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問題はライドシェアではなく、配車システムの利便性とタクシー運転手さんのお給料の問題

 先日、こんな記事を書いていたところ、加藤順彦さんが和牛マフィアの浜田寿人さんの記事を取り上げ感想を書かれていました。

和牛の浜ちゃんのnote。なんだそれ的な所感しかないが…ライドシェアは野党や国土交通省御用議員の抵抗であと2年は無理筋だろな、と諦めてる。

 実際に起きていることは浜田さんが記事で書かれている通りです。

 GO TAXIやフルクル、S.RIDEなど日本のタクシー会社が運営しているタクシー配車アプリはタクシー会社にとってメリットのある形で仕様が組まれているため、行政ヒヤリングなどをしていても「こりゃなかなか厳しいな」と感じることが多くあります。

 懸案の内容自体は、大和総研・経済調査部の市川拓也さんが簡単なレポートをまとめています。読めば分かりますが、ここで言うところのシェアリングエコノミー的なライドシェアは、アメリカ以外あんま認められていません。それどころか、イギリスもフランスもドイツも自家用車ライドシェアに分類される白タク業務は禁止です。

https://www.dir.co.jp/report/research/policy-analysis/human-society/20180601_020125.pdf

 で、なんで禁止なのかという点について、冒頭では加藤さんが「野党や国土交通省の族議員の反対」が理由なんだと推測されていますが、これは微妙に違います。

 正確には、これは保険業界の問題です。

 単純に、この自家用車ライドシェア(白タク)が、業として、客からカネをもらって自家用車で事故ったときに、仮に客に怪我やら死亡事故が起きたときどうなるでしょうか。

 全額、利用者が治療費や死亡関係費を支払い、保険の適用になりません。

https://wwwtb.mlit.go.jp/hokkaido/content/000269961.pdf

 これは、日本だけの問題ではなく、アメリカやイギリス、フランス、ドイツなども同様です。もともと、自家用車に対する自動車保険に関しては、その成立からずっと「お前が自分で運転するから特約で損害が起きたときは保険を出してやる」が基本であって、そこにお前や家族、お前の荷物も、事故ったり、怪我をしたり、亡くなられたときは保険金を出しますという仕組みになっています。

 地方の蛮族が友達に貸した車で事故られた保険金を請求してゼロ査定されてブチ切れる事案がありますが、保険というのはそういうものです。

 なので、自家用車ライドシェア用保険を商品として作って加入を義務付ける方法でしか成立はしないでしょうが、この場合、そもそも誰がどのくらい業として客を乗せて賃走させるのか分からんので、各国保険会社もライドシェアのシステムを作っている業者と組んでこれから「走った分だけ払う営業用保険」でも作ろうかってところまで来てはいます。

 ただ、そんな面倒なことをするより、自家用車ライドシェアではなくリムジン(ハイヤー配車、代行運転を含む)ほうがいいじゃないかという話が出てきます。おそらく、UBERが便利だよ、UBER客が野良の配車アプリよりも客の品質が良いよというのは配車タクシーとリムジン(ハイヤー)の違いもあるのかなと調査をした限りでは思います。たぶん、UBER的な便利なリムジンが普及すると質の悪い客も増えるでしょう。

 で、それへの政策対応については市川拓也さんも書かれているようにライドシェアという新しいカテゴリーを規制の中に盛り込み、事実上リムジンであるライドシェアに対して事業用保険を作ってもらってこれへの加入と登録をすることでライドシェアを認めていくよという政策的な段取りになっていくのではないかと考えています(少なくとも私は)。

 ただ、現状では某審議会でも配車タクシーとリムジン(ハイヤー)とがごっちゃになった上、そもそもタクシー不足の問題はライドシェアを入れれば解決ということではなく、単純にタクシー運転手さんの賃金が実際の需要よりも低く抑えられているのでなり手が少ないことのほうが政策的には問題ではないかと思います。これは国土交通省のタクシー行政がもう少し柔軟な総量規制と賃走体系をできるように変更するだけで本来は解決する問題です。

 また、浜田さんの記事にある通り、タクシー運転手さんの側も悪天候などでは配車アプリからの配車要請を切ってしまう現象はありますが、これは、UBERなどでは求めている利用者・乗客の位置を表示して近い客を拾いに行くことが合理的なのに対して、もともとタクシー会社の配車アプリは配車要請があったタイミングで近くにいるタクシーをオペレーターが指定して配車させる仕組みが元になっているため、仮にドライバーさんが遠くにいても、その会社に配車要請があったら客を取りに行ってしまうことが理由です。

 もうみんなスマホでGPS使えるのだから、タクシー配車の際の距離の遠近などはその辺に歩いている猫でも理解するレベルです。したがって、いまや猫以下のサービスレベルで配車アプリを実装してしまっているタクシー会社は不要なんじゃないかと言われる恐れもありますし、また、そもそもタクシー会社が契約タクシーを持ち、ドライバーさんを雇い… という業態で本当に今後成り立つのかねという重要な議論はこれから出てくることでしょう。

 また、この辺の問題でとても大きいのは、まあ、何というか、政策を審議している国土交通省はともかく、出入りしている交通経済・交通政策関連の有識者の皆さまの、あの、レベルの低さと言いますか、お前いまそれ言ってるの馬鹿じゃねえのという、ええと、まあそういう感じなので、川邊健太郎さんほか経済団体の皆さまがガースー(菅義偉)担いでデジタル大臣の河野太郎さん経由でデジタル臨調のお題にライドシェアを入れて一気に岩盤規制を覆そうという気持ちになるのも分からないでもありません。

 ただ、物事の根幹はかなりの経過措置を取らないと保険行政の問題になってそれは金融庁様の問題になるからどうすんだよという手配をやらないといけないんですが、なにぶん河野太郎さんが真ん中にいる限り金融業界でワシが協力したいと名乗り出る命知らずは少ないと思いますし、いろいろ無理もあるんじゃねえのかなと感じないでもありません。うっかり話を進めている最中に大将が検察に呼ばれて逮捕されましたとかシャレになりませんので。

 最後にちゃぶ台を返すような話をするわけではありませんが、コロナ禍の最中に一気に広がったUBER EATSや出前館などあの辺の仕組み、搬送中の事故などが労災になるのかも含めて労働問題にまで発展したうえに、サービス品質問題やらコロナが終わって客が減ってバブル崩壊して面倒が起きたりしています。

 仕方ない面もあるのですが、コロナだったしみんな家で飯を食いたいよねって状況が終わった後で、ふと冷静になって考えたら誰も得をしておらず、経済効果もほとんどなくて、勝手に期待感を膨らませた投資家が出資金や売上の過半を広告宣伝費に投下してどうしようもないクソ赤字企業ばかりになってしまっていましたとかいうどうしようもないオチになっていたことは理解しておく必要があります。

 ライドシェア自体は、まあ確かにICT使えば便利だよってのはあるんですが、その便利さというのは投資家の成長期待を煽って時価総額が膨らまされている面はあるけれど、その一本足打法で伸びていける期間はたいして長くなく、終わってみたら街中のレンタルサイクルが廃自転車の山になっていたようにゴミで終わるんですよ。盛り上がるとしても、非常に一過性のものであって、最終的にはUBERのような使いやすいアプリの標準が出来上がって既存のタクシー会社がそれに乗っかっておしまい、ということになるでしょうし、政策的に、やるとしても新しいカテゴリーとしてライドシェア的なものを入れて、個人タクシーと同じパッケージでリムジン(ハイヤー)業務をやる仕組みを作り、保険も入れて… ってことで終わりです。そんなら先に、タクシー運転手さんの賃金上げて参入しやすくしろやってことじゃないですかね。

 蛇足ですが、政策審議をするのはまったくやぶさかではないのですが、この界隈の、あの、まあ何と申しますか、言葉にはしづらいですが、有識者が総じて馬鹿なのに乗じて経済団体が一気に政策ロビーしてきて、いやおまえそれ保険行政どうやって着地させるつもりなのって質問で一発撃沈するようなオチはやめたほうがいいんじゃないかと思いました。みんな時間の無駄だと思うんですよね。

 民泊もカーシェアもだいたい同じ経緯を辿ったの、いい加減理解してほしいんですよ。周りに集まってるの、馬鹿しかいないじゃないですか。カーシェアですねいいですねって盛り上がっておきながら、激甚になる連休前とかみんな車借りに来て台数足りなくて借りられないって怒ってる消費者と、車で休みに郊外まで出ていこうとして渋滞にはまって怒ってる消費者とが量産されて、平日は誰も借りないカーシェアの車がずっと駐車場に止まってて機会損失の山になってるとか馬鹿の巣窟じゃないですか。

 みんな乗りたいときはだいたい一緒なんだって話から自動車流量を想定してシェアリングされるべき台数を規定するのってそんなにむつかしかったですか。本来、そこ(需要予測)がICTなんじゃなかったですかね?

 とりあえずまあみんなUBERみたいなタクシー配車アプリ作って賃金上げてけばシェアリングエコノミーですとか言わなくても解決するでしょう。UBER、便利ですからね。そっちに寄せてこうよ。ねえ。

 画像はAIが考えた『とりあえず政治方面の偉い人にイノベーションで経済成長ですよと焚き付けててめえの畑に他人の水源から水を流し込む作業が政策ロビーの仕事だと学ぶ皆さん』です。

https://twitter.com/kirik_news


神から「お前もそろそろnoteぐらい駄文練習用に使え使え使え使え使え」と言われた気がしたので、のろのろと再始動する感じのアカウント