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好きなものを思い出せなくなって

SNSで彫刻の紹介をする投稿を見た。
美術はいいものだ。
そうだなぁ、彫刻家で言えば、自分はアルベルト・ジャコメッティが好きだ。あとは、、あとは、、、、

思い出せない。

昨日のお昼ごはんの話ではない。
自分が好きな彫刻家を思い出せないのである。
あの、しかめっつらのやつ。
見ている人が無意識に口に力が入ってしまうやつ。

好きなものを思い出せないことは悲しい。
「忘れる程度のものなんだから大して好きじゃないんだろう」
と言われるかも知れないが、そんなことはない。

あの手この手を使って思い出すことはできた。
怖くなって必死に思い出した、といった方が厳密だろう。

僕は何が怖かったのだろうか。
彫刻家の名前を思い出せなくたって、作品名を思い出せなくたっていい。
あの日の残響は今でもまだある。
何が怖いのか。
名前を忘れて、索引できないことの何が怖いのか。
思い出した彫刻家の名前で検索をかけて、あの日見た作品の写真を見たところで、あの日の気持ちの焼き増しにもならない。

旅をしていてもそうだ。
外国の地に立ち、確かに五感ですべてを感じているのに、何が怖くてカメラで写真を撮ってしまうのか。
何が怖くて、燃やされる前のゴミ溜まりの写真を撮ってしまうのか。


頂いたお金は美味しいカクテルに使います。美味しいカクテルを飲んで、また言葉を書きます。