

 ここでネタ元だった総務官僚に梯子を外されると永田メールになってしまいますし、総務省も行政文書であるとは認めたものの内容の信憑性はもちろん保証はしていませんから、うっかり精査されて、総務省に「いや、やっぱ平川審議官から安藤局長へのメモは、想定問答の文書が混ざったもので事実を記したものではありませんでした」とか言われちゃうと今度は小西さんが議員辞職に追い込まれてしまいます。実際、展開先とされた大臣官房にこのペーパーは着弾していなかったという話も出ています。今後総務省が各書類をどう精査し、いかに認定するかは未確定ですが、本件問題で充分騒いで、当時のアベ政治が報道に圧力をかけていた問題を国会で騒いで炎上させ、手柄になったところでサッと退くのが利口と思っていたら、さっそく退いていたので小西さんファインプレーであります。

 「礒崎ってこういうヤバい奴だったんすよ」と破壊指令される側だったはずの礒崎陽輔さんが、総務省が公式の行政文書だよと認める前からTwitterでのんびりこんなことを書いてます。本来なら礒崎陽輔さんの眉間にヒットさせるべきネタがなぜかブチ切れた高市さんに当たってしまったのを考えると、火計を放った放送村の智謀パラメータが少し低いのかなと思います。

第三話『脱出』

 「しょうもない話だな」と思われるかもしれませんが、私も「しょうもない話だな」と思いながら書いております。そんなら最初から相談してくれればよかったのにと感じないこともありませんが、高市早苗さんも議員辞職の発言に関しては上手く軌道修正をして、そのような趣旨のことは言っていなかったという内容にシフトして粘れるだけ粘ろうかという流れであることは致し方ないとも思います。かの文書が総務省公式に行政文書だと言ってしまった以上は、文書そのものが捏造というのは通りませんので、せめてその中身の信憑性の問題にすり替えないと、本当に議員辞職しなければならなくなってしまうからです。

 また、関係先の総務官僚側も、事情を知る人は高市さんには「これは礒崎ネタなんで」とは伝えていなかったようです。まあまさか高市さんに当たるとは思ってなかった弾ですから、事前に伝えて「あんたなんでクイズ王に書類出したの」とか藪蛇になるのは嫌だったのでしょう。

 高市早苗さんにおかれましては5月のG7広島サミットに向けて経済安全保障やセキュリティクリアランス、ディスインフォメーション対策組織も含めた問題山積と存じますので、どうか諸事無難に御身大切でお過ごしいただければと願うところであります。

 総務省においても、最初から礒崎陽輔さんをぶっこわーすつもりでぶん投げたネタでしたから、国会での騒動への対応で行政文書ですと認めるのもまた当然と言えます。実際行政文書ですので。むしろ、可哀想なのは情報をまったく渡されず、恥ずかしいYoutubeで「あれは霞ヶ関の行政文書ではない」「捏造だ」と主張してしまった高橋洋一さんなども、あっ、霞が関から情報が取れてないのだなと佐藤優ばりに露顕してしまったのは残念でした。その後、しれっと方針転換してましたが、あれは何だったのでしょう。

 それにしても、このクソ大変なところで大騒ぎするようなネタだったのかね? というのもありますし、総務省も国会で質問してもらう目的だったからといって小西さんというクイズ王人選は果たしてふさわしかったのか、いま一度考えるべきなのかなあとも思いました。常識的には、振り付けも含めて、質問後のマスコミ報道の内容も仕込んでネタを流さないと今回のように全然違うところで弾に当たりに来る高市早苗さんが出てきたとき収拾がつかなくなるのも事実です。

 いろんな意味で「もうちょっと、やりようがあったよなあ」という反省の多い一件だったのではないでしょうか。

 最後になりますが、本件騒動の間にひっそりと礒崎陽輔さんが大分参院補選の自民公認見送りになったのは、せめてもの… と思います。ご関係者の皆さま、どうかご安全に。

 画像はAIが考えた『参院補選に出馬したかったのに結局潰れてしまう礒崎陽輔』です。

(追記 15:51)記事中、礒崎陽輔さんの名前他、細かな表記揺れや誤字がありました。謹んで訂正いたします。また、関係先からの再指摘もあったため、一部表現を改め、解説文を追記しました。


神から「お前もそろそろnoteぐらい駄文練習用に使え使え使え使え使え」と言われた気がしたので、のろのろと再始動する感じのアカウント