中高英語でのAI添削をどう考えるか

このところのAI技術の進歩は凄まじいものがあります。

2023年1月現在、DeepLの翻訳はかなりの精度を見せていますし、GrammarlyのようなAI校正・添削サービスは多くの人が利用するようになりました。また2022年11月公開されたChatGPTについては様々な使い方がSNS上で共有されています。

こうしたAI技術が進化・普及を続けるにあたって、中等教育の現場でも、これらをどのように使っていくかを考えなければなりません。

もちろん、私も含め中高の教員の多くは、「自分の力で書かせたい」「生徒をAIに頼らせたくない」「提出された英文が自力で書いたものかAIで書いたものかわからなくなる」といったことから、はじめはこうしたAI技術を日常の英作文授業に取り入れることに抵抗感を示すことでしょう。

しかし、本当にそれでいいのでしょうか。生徒は遅かれ早かれAI校正の存在に気付き、使い始めます。中途半端に禁止して陰でコソコソ使われるくらいならば、オープンに使わせて、それを学びの一環に取り入れた方が有意義なものになるのではないでしょうか。

(少なくとも現時点では)AI校正添削は万能ではないことは明らかですし、ChatGPTの作り出す英文もところどころ「巧妙に」不確かな情報や誤りが含まれていることがあると指摘されています。まさに「正しいか正しくないかを見抜ける人でないとAIを使うのは難しい」ということになります。AIを英作文で使うには一定の英語力と批判的思考力が必要です。

現状、SNSで見ている限り、英語を母語としない研究者の多くは何らかの形でAI校正を使っているようです。これは、現在の中高生も将来的にはAIを使って英文を作成するようになるということを意味します。

であるならば、将来的に使いこなせるようにならなければいけないものを、「禁止」してしまうことは、生徒の学びにとって有益なのでしょうか。

AI添削を禁止してしまうことは、学習においてWeb検索を禁止すること、辞書使用を禁止することと同様とも思えます。

辞書指導ができなければ英語教師としての役割を全うできていないのと同じで、今後は英文作成におけるAI技術の使い方を指導できなければ、英語教師として不十分という日が、もうすぐそこまで来ているのではないでしょうか。

AI添削を生徒に使わせて、どのように使っているかをモニターする。AI添削されたポイントを、生徒自身が理解したうえで訂正できているのかをモニターする。AI添削により、学習者自身が本当に言いたかったことが捻じ曲げられるようなことになっていないかをモニターする。そして何より、AIが不得手な、内容面や論理構成、文と文のつながりなどの側面に焦点を当てたフィードバックを教師自身が行う。こうした役割が英語教師に求められるのではないでしょうか。

「AIの使い方の指導は大学のような高等教育で行えばよい」
「中等教育では基礎基本をおさえればよい。AIはまだ早い」
こうした議論はあって然るべきと思います。それでも、高校生ならばどの道なんらかの形でAIを使うようになるでしょう。教師に隠れて使わせるよりは、オープンに使わせながら、注意点や正しい使い方を日頃から指導できたほうがいいのではないでしょうか。

こう書いている私自身、迷いがないわけではありません。そもそも私の勤務校は、ICTが進んでいるとは口が裂けても言えないような学校であり、一人一台端末の環境は整っておらず、学校内でのスマホ使用は原則禁止というような、ある意味普通の(というか後進的な)学校です。もちろん英作文エッセイは手書きで提出です。

こういう状況の本校における目の前の生徒(高校生)を考えたときに、翻訳や校正、英文生成などのAIツールを紹介してしまうデメリットは存分に想像できます。課題に追われた生徒が、翻訳ツールで作った英作文を提出してくる様はありありと想像できます。普通に考えたら、「使い方が難しい」「君たちにはまだ早い」「まずはAIに頼らない基礎力を」などと様々に理由を付けて「禁止」するのが安全策だと(これを書きながらも)確信しています。

でも、それでいいのでしょうか。生徒の自立学習を促す視点から考えたとき、「禁止」が正しい道でしょうか。

最終的な理想は、教師がいなくても学習できる学習者を育てることではないでしょうか。

生徒の将来の英語使用を考えたときに、どんなスキルが身についていればいいでしょうか。

迷いながらも、考え続けていきたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?