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楽器練習日記 1:チャップマンスティックを弾きたい!

 こんにちは、霧生堂です。
 前回noteに投稿したのが2023年3月だったので、10か月ぶりの投稿になります。
 なぜこんなに間が空いてしまったのかというと、アイディアがまったく浮かばなかったからです。
 以来ほぼほぼ無為に時間を過ごしていたのですが、現在私はチャップマンスティックという楽器とベースを弾いています。

 チャップマンスティックchapmanstick(以下スティックと略)とは太いネックにピックアップを取り付けた、卒塔婆のような外見の楽器です。
 通常のスティックはメロディ弦5本、ベース弦5本の計10本の弦を張りますが、私の持っているスティックはグランドスティックといい、メロディ弦6本、ベース弦6本の計12本を張ります。

グランドスティック


向かって右がメロディ部、左がベース部

 そしてこのスティックは指やピックで弦を弾くことで音を出すギターやベースとは違い、指で弦を叩くこと(タッピング)によって音を出します。
 その意味でスティックはギターなどの撥弦楽器とピアノなどの打弦楽器の中間に位置していると言えます。

 私がスティックを買ったのは今から××年前、まだ学生のときのことでした。
 当時私はハードロックやヘヴィメタルを中心に聴いていたのですが、よりノイジーでよりインダストリアルでより緻密な音楽はないかと色々と手を伸ばしていました。そんな時に出会ったのがキングクリムゾンの『VROOOM』でした。それはまさに自分が聴きたいものそのものでした。

『VROOOM』は90年代クリムゾンの嚆矢となる1枚で、そこにはロックでありつつもHR/HMともパンクとも違う荒々しさを持ち、高度な演奏技術に裏打ちされた音楽が展開されていました。

 私はすっかりその音楽に魅了されてしまいました。そしてそこで初めてスティックという楽器を知ったのです。

 90年代クリムゾンはダブルトリオ編成という特異なバンド編成になっており、2人のギターに2人のドラム、そしてトニー・レヴィンとトレイ・ガンという2人のスティック奏者がいました。(トニー・レヴィンはベースと兼任、トレイ・ガンはのちにスティックと同じタッピング楽器であるウォーギターwarrguitarに移行)

 この異様な楽器に心惹かれた私は、ベースを少し触ったことがあるくらいにもかかわらず手に入れたくて仕方がなくなったのです。

 そして色々と探しまわってようやく購入したのですが、実際に弾いていた時間は短いものでした。理由は簡単で、「自分の手に負えるものではなかった」につきます。
 どこから手をつけたらいいのか見当もつかないままちょろっと音を出してみたくらいでスティックはスタンドに立てかけられたまま部屋のオブジェと化し、それも邪魔になってハードケースにしまわれて部屋の片隅に放置されることになったのです。

 それから幾星霜、その存在をほとんど忘れていたのですが、唐突にもう一度弾いてみようと思うようになりました。
 なぜかというと、近年たびたびスティックを弾いたり楽器屋でスティックを探す夢を見るようになったからです。そこで自分はまだスティックへの未練が残っているんだなと思い、改めてスティックを弾いてみることにしたのです。これが今年の8月のことです。

 そこでハードケースを開けて驚きました。スティックはベルトフックとショルダーストラップで装着するのですが、そのショルダーストラップがどこにもないのです。そんなものを外す理由がどこにもないにもかかわらずです。

 

ベルトフック


ショルダーストラップ

 とにかくそれがないと始まりません。日本で輸入代理店をしているところに問い合わせると幸い販売していたので、専用弦とともに購入することにしました。
 また、住宅事情から我が家では大きな音は出せないので、ミキサーとヘッドホンも別途購入しました。

 そうしてもろもろが届き、さっそく弦を張ることにしたのですが、これがまた大仕事でした。なにせ弦を張るのは××年ぶりでまったく慣れず、ペグに弦を巻きつけようとしてもつるつる滑って抜けてしまうのです。

 かなりイラつきつつ弦を張り終わってチューニングする段になり、イライラはマックスになりました。

 チューナーを買いに行って驚いたのですが、現在のチューナーってクリップ式が主流なんですね。そもそもそんなものが出ていることすら知らず隔世の感が半端なかったのですが、店員に言われるままに買ってきました。

 ところがチューナーとスティックの相性が悪いのか、うまく反応してくれません。それでもなんとかチューニングを終えると気力を使い果たしてしまい、その日はそれで終了となりました。(チューナーの名誉のために言うと、後日ベースで試してみたところちゃんと反応しました)

 その後ミキサーも届き、ワクワクしながらケーブルを刺してみたのですが、ここで最大の問題が起こりました。音が出ないのです。

 スティックが悪いのかケーブルが悪いのか、はたまたミキサーが悪いのか。
 チューナーがクリップ式だったためスティックに問題があってもチューニングできてしまったため、それまで気がつかなかったのです。
 そしてスティックは専用のY字ケーブルを使うのですが(スティックはメロディ部とベース部でステレオ出力するので)、そのケーブルを1本しか持っておらず、ケーブルを入れ替えて試してみることもできません。他に楽器もないため、ミキサーに問題があるのかもわかりません。

 ろくに弾いていないのに故障してしまうなどということだろうか、しかし××年も放置していたのだから経年劣化してしまうことも十分考えられる――悶々としながらどこなら修理してくれるだろうかと考えました。

 輸入代理店はどうだろうか。しかしそこはあくまで販売の代理で修理までしてくれるかはわかりません。もっと近いところで修理をしてくれるところはないでしょうか。

 検索してみると、中古のスティックを販売していたこともある楽器屋が楽器修理も行っていることがわかりました。一縷の望みをかけて問合せてみると、修理をしてくれるとのことでした。
 そこで私は重いハードケースを抱えてその楽器屋へと向かったのです。

 スティックを弾こうと思い立ったのが8月中旬、機材がそろったのが8月末、時はすでに9月初旬になっていました。

 店員に症状を説明し、修理を任せるか決める段になって店員にこう言われました。

「修理が終わるまで3か月かかります」

 3か月! 修理が終わるころには12月になっています。

 私も修理が即日終わるとは思ってはおらず、しばらくスティックを店に預けることになるとは思っていたのですが、さすがに3か月とは予想していませんでした。

 店員によると修理の予約が詰まっており、それだけ時間がかかってしまうとのことでした。

 私の受けた衝撃が顔にも出ていたらしく、担当してくれた店員がリペアマンと相談し、2か月まで期間を縮めてくれることになりました。今からほかの楽器屋に当たるのも手間がかかります。私はその楽器屋にスティックを預けることにしました。

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