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滅びゆく地方での雑感

 定常的にやっている業務でご一緒している先から公開していいというのでJBpressで玄人向けの記事を書きました。

 あんまり土地勘のないところに地方巡業しても疲れる割にたいしたことが分からないんじゃないかと思って島根とか足を向ける機会も無かったんですが、担当するはずのジジイが突然辞職しやがったので仕方なく穴埋めに行ったらこれがまた面白い。聞く力(ちから)スキル発動!

 で、記事にも書いたんですが、島根県の有権者、お年寄りがとても多いんですけど皆さんよく政治の状況をご存知で。シルバー民主主義と言いつつ、社会保障を維持するために消費税は仕方ないと思っているとか、(旧)民主党は本当に良くなかったので自民党筋に投票するのは仕方ないが、最近の自民党はだらしなさ過ぎて駄目だ、など、言いたい放題お話いただいて、こっちも「ですよねー」みたいになるのが心地よかったです。

 あと地元に若い人や子持ち勤労世帯が残らない問題。

 まあ国政とはこれは直接関係ないところですが、知事として評判の良い自治省出身の丸山達也さんをもってしても無理な話で、地元に仕事がないから島根に若い人が帰ってこないとか、地元の島根大学を出ても島根県庁や市役所に就職できなければみんな広島や大阪に行ってしまうのはどうしようもないよなあということで終わってしまいます。

 さらに、国の事情ではありますが今後は10増10減を経て次の議席割をすると、島根はついに1区になるか、鳥取か北岡山と合区になる可能性が高くなります。議会制民主主義において、地域代表としての県単独区であるべきという議論もありますが、他方で法の下の平等を宣言する憲法から導き出される一人一票原則もまた大事で、東京に住む人が一票の権利を犠牲にしてまで過疎地島根を救えとは制度的にとても言えない面もありますから、これはもう減区で我慢して頂戴としか言えません。

 そんなところに苦労して貧しい暮らしをするため島根を選択する人はそう多くないのも事実ですが、やはり電気道路水道医療などのインフラも、市議会町議会も地方公務員も衰亡していって、まあ成り立ちません。成り立たないことは分かってるけど、地元で顔を合わせて議論しても苦しくても現状維持しようという結論しか出ませんから、衰退を受け入れるしかなくなっていきます。

 交付金もまた、地元の経済も縮退してますんで地元負担部分が予算として捻出できず、道路や公共施設の維持のおカネが出ません。当たり前ですが、人がいないから稼げないという地域にインフラを維持する資金が湧いて出るはずもないのです。

 それを何とかするのが政治だろうと言われるわけですけれども、何もないところから生み出すことができないのは政治だろうがそうでなかろうが同じなので、無理なものは無理としか言いようがないんですよね。

 で、そういう無理なところで行われている島根1区補選、結果が出る前から言うのもなんですが面白いんですよ。なんつーか、自らのコミュニティが地域の衰退とともに滅びゆくことが分かっている地元有権者の、冷めて、現実的な物言いの上に空虚な選挙戦が繰り広げられているという。

 政治不信というか、諦観なところがあってさ。

 永田町やマスコミの論理で語る政治のトピックスと、足元で日々暮らしている地元有権者の抱える政治的諸問題への見方とのギャップがあり過ぎる。込み入ったことを聞けば回答はあるけど、自発的に有権者から反原発とか消費税反対とかジェンダー問題とかが出てくることはほぼゼロ。あるのは物価高、年金、孤独、病気、地元の雇用、買い物難とかそういうキーワード。

 これもう政策主張が与党と野党でどっちが刺さるかとかじゃすでにないんですわ。示される人間性に対する、評価勝負な側面があって。

 あと、なぜか圧倒的な石破茂。なんだろうね、あれ。有権者の口から自発的に出る政治家の固有名詞で、唯一ポジティブに表出される唯一の人物。故人で言えば竹下登や岩国哲人なんだけど、その並びで石破茂の名前が飛び出してくるときに感じる、圧倒的な違和感。でもそれは、地元で信じることのできる政治家という、主義主張や政党、立場を超えた同じ箱に入れられたおもちゃなんだなあと思うんです。

 過去形で語っちゃいけないけど、いやあ面白かったなあ。もうそんなに足を踏み入れることもないんだろう、でも島根は楽しかったです。

 画像はAIが考えた『老人天国で指し示される政治不信と、そこから導き出された理想の社会』です。

思ってたんと違う画像出てきたけど面白かったから掲載。っていうか奥にいる光ってるおっさん誰だよ

神から「お前もそろそろnoteぐらい駄文練習用に使え使え使え使え使え」と言われた気がしたので、のろのろと再始動する感じのアカウント