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大好き柴田SideRoad〜かきかけのFANZINE日記〜(4)『夏の限り』の歌詞考察


※この記事はZINE『100mをありえないような速さで走る50の方法』第2集にフルバージョンとして掲載されています。より深くお読みになりたい方はぜひZINEをお求めください。

こんにちは、桐山もげるです。

本記事について

8月17日に配信されたadieuさんの新曲『夏の限り』の歌詞の考察記事です。この記事は、柴田聡子さんのFANZINEの第2集にも収録する予定です。

『夏の限り』リンク

2022年8月17日にadieuさんの新曲『夏の限り』が各種サブスクにて配信されました。また同日YouTubeにてMVも公開されています。この曲は『灯台より』と同様、作詞・作曲は柴田聡子さん、編曲はYaffleさんが手がけられています。

〈Spotifyリンク〉

〈YouTube公式MV〉

歌詞について

2022年9月3日現在、公式に歌詞の全部は公開されていないようです。

Spotifyに表示される歌詞に採用されている「プチリリ」さんの歌詞を参照しました(下記リンク)。

公式発表されていない歌詞は「同音意義語のための表記ちがい」、「改行の位置のちがい」が含まれている可能性はありますが、少なくとも「音」として誤りはなさそうです。

『夏の限り』歌詞考察

<歌詞の分類について>

この歌詞は過去記事(※)でまとめた「歌詞の世界観の分類」でいうと、「2.恋愛の歌」、「4.友愛や友情を表現する歌」に該当する曲と思います。また、ここで新たな分類も加えます。「10.子どもと大人の間で揺れ動いている歌」です。

この新たな分類は『ナイスポーズ(RYUTistさんへの提供曲)』にも当てはまると思い、柴田さんの歌詞の世界観の分類のひとつとしたいと思いました。

(※)「大好きな柴田聡子さんについて語りたい(1)柴田さんの歌詞の分類についての考察」です。詳しくは下記リンクをご参照ください。

<SNSの意見交換から気づきを得てできた考察>

今回の考察内容は、前回の記事でも紹介した「まいか」さんとTwitter上で意見交換をさせていただいたことから気づきや発展ができました。いつもたくさんの気づきをいただき、本当にありがとうございます。下記のTwitterにリンクされているまいかさんのブログ記事と、Twitter上のリプライのやり取りも含めて参照いただければ、この考察に至った経緯がわかると思います。


<「登場人物」と「ストーリー」>

この歌詞の「登場人物」と「ストーリー」について次のような解釈を考察しました。

「登場人物」

”わたし”:主人公、女性。

”あなた”:”わたし”の友人、女性。

"男の子":"あなた"の恋人、男性。

「ストーリー」

"わたし"と"あなた"は年齢は20歳前後くらい。昔から仲良し、今もいつも一緒にくっついているくらい親しい友人関係。

でも、最近"あなた"に恋人(="男の子")ができた。それからというもの、恋人に誘われたら"あなた"は"わたし"よりも恋人を優先し"わたし"は寂しくなっていた。

あるとき、恋人からの誘いを"あなた"は「今日はやめとこう」と断り、"わたし"と久しぶりに遊んだ。"あなた"の乗るバイクに2人乗りをして遠くまで行った。

"わたし"は思う。そうか、"あなた"は"わたし"より先に夏より先の恋の季節に行ってしまった。"わたし"はまだ、夏の中にいる。"あなた"は"わたし"を置いて行ってしまってもよいのに、"わたし"を見捨てなかった。そのやさしさは友情からなのか、それともそれ以外のものなのか……、わからないけど、確かめなければ傷つくこともない。

恋をしたり、恋人と喧嘩して傷つけられることのような「人と人との事」について、"わたし"は何もわかっていない。子どもの頃に、「自然」と対話しこの世の中について教えてもらっていたけど「人と人との事」についてはこたえてくれない。

"あなた"は先に新しい季節に行ってしまったんだね。それを心から祝福するよ。"わたし"はまだ、ぎりぎり夏の中にいる。でも、もしかしたらそろそろそっちに行くかも。

<”夏”や"秋"とは何の比喩か?/タイトルの英訳は"The Edge Of Summer">

タイトル『夏の限り』や歌詞の中に"夏"ということばが登場します。単に"季節"を示すものではなく、例えば

"あの日のように こたえる夏はもういない"

"夏の肩をゆすっても"

というセンテンスで用いられており「擬人化」されています。

(もしかしたら、登場人物に「夏」という名前の人が出てくるのかな)

とも一度考えました。しかし、冒頭にブログをご紹介したまいかさんもご指摘されているように、曲のタイトルの英訳が"The Edge of Summer"です。"Natsu"という名前の人が登場するとは捉えにくいと思いました。

"夏"の意味について、僕は次のように捉えました。

夏は人生の「ある時代」を示す暗喩。それも、"つぎは秋" という部分で示されるように「成長すると過ぎ去ってしまい戻れない時代」と思います。

上記の「ストーリー」の考察をもとにするなら、恋人ができた"あなた"に"新しい季節が生まれた"と解釈ができます(念のための注:考察が誤っている可能性はもちろんありますので、あくまで僕の「仮説」のなかです)。

すなわち、"秋"は、「恋人との恋愛をするような大人になった時代」"夏"はその前の時代の「人間関係が複雑になる前の幼い時代」と解釈しました。

<"夏"はかつて何をこたえてくれていたのか>

一つ前の『ナイスポーズ』の考察概要の記事でも触れたように、『夏の限り』においても「子どもの頃、大人では感じることのできないものを感じていた」というモティーフが描かれているように思います(下記リンク参照)。

例えば、

"あの日のように こたえる夏はもういない"

とあります。かつて、"夏"は何を"わたし"にこたえてくれていたのでしょうか。

これについて考えるためには「花鳥風月」と「人間関係」ということばがキーワードになるのではと思います。

柴田さんの歌詞には、「美しくも畏るべき自然の情景」がよく使われます。

例えば、

"雷や流れ星や燕の青さ軽さ"(『灯台より』)

"肩組み合って割れる波を見ようね"(『旅行』)

"霧が晴れたら紺色の空に点々と星粒"(『雑感』)

のように。

『夏の限り』でも

"波間のかがやき ひかってやまない"

"世界の温度を夕立が奪って歩く"

が該当すると思います。「自然の情景(花鳥風月)」のなかに、「人と人との事(人間関係)」は含まれません。

僕の考察の中で、"夏"から"秋"に移ることを「恋愛をする時代に移る」と捉えました。言い換えるとそれは「生きる上で、人間関係のウェイトが大きく占める時代に移る」と言えるのではないでしょうか。

つまり、悩みの中に複雑な人間関係が入り込む前の時代(="夏"の時代)では「自然」を眺めていれば、それだけですべてが解決するように思えた。

それが、「かつて、夏がこたえてくれていた」という意味ではないかと考えました。

<"あなた"が男性である可能性はないのか>

ここで、僕が考察に示した「登場人物の"あなた"を女性だと思った」根拠に触れます。

まいかさんのツイートにおいても、『灯台より』の歌詞についてadieu STAFFさんが「二人の関係性としては家族・友情・恋愛などどんな関係性にも当てはまる」とコメントされていることに触れ、『夏の限り』についても同様に必ずしも一つの関係性に捉えられないのでは、という趣旨のご指摘をされていらっしゃいます(下記リンク参照)。

僕の最終的な答えとしては、『灯台より』のコメントで示されているとおり「どんな関係性も当てはまる」が正解かもしれないと思っています。

ですが、今回の考察ではあえて「"あなた"は女性で、"わたし"の友人」であるとしました。

その根拠は次のとおりです。

・タイトルの『夏の限り(英題:The Edge Of Summer」)であることから、「主人公は夏のなかにいる」ことが示唆される。もし、"あなた"が男性ならば既に「"わたし"は秋にいる(="あなた"と恋愛している)」ことになり、矛盾を感じたためです。歌詞の最後の部分で"新しい季節が生まれたのに浮かれている"とあり、「誰かは秋にいる」ことが示されている。これが矛盾しないのは、「"あなた"は秋にいる」「"わたし"はまだ夏にいる」という捉え方だろうと思いました。

・バイクに2人乗りをしている(だろう)描写のなかに"あちこちあまりに揺れる"とあります。ここに僕は女性の要素を感じたためです。例えば、「長い髪が揺れる」と言った情景が含まれている表現ではないかな、と思いました。ただし、これは男性であっても、矛盾しないとは思います。

まとめ

一昨日記事を公開した『ナイスポーズ』の考察概要とほぼ同時に今回の『夏の限り』の考察を進めていました。

どちらにも、考察の骨子を捉えるヒントとなったのは「まいかさん」とのTwitterでの意見交換です。改めまして、たくさんの気づきをいただきましてありがとうございます。

この記事を公開した後にさらに新しい気づきが得ることも十分考えられます。そうなれば、考察内容に、追加(あるいは訂正)の修正を加えるかもしれません。間に合えば、FANZINE第2集には修正版を掲載します。

RYUTistさんの『ナイスポーズ』、adieuさんの『灯台より』『夏の限り』。これらの歌詞には共通して、考察していて涙が出てくるほどに純粋である点、「子どもとは」「大人とは」という深く、普遍的なテーマを込められている点を感じます。柴田さん、本当にいい曲ばかり書かれますよね、

では、今日はこの辺で!

また次の記事でお会いしましょう〜。

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