学習の動機付けのあり方

英語教師として、生徒をいかに動機付けるかは大きな責務の一つです。今回は、動機付けについてあることをきっかけに考えさせれられたことについてまとめてみます。

Intrinsic motivation & extrinsic motivation 

私は動機付けの研究に専門的に詳しいわけではないがありませんが、SLAや教育学において、一般的には動機付けはintrinsic motivation(内発的動機付け)とextrinsic motivation(外発的動機付け)に分類されると理解しています。Intrinsic motivationは知的好奇心や達成感などの、学習者の内部から湧き起る動機付けを指す一方、extrinsic motivationは報酬や成績、道具的価値などといった外的な要因から起こる動機付けを指すとされます。

一般には、extrinsic motivatonばかりに頼って学習を進めていると、報酬が得られなくなった場合などにモチベーションが低下してしまう可能性があるため、学習者の主体的な行動につながりやすいintrinsic motivationを大切にして学習を継続させることが望ましいとされていると思います。

私もこれまで、生徒たちがなるべくintrinsic motivationをもって学習を進められるよう、英語学習の楽しさを実感させたり達成感を持たせたりすることを意識してきました。そして、いつからか気付かぬうちに、「intrinsic motivation = 善、extrinsic motivation = 悪」という考えに陥っていたかもしれません。
純粋に(英語)学習を楽しんでいる生徒を見れば「この子は大丈夫。伸びる」と安心し、逆にテストの点数や親からの報酬ばかりを気にして勉強している生徒には「こいつ大丈夫か?」という目を向けていたと思います。

Intrinsic motivationを失った生徒

ところが先日、私の考えを揺るがす出来事に出会いました。高いモチベーションを持って学習していた生徒が、はたと手を止めてしまったのです。その生徒は、勉強を楽しいからやっているタイプの生徒で、テストの点数や成績にはあまり興味が無く、純粋に好きで勉強に励んでいる生徒でした。Intrinsic motivation > extrinsic motivationという考えが仮に正しければ、この生徒の学習意欲は失われることはないはずでした。

詳しくは書きませんが、この生徒に話を聞いたところ、簡単に言えば勉強以上に楽しいと思えるものに出会った、勉強よりも大切にしたいと思っていることがある、ということでした。

考えてみれば、このことは当たり前に起こりうるシナリオです。楽しさを求めて学習に向き合っていた場合、その楽しさを上回る何かが現れたとき、学習の優先順位は下がるのは自明のことです。つまり、一般にintrinsic motivationの方が学習の継続につながると言われていますが、それは一概に言えるものとは限らないのです。Intrinsic motivationによって支えられた学習態度は、場合によっては脆いものになり得るということです。

複数の動機付けを

今回のことから学べるのは、学習への動機付けの源は複数あるべきだということです。どんなに強固なものに見えても、またそれが端から見てどんなに望ましいものであったとしても、モチベーションの源が一つしかなければ、その動機付けに変化があった場合に学習を継続させることが困難になりかねません。学習に対して複数の動機付けを持っておくことで、日々の中で色々なことがあっても学習への意識を絶やさずに継続できる可能性が高まります。したがって教師は様々な角度から多面的に学習者の動機付けを支援してやる必要があるでしょう。

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