英語教師の知らない、国語科の「書くこと」(ヨンギノー英語教師が国語教育を学んでみた⑪)

先日の国語科教育法は「書くこと」の指導がテーマでした。中高国語科では「書くこと」の指導はどのように行われているのか、何か英語教育に生かせることはないか、英語科との接続を考えられないか、など、国語科の「書くこと」の指導を学ぶのはたいへん楽しみにしていました。

「書くこと」の指導を考える

今回の授業では、批評文の書き方を指導するというテーマでした。大学の課題でレポート作成をすることも多いと思いますが、批評文もレポートのようなものです。レポート作成に必要な書く力を、中高時代にどのように学んでいけばいいのか。そんなテーマで授業が進みました。

批評文を書く授業を組み立てるにあたって、サンプルとして示された中3の教科書では、まず批評する作品を選び、どのような角度から批評をするのか、その観点を決め、構成を考えさせる、といった流れのようです。これを例として、どのような指導を行うか、どのような課題指示や授業展開をするか、グループで話し合い、それらを全体共有しました。

いつになったら「書くこと」の話題に・・・?

最終的にはこの日の授業によって、たいへん有意義な気付きを得られましたので、この授業や国語科教育のあり方を批判しようというわけではありませんが、正直に言って、この日の授業中、私はずっとモヤモヤしていました。なぜかというと、私(英語教師)から見て、この日の国語科教育法では、いつになっても「書くこと」の指導に話題が及ばなかったからです。

学生たちだけで進んでいくグループでの議論だけならまだしも、教員のファシリテーションで進む全体共有の場や、その後の先生の補足説明までも、この日の話はほとんどが「どんな観点で批評するか」に終始しました。歌詞の批評には時代背景の観点を、とか、広告の批評として色彩の観点を、とか、映像作品の批評に身体表現の観点を、のように、どんな観点を持てば批評が成立するか、のような話題が続きました

一方、英語教師の私が思い浮かべる「書くこと」の指導というのは、自分の論にどのように説得力を持たせるか、そのために必要な根拠の示し方であったり、抽象を支える具体のかませ方だったり、文章構成のしかたであったり、こうしたライティング指導を思い浮かべていました。ですので、授業中ずっと私は、これは「書くこと」の指導ではなく、「批評のしかた」の指導でしかない、とモヤモヤしていたのです。

母語で書けないものは英語で書けない

さて、このモヤモヤの背景には、英語教師として抱いてきた「書けない生徒」に対する思いがあると自己分析しています。

英語のエッセイを書かせていると、根拠が示せなかったり、論理が破綻していたりと、「書けない生徒」を見ることになります。彼らが書けないのが、英語で書いているがゆえであればそれは英語科の指導事項ですが、彼らに書きたい内容を日本語で説明させても、どうしても論理が通っていない。そうするとこれは、英語ではなくそもそも母語でも「書けない」ということになります。母語で書けないものは、英語では書けません。

こうした生徒をたくさん見ていく中で、「まずは日本語でちゃんと書けるように指導してよ」という、国語科に対する不満のようなものを抱くようになってきました(もちろん国語科だけの責任ではないのですが)。そして、中身を知らないまま外野から「ちゃんとやってよ」と不満を抱くだけではいけない、自分の目で中身を知りたい、という思いから、国語科教育の世界をのぞき見てみようと思い立った、というのはこれまでの投稿で書いてきた通りです。

違いを知ること

さて、この日の「書くこと」を扱った国語科教育法の授業では、英語教師の私が思い描いていた「書くこと」の指導は見られませんでした。それを持ってして「ちゃんとやってよ」の不満を増大させるのは簡単かもしれません。

幸いなことに、今回私が最終的に行き着いたのは、不満ではなく気付きでした。授業後に、先生に疑問をぶつけて意見交換をする中で、自分の中で新たなことに気付くことができました。長くなるので詳しくはまたの投稿にしようと思いますが、見ているところ、担おうとしているところが異なるのだと理解することができました。また、国語科がその部分を担ってくれているからこそ、英語科の指導が成り立っているとも言えるかもしれません。

もちろん、今回の「国語科教育法」の授業で取り上げられたのは、「書くこと」の指導の一側面にしか過ぎないでしょう。しかし、「書くこと」をテーマに取り上げた授業で扱ったのが(あくまで私の目から見て)「書き方の指導」というよりは「批評の仕方」であったというのは、ある意味で国語科における空気感を表しているのかなとも思います。国語科教育全体として「書くこと」がどのように教えられているのか、もう少し観察してみたいところです。

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