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旅に暮らす #4 沖縄(完結編)

旅というか、放浪というか、でも自分の感覚としては「暮らし」に近い。そんな日々の断片を綴った手記を。

主観が、偏見の混ざった考えが、ふんだんに盛り込まれていますが悪しからず。


10/12 ~ 10/26  大宜味村のきゆな牧場でボランティア生活


10/12

午後、牧場に到着。この日は仕事をせず、少しゆっくりさせてもらうことに。

せっかくなので周辺の探検がてらお散歩へ。

誰かが拠点づくりをしている最中でいなくなったような痕跡があった


こんな素敵な景色に出会ったりしたけど、膝~腰丈くらいのひろーい草むらで写ルンですを無くした。10枚くらいは撮ってたやつ。悲しい。

20分くらい粘って探し続けたけど見つからず、あきらめた。

今日はなんだか疲れた。新しい場所への移動とか、そもそも昨日は安田で送別会をしてもらって遅くまで飲んでたとか、低気圧とか、もろもろかなあ。

こういう日もあるよねえ。ゆっくり音楽を聞きながら寝る。

10/13

初乳のカッテージチーズづくり

出産後1週間くらいのお乳は初乳といって、成分が普段と違うので出荷しない。捨てちゃう酪農場も多いらしいが、おかあさんはカッテージチーズにしている。

「このミルクは普通より栄養価が高いから、無駄にしたくない」と、ちょっとの手間を惜しまずあるものすべてを生かそうとするところがすごく好きだ。作り方も簡単。一緒に作らせてもらう。



10/14


朝早いのきついなあ。明るくなれば自然と目が覚める体質だけど、暗い中起きてくるのはやっぱり苦手。

ここでは毎朝5時に仕事を始める。
牛を放牧地から牛舎へ移動させたり、ペットのように飼っているウサギ・ブタ・ニワトリのお世話をしたり。朝ごはん休憩をはさんで午前中は10時まで働き、午後は2時間お仕事。

wwoofを10年近くやっていて、workawayは3年くらい前に始めたらしい。
70歳前後の”おかあさん”と”おとうさん”が二人三脚でやってきた場所で、海外からも国内からもたくさんのボランティアを受け入れている。今はことみさん(2人の娘さん)も入って乳牛40頭くらいを世話している。

僕が滞在している間は、入れ替わりで短期ボランティア4人、そしてタイからの技能実習生(Nouy)と一緒に仕事をしていた。


Nouyは休憩時間、よくタイのコメディ番組やTiktokを見て爆笑している。
これは、「何がそんなにおもしろいのかしら」とのぞき見しているおかあさん。笑


夜、2日連続でホタル見れた。10月にホタルいるんだ。


10/15 

ヤムヤムのみんなが遊びにきてくれた。中山コーヒー園にいたときも来てくれたし、ここでも再会できて本当に嬉しい。

サンディさんのアイスが落ちそう(笑)


きゆなのソフトクリームは特別で、とてもとてもおいしい。

ミルクはもちろんとれたてを使うし、牛乳の他には生クリームと砂糖しか加えない。そしてなにより魅力的なのが、毎回おかあさんが味見をしながら砂糖の量を調節しているところ。同じ牧場の同じ牛でも、日によって微妙に味は変わるから、その日のミルクに合わせて味を決めにいっている。


また会いたいな


サンディさんの動画


10/16

脱走した罰で母子と別居中だったお父さんブタを元いた場所に帰してあげた。ブヒブヒ言いながらすぐ泥の中で遊んでいたのを見て、すごく温かい気持ちになった。ブタは人間と同じ言葉を話さない。でも、あのブヒブヒが嬉しい、楽しい、そういう声だったことは間違いないと思える。もちろん証明なんてできないけれど、声の感じや表情、動きを見ていればそういうのってわかるものなはず。


昼休憩中、お酒の買い出しに。牧場から最寄りのコンビニまで徒歩1時間くらい。ひとまず歩き始めて、30分くらい行ったところでヒッチハイクに成功。事情を話したら、買い物を待ってきゆな牧場まで送ってくれることに。中部在住の方々で、ちょうどアイスでも食べて帰ろうかと思っていたタイミングだったらしく、きゆなのおいしいソフトクリームも喜んでもらえて、いろいろとよかったなあ。


夜、イノブタがたくさん残っているということで、僕が生姜焼きをつくった。他にも野菜パパイヤと人参のさっぱり系サラダ、ヘチマの炒め物など作って明日出発のボランティア仲間と最後の夜ごはん。喜んで食べてもらえてよかった。料理をおいしく食べてもらえるのってシンプルだけどすごく嬉しい。

オリオンビールがよく合う

おかあさん、ちょっと酔っ払っておもしろくなってた。若い頃のダンスパーティーの話が僕は好きだなあって思ったし、下ネタに走りがちになるところもお茶目でかわいかった。


10/17

近くにある登り窯、圧巻だった。写真が全然ないけど、だいぶ山奥の方にある場所で、5つの窯が連なっているものが2列あった。

田場陶器、という場所

10/19

おとうさんの三線の音や歌声からは特別な何かを感じる

10/23

片付けを頼まれたゴミ捨て場。ここ数日、動物のお世話時間以外はずっとここを整理している。

使わない木材が大量に放置され、半分近くは腐りはじめてる。基本的に全部運び出して燃やそうと思っていたけど、数日に一度は雨が降ることもあり、ちょっと先が思いやられていた。ひかるくんやヒデさんたちなら菌を活用できるかもしれないと思い、連絡してみる。もしかしたら使ってくれそうな反応が返ってきて、まだそうと決まったわけではないけど結構満たされた気分。作業が減らせるのもそうだけど、使えなさそうだったものが生かされそうなのが何よりも嬉しい。


ところどころプラスチックが混ざっていたので結局使ってもらえなかったけど、検討できたから納得できた。



喜如嘉の廃校を利活用している~~で映画の上映会。ことみさんが「きりくんが好きそうだと思って」と教えてくれて、会場まで車で送ってくれた。『森のムラブリ』。会場には移住者っぽい人たちも地元の方っぽい人たちもいて、結構高齢な方たちもいるのが意外だった。


上映終了。85分のうち、たぶん起きていたのは15分くらいだと思う。ほとんど寝てしまった。内容はすごく気になったから必死に抵抗したけど、無理だった。ところどころの場面は見たけど、全体のストーリーとかなんだったのかまったくわかっていない。笑


毎日4時台に起きるから午後2~4時くらいってすごく眠くなる、この日は雨が降っていて低気圧だった、そして会場のすぐ裏はちょっとした山みたいになっていてセミの声やしとしと降る雨の音が心地よかった、それに加えて映画もジャングルの中の映像がほとんどでにぎやかな音楽や激しいシーンが全然ない。これだけ条件がそろっていたらそりゃあ寝ちゃうよなあと思う。いつかまたじっくり見れる日が来るのを楽しみに待ちたい。
 

~~

ウサギが一匹、息を引き取った。

小屋の中で倒れていて、抱き上げたらびくびく動いた。死にそうな動物、死んだ動物に感じる何かちょっと不気味な感覚が身体中に広がる。でも、本来は嫌なものでも怖いものでも全然ないはず、と思って身体を痙攣させているその子を両手ですくうように持ち上げ、小屋の外へ出す。

Nouyが心臓マッサージをしてみたけどあまりよくならない。この子はもう助からないね、と判断して別の小さな小屋に寝かせておく。その日の夜はまだ身体は温かかったけれど、翌朝には硬く、冷たくなっていた。手を合わせて、まだうまく言葉にはできない大事な何かを教えてくれたことへの感謝の気持ちを込めて、安らかに、と祈る。



10/25

ヒデさんとひかるくんが、自分たちでたい肥を作るため、牛糞を取りにきた。

ヒデさんが「おれもヤムヤム落ち着いたらきゆなでボランティアしよっかなー」とか真顔で言っていた。フットワークの軽さというか、年齢によらない動き、この人なら本当にそうしてそうだなあと思わせるあり方が素敵。



やんちゃで愛くるしいチャーリー。

10/26

素敵な時間を過ごさせてもらったきゆなに何か最後にプレゼントしていきたくて、インスタグラムアカウントを紹介する簡単なポスターを作ってみた。急いで作ったからあんまりいい出来とは言えないけど、せめて気持ちが伝わったらいいなと思いながら。
 
ヒッチハイクで那覇へ。3台乗り継いで3時間ほどで到着。普通に自分で運転していっても2時間弱くらいの距離だったことを考えると、だいぶ順調だった。乗せてくれたみなさんありがとう。


10/27

那覇のモノレールに初めて乗る。優先席が空いていても座らず立っている人たちが多い。どうしてだろう。

朝8時過ぎ、牧志駅から那覇空港駅まで行く。途中の旭橋駅でたくさん降りていくまでは、軽めの満員電車だった。


指はさみ注意のステッカーが気になる。ハサミに包帯が巻かれ、涙目なカニのイラスト。挟まれる方じゃなくて挟むほうだろお前、とツッコまれそうなカニさん。これ作った人結構ちゃんと考えたのかなと思う。何も考えてなかったら人間のイラストになるだろうけど、おそらく子どもに伝わるように、「カニに挟まれたら痛い」を伝えてるのかなと。


~~

沖縄を去るのがすごくさみしい。恋しい。同時に、しみじみと、感慨深い。ああ、こんなふうに自分は感じることができてているんだ、こんなに素敵な気持ちを味わわせてもらっているんだ、と。

こんなふうに思える場所や人に出会えたことはものすごく幸せでありがたい。


飛行機の中から、沖縄へ祈りを。

沖縄の居心地が良すぎて、この先はもしかしたら楽しくないんじゃないかと想像して、ああ嫌だなあとか、少し反応する自分がいる。

でも、そういう時間があるからこそ居心地の良さに気づけるということで、そしてすべてのことがたくさん大事なことを教えてくれると知っているから、ああ存分に嫌な思いも退屈も苦しみも引き受けたいと思う。って書いてたら涙が出てきた。笑

生まれてきてよかった、と心から思えた時間だった。お母さんに伝えよう。



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