テレ東のジャニーズ問題検証番組で２０１４年ハワイで行われた「嵐」結成１５周年記念コンサートにテレビ局が旅費滞在費ジャニーズ事務所持ちで招待されていたことが暴露され、その後の文春の取材で民放各局はそれぞれ数人招待されていたことを認めました。ハワイまでビジネスクラスに乗り豪華ホテルに泊まればその費用は少なくとも一人あたり１００万円を超えていることは間違いありません。テレビ各社が数百万円の便宜供与を受け、見返りにワイドショーなどで嵐のコンサートの模様を放送することは公共放送として倫理的には大問題だとは思います。でも民放は公共電波を使っているとは言え飽くまで私企業であり普通これを賄賂と呼ぶことはありません。しかし公共放送の代表NHKの幹部がこのハワイ・コンサートに招待されていたとなると話はだいぶ違うと思います。

NHKは放送法に基づき設立された特殊法人で日銀と同じように予算は国会による認可が必要で極めて公共性が強い法人です。NHK職員は公務員でもみなし公務員でもありませんが、国民からほぼ強制的に視聴料を徴収する特権を持つ特殊法人の職員です。不思議なことに今回の文春報道にはNHK幹部がハワイに招待されていたことは全く書かれていません。でも２０１４年１０月１６日に発売された週刊文春には紅白歌合戦に絡んだ「賄賂疑惑」が報じられ、その記事の中でNHK幹部に事務所から高級店のバームクーヘンが贈られ熨斗には嵐のメンバー名とジャニー喜多川の名前があったと書かれています。さらに記事は続き「９月にはNHKをはじめとしたマスコミにはジャニーズ側から最高級ホテル・ハレクラニの部屋が用意され、さらに幹部には高級ブランドのバッグやネクタイまで贈られていた」と書かれています。明らかに２０１４年の時点で週刊文春はNHKがハワイの嵐コンサートに招待されていたことを知っていたのです。その年の紅白歌合戦の司会はV６ではないかとの巷の予想もありましたが、５年連続で「嵐」が司会をすることとなりました。そして週刊文春はそもそも５年連続で嵐が司会をするという密約があったのではないかと報じています。

では何故、週刊文春は今回NHK幹部のハワイ招待を報じなかったのでしょうか？９年前の話なので当時とは記者が変わり自社の記事を覚えていないのでしょうか？それとも当時は記者仲間の話を記事にしただけでNHKに正式な確認をしていなかったからでしょうか？今回改めてNHKに確認を求めたが回答が得られなかったということでしょうか？でもそれならNHKは回答を拒否したとして文春はその事実を書くはずです。NHKは民放のようなワイドショーがないので招待されるはずがないと思い込み確認を怠ったのでしょうか？いやいや文春たるものそんな甘いことをするはずはありません。

今回のジャニーズ問題でNHKは事務所に対しかなり厳しい立場をとっていますが、始めからそうだった訳ではありません。ジャニーズジュニア専門の番組ザ少年倶楽部も当初は継続しそうな感じでした。しかしクローズアップ現代で内部調査を始めたころから稲葉会長の厳しい姿勢が目立ち始めます。紅白歌合戦も今年人気のあった２グループくらいは出るのではとの噂もありましたが、あっさり裏切られました。今年会長になったばかりの稲葉会長は徐々にNHK芸能部門の癒着の酷さを知り、編成部長がなんと言おうとジャニーズ事務所の被害者補償問題が進むまでは新規のジャニタレ起用はしないと心に決めたようです。この裏には名誉挽回をはかる報道部門の強い働きかけがあったのかも知れません。もう一つ考えられるのはジャニーズ事務所の顧問に天下った若泉氏をはじめとする芸能編成部門の癒着が余りに酷く、実態を正直に表に出せば視聴料の不払い運動に発展し、NHKの存続そのものが危うくなると懸念し、敢えてジャニーズ事務所に厳しく対応することで癒着などないと強調しているのかも知れません。

さて今回NHKを追求しなかった文春はジャニーズ問題でNHKと手を握ったのでしょうか？それとも文春でも逆らえないような権力による圧力がかかっているのでしょうか？ジャニーズ事務所の記者会見で指名NGリストの存在を世に晒したNHKの特ダネ放送はジャニーズ事務所との決別宣言にも見えましたが、さて朝ドラ、大河ドラマ、ザ少年倶楽部とジャニーズべったりだったNHKは今後どう付き合って行くのでしょう。ジャニーズ事務所から高級バームクーヘン以外にどれほどの甘い物がNHKに贈られていたのか、それは政府与党にまで届いたものなのか、文春には権力にひるむことなくNHKの闇にも切り込んで欲しいものです。