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「塾の先生は学校の先生よりも教えるのが上手い」のは本当か?

Xでこんなニュースが話題になっていたので、noteにも転載してみました!

このニュース、学校でも塾でも働いた私がちょっと違った視点で解説してみます。
まず、このニュースで取材に答えている子は「担任の先生よりも塾の先生の方が分かりやすくて良かった」とは、必ずしも思ってないと思うんですよね。

①取材されている子の状況を想像しよう

というのも、取材を受けてる子は大勢のスタッフと先生に囲まれて、「何かいいこと言わなきゃ!」という超プレッシャーの中で話してるわけです。

>難しいことを言ってくれて自分のためにもなるし
の言葉を聞いても分かりますよね。

この状況で小学5年生が

「いつもの授業とあんまり変わりませんでした」
とか
「担任の先生の授業の方が好きです」

なんて、言えるわけがないんです。
(もし言っていたとしても、編集でカットされます)

ニュースを見ている大人が、この言葉を子どもの正直な感想として受け取るべきではありません。

②学校の授業と塾の授業は、目的も方法もまったく違う

そして教務の面で言うと、そもそも塾と学校とでは授業の作り方がまったく違います。
塾は「いかに算数を理解させるか」

それに対して学校は「算数を通して、いかに『社会で生きる力』を身につけさせるか」…たとえば、班での話し合い活動を利用して、対話したり協働したりする力を身につけさせるんですね。
いわゆる、非認知能力というやつです。

ニュースの映像を見る限り、この先生のやり方は明らかに前者です。
板書を見れば分かりますが、児童たちの意見が書かれていませんよね。

もしコミュニケーションなどの力を重視する先生なら、板書は子どもたちから出た言葉で埋まっているはずです。

まとめ:大人のメディアリテラシーが問われるニュース

一見して分かりやすい情報だけをつなぎ合わせて「子どもの学力を上げるのは民間企業の塾講師の方が得意」みたいな発信をしてしまうのは、ミスリーディングです。

一口に学力と言ってもいろんな力があって、「1回の授業でこの単元を理解させる!」みたいにペーパーテストに特化した塾と、「6年間かけて積み重ねていく」みたいに基礎的・総合的な能力を重視している学校とでは、提供する学力の質が違います。
そういう複雑なものを「教えるのが上手いか、下手か」みたいな単純な言葉で表現することが、そもそもの間違いなんですね。
言葉の解像度が粗いんです。

それに…メディアの主張を代弁させるために、子どもの言葉を利用しないでくれ!という怒りがわいてきます。

子どもの発言が切り取られて、まるで「担任よりも塾の先生の方が良かった!」と正直に言ったかのように報道されているんです。
子どもは、初対面の大人(=記者)にそんなに心を開いた発言をしないですよ…
自分に期待している大人の圧を、きちんと感じ取って発言しているんです。

予算を付けるなら、外部から塾講師を呼ぶより校務のIT化やスリム化を進めるべきです。先生は専門的な技術が必要な教務に集中し、事務や雑務こそ外注すべきです。

先生はとにかく忙しすぎるので、負担を減らして、もっと専門性や生産性を高められる余裕と機会を作ることが必要。それが児童の学力向上につながると確信しています。
様々な理由でICTを十分に活用できていない学校、まだまだ多いですからね。

受験対策や特別な補習など、学校教育+αとしてなら塾講師を頼る選択肢もあると思いますが…学校は+αをするより前に、基本構造をアップデートすべきタイミングなのですよね。

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