一度きりの数日間のためのワードローブ作り

旅先で洋服を褒められることは、とても嬉しい。それが現地のマダムからの言葉であっても、SNSを通してのコメントであっても。

「紀至子さんのお洋服、とても可愛いけれど、どんな風に選んで持って来るんですか?」今回一緒にハワイを訪れた方にそんな問いかけをして頂き、思わず頬を染めながらも、自分のスーツケースの中身について考える好機となった。
そしてそれは、旅という数日間の為のワードローブ作りにおける、自分なりのノウハウがいつの間にやら完成しつつあるらしい、という気付きでもあった。

私が旅先の服を選別する時にまず最初にするのは、ざっとワードローブのアウトラインを作成すること。滞在日数よりも、幾らか多めに。

昔は滞在日数に合わせて、この日はこれ、この日はこのコーディネートを…と、考えていたけれど、現地でスムースに支度をするべくアイテムを決め打ちすることが、逆に自由度を狭めるという憂鬱が過去に幾度かあった。

そんなタイミングで最高にお洒落な先輩がこう言ったのだ。
「そんなことして、その日がその格好の気分じゃなかったらどうするつもり?」
以来、私の滞在日数に合わせたコーディネート作戦はすっかり無かったことになった。

今現在、私にとってそれよりずっと活きている工夫は、プレーンだけれど形が綺麗なアイテムを多めに持って行くこと。
重さは気にせず歩きやすい靴とお気に入りのハイヒールを最低一足ずつ、出来れば合わせやすい靴をもう一足、用意しておくこと。
そしてチャックや蓋がついた鞄に加えて、小ぶりなハンドバッグを最低一つ、更に失くしてしまうと立ち直れないものを除いて出来るだけ多めのアクセサリーを持って行くと凄く良い。

トップスならヘインズのシンプルなTシャツやクルーネックのセーター、ボトムスなら脚が真っ直ぐに見えるパンツやサーキュラースカート。プレーンなアイテムというのは大抵嵩張らないし、アイテム同士の相性も良い。しかも靴やアクセサリーとの組み合わせ次第で自由に遊べるから「気分じゃない」に、陥りにくい。

もう一つ、プレーンで形が綺麗なアイテムの良いところは、旅の翳りをカバーしてくれること。旅先に着いて1〜2日の間はどうしても疲れが出てしまいがちで、実際過剰に非日常を意識したスタイルが妙にちぐはぐに感じ、居心地の悪さを感じてしまった経験をしたこともある。それを助けてくれたのが、真っ白なコットンや、艶のあるネイビーといった清潔感のあるアイテム群だった。
到着して現地の空気に慣れるまでの間は、きちんと結んだポニーテールやシニヨンヘア。気を張らずとも微かに背筋が伸びる質の良いベーシック、もしも物足りなければ袖や襟元といったディティールに潜ませた遊び心。そんなスタイルが想像以上に重宝してくれる。

そしてその土地に慣れ、すっかり愉しめるようになったなら、旅先で着たいと思っていた洋服を遠慮なく、好きなだけ。鮮やかな色柄のスカートに、カットが美しいワンピース。日常よりも「ほんの少し」のドラマティックを加えるだけで、充分にコントラストが際立つことこそが、旅の魔法なのかもしれない。

自分をクリーンに見せてくれるスタンダードと、ほんの少しのドラマティック。
どうやら私の場合、旅先でのワードローブは概ねそれで構成されている。

「あの時のあの旅はどんな風で、どんなことがあった」
そう振り返るのは、愉しい。だけど、折角なら、どんな格好をしていたかということまで覚えていられたなら、きっともっと愉しい。

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前田紀至子

乙女的客旅手引

乙女視点のトラベルガイド
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コメント1件

表紙の写真?!女性用水着?下着?とエロオヤジには惑わされる物を感じる?!としょうも無い事をコメントします?!?
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