全部なかったことにスイッチ
時々、全部なかったことにスイッチを押したくなる。自分という存在を、なかったことにできるスイッチ。
生まれてこなければ、こんなに悲しい思いをしなくてよかったのに。
生まれてこなければ、こんなに苦しい思いをしなくてよかったのに。
生まれてこなければ、こんな底なしの不安や絶望、知らなくて済んだのに。
このスイッチの良いところは、実際には存在しないところだ。もし手元に存在していたらとっくに押してしまっていたと思う。
生きたくても生きられない人もいるんだからそんな風に考えてはダメだと言われてしまうかもしれない。自分自身がそうだったり、身近にそういう人がいたらわたしもそう言いたくなると思う。でも本当にそうなのかな。
「わたしの絶望はわたしのもんだ」
わたしは誰でもどんな状況でも、絶望してもいいと思っている。誰にも他人の感情を制限する権利はない。
それがプラスの感情でもマイナスの感情でも。
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行きたくなかったが行くと決めた場所に行ったことがある。その空間に存在していることが悲しくてつらくて許せなくて、でも自分で決めたことだからとベストを尽くした。
用事を済ませたわたしを乗せて、車は夜の山を走っていた。わたしは後ろの席に黙ってうずくまっていた。窓の外では大きな木々が順番にライトに照らされていたのを覚えている。
落ち込んでいるっぽいわたしにイライラして、その人は言った。「そんな気持ちにならなければいいじゃないか」と。
びっくりした。感情の発生って自分でコントロールできるものなのか。
……できねえよ。少なくともわたしには。
できてたらとっくにしてるわ!(笑)
そして思った。
「わたしの感情はわたしのもんだ。だからわたしが抱きしめる」
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マイナスの感情は、時とともに薄れるものだと思う。鮮度が失われてだんだん心に刺さらなくなっていく。
まるで、会わなくなった人の輪郭がぼやけるように。
ただし、これはある条件をクリアした場合に限られる。
それは、しっかり味わい尽くして、その感情を抱く状況を抜け出すこと。
だからハッピーな自分はもちろんのこと、ダサいほど浮かれちゃったり、なかったことにスイッチを押したくなっちゃったりする自分まで、抱きしめて生きていきたい。酸いも甘いも味わい尽くしてやる。
そしてどんどん周りを楽しくするのだ。
だいすきな人たちと泣いたり笑ったりしながら
ハッピーエンドのその日まで。
最後まで読んで下さっただけで、充分嬉しいです。 ありがとうございます♡