5つのPlanar 85mm f1.4
Planar 85mm f1.4に格別な幻想を抱いていたわけではないのですが、なんだかんだで撮影に使っているうちに、同じようなスペックのレンズを5本も購入してしまいました。
ここで言うPlanar 85mm f1.4とは、1973-1975年頃にヤシカ・コンタックスマウントを含めた様々なマウントでCarl Zeissから発売され、当時爆発的な人気を誇った5群6枚の変形ダブルガウス型のレンズ及びそれらを後年に復刻又は発展させたものとなります(当方が所有しており、本稿で取り上げるレンズは以下の通り)。特にヤシカ・コンタックスマウントのものは、オールドレンズ関係の様々な書籍や雑誌、ウェブメディア等で取り上げられており、現在ではオールドレンズの中望遠の中では一番メジャーなものと言っても過言ではないでしょう。
HFT Planar 85mm f1.4 (Carl Zeiss銘/ Rollei QBMマウント)(以下、「HFT」)(1973年発売;西ドイツ製のCarl Zeiss名義のモデルは前期の金属環型と後期のゴム環型に分けられますが、自分が所有しているのは後期のゴム環型になります。以下の4(5)に記載の通り、描写も若干異なるようです。なお、Rollei QBMマウントについてはこちらの記事が分かりやすいです。)
Planar T* 85mm f1.4 (AEG)(以下、「ヤシコン」)(1975年発売;前期の西ドイツ製のAEG、後期の西ドイツ製のMMGと日本製のMMJの3つのモデルがありますが、自分が所有するのはAEGになります。描写もそれぞれ異なるようです。なお、ヤシカコンタックス・マウントについてはこちらの記事が分かりやすいです。)
Planar T* 85mm f1.4 zf.2(以下、「コシナ」)(2006年発売;ヤシコンの復刻版とも言われていますし、メーカーの記載からもそれは読み取れますね。こちらは現行レンズで、キヤノンとニコンの一眼レフ用がそれぞれ販売されてます。)
Milvus 85mm f1.4(以下、「Milvus」)(2015年発売;9群11枚ですが、レンズ構成を見ると伝統的なPlanar85mm f1.4をベースにしたものであることは一目瞭然です。メーカーもPlanar設計と言ってますし。こちらは現行レンズで、キヤノンとニコンの一眼レフ用がそれぞれ販売されてます。)
(おまけ)Kistar 85mm f1.4(以下、「Kistar」)(2017年発売;明言はされていませんが、ヤシコンと同一のレンズ構成等であることから、そのオマージュだと思われます。こちらは現行レンズですが、ヤシコンマウントでのみ販売されています。)
折角似たようなレンズが5本も集まったので、本稿では、これらのレンズの描写の違いやポートレートにおける使い分け等の観点から比較していきたいと思います。特に、全て同じCarl Zeiss(Kistar除く)で同一のレンズ構成なので、時間を経てレンズ設計や材料等が変わり、それらが描写にどのような変化・進化を与えてきたかを感じられたら良いなと思っています。
ただ、当方は面倒くさがりで、なおかつ適当であるところ、仔細なボケや周辺画像の比較は行わないので、ご容赦ください。あくまで、自分がポートレート撮影に使用するという観点から適当に比較しています汗
レンズ入手の経緯・考え方等については、末尾の「おまけ」の欄に適当に記載していますので、ご関心があれば、適宜お読みください。また、各レンズの詳細も別途まとめているので、こちらからご覧ください(HFTも後日更新します!)。
<撮影条件>
カメラ Nikon Z7
ISO感度 64
絞りとシャッタースピード f1.4, 1/320; f2, 1/160; f2.8, 1/80
ピクチャースタイル 「フラット」で撮影し、Lightroomで「標準」に変換
ホワイトバランス(Lightroom上の数値) 色温度5450K、色被り補正+13で固定
その他数値はいじっていません。
0 結論
以下、めちゃくちゃ長くなってしまったので、先に結論から書きます。
どのレンズもそれぞれ個性があって、とても素敵なのですが、透明感大好きな自分にとっては、現時点ではMilvusとHFT最高、ということになりました!
以上、お読みいただき、ありがとうございました!
1 先行研究
こちらのブログで、50mmという焦点距離ではありますが、HFTレンズとヤシコン(AE/MM)との比較を行われています。また、ヤシコンPlanar 85mmについても、詳細に調査されています。
加えて、こちらのブログでも、50mmではありますが、ヤシコン(MMJ)とコシナの比較が行われています。
これらの方々の調査・まとめは、いい加減な当方では及びもつかないほど詳細かつ入念なものですので、是非ともご覧ください。
当方自身も、上記先行研究とおおよそ同じような感想を抱きました。
なお、その他参考として、レンズの修理等をなされている方による考察はこちら(HFT、ヤシコンMMG)。
2 比較
(1)色味
ざっくり言うと、HFTはハイライト(明るい部分)に青みが強く出る傾向にあります。一方で、ヤシコンは暖色系の傾向です。コシナとKistarはニュートラル目かと思います。それらと比較するとMilvusも若干寒色系か。
寒色〜暖色
HFT>Milvus>コシナ≧Kistar>ヤシコン
ただし、以下のヒストグラムでは、Kistarは寒色と暖色の差は少ないのですが、一方で赤色に比べて緑が強めに出ていることが分かりますし(また黄色も若干弱い)、それは写真でも分かるくらいではあります。
自分のポートレート撮影においてはある程度の透明感を出していきたいので、寒色系が強めに出るHFTやMilvusをついつい持ち出してしまいます汗 ヤシコンやコシナだと、日本人の肌を必要以上にオレンジ色にしてしまいがちなんですよね…デジタルなんである程度好きなようにはいじれるのですが、やっぱり編集してても、なんとなく違いは分かりますし、この微妙なバランスを修正するのはやっぱり難しいです。
あと、Kistarの緑色は、肌の赤みを相殺しがちではありますが、それゆえになんとも言えない陶磁器のような綺麗な白色になる場合もあって、こちらもおすすめです。
(2)透過度
レンズの明るさを示す際には、その理論上の数値として写真用にはf値を用いられています。一方で、映画やTVのレンズでは、実行上の数字としてt値が用いられています(t値の詳細はこちらをご覧ください)。
本稿のレンズは、f値は1.4で共通していますが、本当に同じ明るさなのでしょうか。
結論から言いますと、正直、f1.4では違いは分かりませんでした汗 一方で、f2以降においては、他のレンズと比べてMilvusのヒストグラムは明らかに右寄り(明るい方向)になっていますし、実際の写真を見ても、Milvusの明るさは一目瞭然です。硝材とコーティング等が進化してきたからなのでしょうか。
しかし、材料の進化がその理由ならば、コシナもある程度明るくあるべきですが、実際はそうではありません。それは、コシナがヤシコンの復刻版という位置付けで、あえてヤシコンに描写を近づけようとしたからでしょうか。
なお、どのレンズもf1.4からf2に絞った瞬間に格段に明るくなっています(その分シャッタースピードは上げているのですが…)。もちろん周辺減光が改善されたこともあるかとは思いますが、f2からf2.8はそれほど明るさに変化がないことを考えると、本当に周辺減光だけが理由なのでしょうか。あくまでf値であって、t値でないにしても、本当にf1.4なのか少し疑問が残りますね汗
(3)解像感(中心部のみ)
画像がしっかりと見えると感じられる(解像感)のは、画像のコントラストと解像力(シャープネス)とのバランスによるものとされているそうです。いくらしっかりとデータ上は細かいところまで写っていても(解像力が高くても)、それが他の部分と区別が際立っていない(コントラストが低い)と、ちゃんと写っている感じはしないそうです。
自分は素人なので、解像感の高さ・低さが、解像力・コントラストのどちらに由来するものなのかは正確には申し上げられませんが、自分が感じた解像感の高さについては、f1.4では以下の通りです。
f1.4比較(個人の感想です汗)
Milvus >コシナ > ヤシコン >Kistar ≧HFT
やはりヤシコンについては、こちらの記事で書かれている通り、1970年代当時に解像力ではなく高コントラストでカメラ界を席巻したということがうなづける結果になっています(ただ、開放ではピントが全然合わせられないのですが…)。
また、現代においてもZeiss自身がコントラストと解像力のバランスを非常に重視しているとのインタビュー記事もありますし、Milvusの解像感の高さは技術力の進化だけでなく、そのような設計思想の現れでもあるかもしれませんね。
ちなみに、全部はやりませんが、f2.8でHFTとヤシコンを比較した場合、両方とも後方へのフォーカスシフトが発生していました。また、f2.8に絞ってコントラストが上がったおかげで、HFTの方が解像感が高まった気がします。実はHFTの方が解像力は上なのかもしれません(1973年のHFTから1975年のヤシコンになる過程で、レンズ設計の方針変更があったのかもしれませんね;あるいは単なる個体差か)。
なお、HFTは「ヴェールボケといわれるコンタックスRTS用[きろきろ注: ヤシコン]とは全くの別物であまりにも切れ味が良くシャープなことからポートレートにはあまり向かないとされています」との意見もありますが、まあ現代レンズと比較すると両レンズ共に時代なりの五十歩百歩なので、気にするほどのことは無いです。個人的には、HFTの方が良いバランスに仕上がっているとすら思います(ヤシコンはいくらなんでもピント面が柔らか過ぎ)。
(4)フリンジ
f1.4開放において、HFTもヤシコンもコシナもKistarも全て前ボケ部分にパープルフリンジが、後ボケ部分にはグリーンフリンジが発生しています。一方で、Milvusはさすがに現代のレンズだけあって、それらのフリンジの発生が極力抑えられているかに見えます。
しかしながら、Milvusにも弱点があり、アウトフォーカスの部分に青いフリンジがかなりの確率で発生するということです。これはソフトで消すのもなかなか難しく、いつも悩んでしまいます汗 なお、製造元のコシナさんに問い合わせましたが、仕様とのこと汗
ちなみに、f2.8まで絞ればほとんど発生が抑えられ、また、あったとしても、ソフトでの修正が非常に容易なレベルにまでなります。ヤシコンPlanarの最大かつ耐え難い弱点として、絞り開放において、ソフトで修正が不可能なほどのフリンジの発生なので、フリンジが気になる方はf2.8ぐらいまで絞ってもいいんじゃないでしょうか。
(5)ボケ味
どれもいいんじゃないでしょうか。大口径レンズであり、自分的には十分ボケてくれて、しかもどのレンズも際立った癖はないです。ZeissのPlanar 85mm f1.4の伝説的評判を裏付けるだけの綺麗さはあると思います(詳細は5のポートレート作例をご覧ください)。
ちなみに、HFTとヤシコン(AEG)は絞り羽の形状により、点光源がユニークな形になります。有名な三角ボケ(HFT)と手裏剣ボケ(ヤシコンAEG)というやつですね。まあ、これは好みの問題でしょうね汗
(6)フレアやゴースト
ゴーストについては、HFTとヤシコン(AEG)は内面反射防止処置の甘さもあって、よく出ます。内面反射によるゴーストは、HFTは紫の光と虹が、ヤシコン(AEG)は水色の光と虹が立ち上ってくる感じです。
直射日光を受けた際のゴーストについては、両方とも、上方から放射線状に虹が降り注いでくる感じになります。HFTは加えて、虹の輪っかも出ます。一方で、ヤシコンは白いモヤがベールのようにかかるのが綺麗ですね。
ちなみに絞っていくと、それらの光が線状に収束していき、そちらも大変綺麗です。
なお、この項目では、ヤシコンについて、あえて前期型のAEGと明記していますが、後期型のMMG/MMJでは内面反射防止対策が改善され、ゴースト・フレアの出方も異なると言われているためです。いつかはMMJモデルも試してみたいですね汗
一方で、コシナやMilvusに派手なゴーストは期待しない方がいいと思います。ただ、夕暮れ時の逆光のMilvusの出す柔らかなフレアは大変美しいです。解像感を損なわず、柔らかに被写体を照らしてくれます。
Kistarはまあ普通。ゴーストは出ますが、綺麗ではあるものの格別ユニークなものではないので、それだけのために買うものではないでしょう汗 以下に掲載する作例やこちらのレポートを参考に、各自でご判断いただければ。
Kistarの作例
Milvusの作例
(7)マニュアル・フォーカスのしやすさ
i. 視認性(ピントの山の見易さ)
やはりコントラストに優れた現代レンズの方がマニュアル・フォーカス(MF)はやりやすいです。
一方で、不思議なことに、ヤシコンPlanarよりHFTの方がピント面が立っていたような気がしました。ヤシコンの方がコントラストは良好なんですが…
Milvus>コシナ>Kistar>HFT>ヤシコン
ii. ピントリングの感触等
滑らかかつ官能的なピントリングがあるからこそMFは楽しいし、MF全盛期のオールドレンズの素晴らしさはそこにもあると思います。
古いレンズもあるので個体差もあると思いますが、自分の感想は以下の通りです。
HFT(ゴム環モデル) 自分の持っている個体は最高に素晴らしい。滑らかかつ適度な抵抗がある感じ。なお、自分は持っていないのですが、前期の金属環モデルはどうなんでしょうね。
ヤシコン(AEG) 素晴らしいのですが、自分の個体は若干ピントリングが軽いかも。他の個体のことは分かりませんが。
コシナ トルク感は素晴らしいんですが、ピントリングが細過ぎです。
Milvus 文句はないのですが、官能性に欠けると思います。あと、ピントリングの回転角が広過ぎて、回せど回せど被写体にたどり着かないことがあります。もちろん、その分だけ精緻なピント合わせが可能ですが。
Kistar 良い!ヤシコンっぽい感じであり、(個人的には少し軽いのですが)適度なトルク感があり、また、ピントリングも十分に広い。
HFT>Kistar>コシナ≒ヤシコン>Milvus
(全部OKなのですが、ランクを付けると)
3 結論:ポートレートでの使い心地
どれも素晴らしいレンズだと思いますが、自分は透明感を出していきたいので、Milvusを少し絞って使うことが多いです。HFTもこれからどんどん使っていきたいです。
一方で、暖色系の描写でコントラストも高いコシナPlanarは、光や明暗を綺麗に描きたい時に使っています。ただ、たまにコントラストが高過ぎて、被写体が劇画調に描かれてしまうのが、玉に瑕。
ヤシコンPlanarは柔らかい描写と絞った時の切れ味のある表現とのギャップが特徴ですね。被写体を柔らかく、優しく描きたい時に、f2に絞って撮影しています。あと、輝度差の高いところは、どうしようもないフリンジが発生するので、そういう時は使わないようにしています汗
Kistarは悩ましいです。ハマると人肌を陶磁器のようにとても艶かしく描いてくれますが、このラインナップだと持ち出す隙があまりなく。
ということで、現時点では、MilvusとHFTが個人的なお気に入りです。皆様も是非ともお気に入りのPlanarを探してみてください!
4 補論(おまけ)
(1)こんなにPlanarを集めてしまった経緯
もともとオールドレンズを集め始める前から、ヤシコンPlanar 85mmf1.4の評判は雑誌等で知っていて、ミラーレスカメラを買ったらすぐに購入しようと思っていました。単純にCarl zeissというブランドと明るいレンズへの憧れがあり、しかもそれなりに手頃な値段で手に入ったからです。後期モデルであるMMJではなく、前期モデルのAEGとしたのは、ドイツ製への憧れとより派手にフレア等が出るとされていたからでした。
その次に、コシナPlanarを購入しました。猫ポトレで有名な写真家のあおいとりさんの作例(既に削除されてしまいましたが)がとても素敵だったのと、ヤシコンのフリンジが耐え難かったからです。購入してみると、ヤシコンより格段にコントラストが増し、ピント面も鋭くなっていたことに驚きました。フリンジはまだそれなりには出ましたが…
一方で、コシナはヤシコンをオマージュ・復刻したものに過ぎず、現代の技術等で発展させたらどうなるのかの関心が高まりました。また、コシナでも解消されないフリンジにも少し嫌気がさしていました。そうこうしてMilvusを購入してみたら、コシナよりむしろあっさり目でかつ寒色系ということで、自分の好みにぴったりで、今もなお愛用しています。ただ、青色フリンジは耐え難いのですが。製造元のコシナさんにも問い合わせましたが、仕様とのこと。なので、今はf2に少し絞って使っています。
HFTについては、元々50mm f1.4と135mm f2.8を持っていて、その描写を大変気に入っていたので、85mmでも同じ描写が欲しくて購入しましたところ、これも大当たりでした!
Kistarは、オールドレンズで有名な澤村さん一押しのレンズでしたし、クラシックなPlanar 85mm f1.4のレンズ構成で、Zeissが関与しない形で作ったらどうなるか関心がありましたので。特に、コシナとの復刻対決なんて、面白いかな、と。あまり持ち出せていないのが、心苦しいですが。
(2)持っていないレンズ
他にもPlanar 85mm f1.4を冠するレンズはまだまだあります。ご関心があれば、是非とも入手いただき、レポートしていただけましたら幸いです!個人的には、ヤシコンPlanar MMJぐらいは欲しいなぁ、と思っているのですが。
Contarex Planar 85mm f1.4
HFT Planar 85mm f1.4(前期の金属環モデル)※
Planar T* 85mm f1.4 (MMG/ MMJ)
Planar T* 85mm f1.2
N Planar 85mm f1.4
Planar T* 85mm f1.4 (SAL85F14Z)
Otus Apo-Planar 85mm f1.4
※(以下の4(5)で比較)中古屋さんで、HFTの前期の金属環モデルと後期のゴム環モデルとの比較をさせていただいたのですが、描写傾向が結構違っていました。前期の金属環モデルの方が、少し色が緑がかっており、また、ピントもやや甘いように感じました。まあ、個体差・経年劣化かもしれませんが。
(3)MTF比較
最後に、以下の参考サイトや各社の公式サイトからMTF図を拾ってきて、当方が勝手に縮尺を合わせて、以下の通り比較してみました。
だからなんだ、というわけではないのですが、Milvusは基本的には描写能力は高いもの、他のレンズと比較して、周辺画質だけは著しく悪化しているのが興味深いですね。Otusも同じ感じですね、なんででしょうか。
参考資料
Zeiss公式のこれまで発売したレンズのMTF等のスペックリスト
(ただし、ContarexやRollei QBMマウント等のレンズは掲載されていません)
OtusやMilvus等の現行のレンズリスト(コシナのサイト)
木下光学研究所(Kistar 85mm)
(4)レンズ構成比較
上記参考資料やLens database等を基に、レンズ構成図一覧も以下の通り作成しました。赤字・太字が2022年5月時点で当方が所有しているものとなります。
ヤシコンの復刻版であるコシナであっても、オリジナルと比べると、少々レンズの形や位置等の修正が行われていることが分かります。
一方で、1973-1975年の間というほぼ同時期に発売されたHFT・Contarex・ヤシコンについては、公式のレンズ構成図がヤシコンしか見つけられなかったことから(HFT・ContarexはLens databaseに掲載のものを引用)、この間にどのような修正等あったのか、それともなかったのかは分かりませんでした。
そもそもヤシコンであっても、1975年発売のAEGから1980年代中盤のMMG/MMJへの変更までに約10年が経過していることから、その間に何らか修正がなされていたかもしれません(少なくとも内面反射対策や絞り羽等の改善がなされていることから、レンズ関係にだけは手が加えられなかったと断言するのは困難でしょう)。
また、Planar 85mm f1.4の発展系のレンズを見ていると、前後にレンズの追加等はなされていますが、コアな形はクラシックなものから変わらないことが分かりますね。もちろん、レンズの形・屈曲率やレンズ間の距離は明らかに違いますし、また、硝材やコーティング等は異なるのでしょうが。
なお、Kistarのレンズ構成図は発見できませんでした。
(5)更におまけ(HFT比較)
HFTの西ドイツ・Carl Zeissモデルは、前期の金属環型と後期のゴム環型に分けられると書きましたが、描写に違いはあるのでしょうか。
自分がHFTを購入する際に中古屋さんで前期・後期型の比較をさせていただきましたところ、後期型と比較すると、前期型は暖色系かつピント面にもパープルフリンジが出ていることが確認できました。ただ、これがモデルによる違いなのか、個体差や経年劣化なのかは分かりません(約50年前のレンズですしね)。
以下は1枚だけですが、作例となります。
<撮影条件>
カメラ Nikon Z7
ISO感度 400
絞りとシャッタースピード f1.4, 1/160
ピクチャースタイル 「フラット」で撮影し、Lightroomで「標準」に変換
ホワイトバランス(Lightroom上の数値) 両方とも色温度5250K、色被り補正+47に補正
露出(Lightroom上の数値) 両方とも「露光量」を-0.50に補正
その他数値はいじっていません。
5 参考(ポートレート作例等)
(1)HFT Planar
(2)ヤシコンPlanar
(3)コシナPlanar
(4)Milvus
(5)Kistar
ここまで長文をお読みいただき、また、貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。本記事が、お読みいただいた方の充実したカメラライフ・撮影生活等の一助となれましたら、幸いです。
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