幸運のからくり

私は自分のことを稀代のラッキー人間だと思っている。でも、もしも私じゃない誰かがこの人生を歩んでいたら、どうだろうか?ろくでもない不幸な人生だと日々うんざりしながら生きているのかもしれない。それくらい、捉え方というのは人によって異なるようなのである。

数年前にハワイへ行った時のこと。私は旅先でも大抵iTunesで自分好みの曲を流して過ごすのだけれど、ステイ先だったロイヤルハワイアンにチェックインして部屋に入ると、そこに在ったのはiPod用のスピーカーでは無く、CDプレイヤーだった。しかしながら私は、その旅に一枚もCDを持参していなかった。

暫く経って無音で過ごすことを持て余した私は、慌てて音楽に詳しい友人にメールで助けを求めた。「ハワイのCDショップでも買える、気の利いたCDを教えて」と。

すると、返ってきた答えはこうだった。

「波の音や風の音、街の音を愉しんでごらん」

その言葉を目にした瞬間の空気を私は鮮明に覚えている。私が身を置くその場所が、音の無い密室から音の溢れる空間へと、一瞬にして様変わりしたのだ。

乾いた木枠の窓を開ければ風がそよぎ、遠くでは波の音が響く。中庭のプールからは子供達のはしゃぎ声が聞こえる。街に出ると、ローカルの人たちは皆機嫌よく鼻歌を歌っている。アスファルトは、日本のそれと比べると随分でこぼこで、スケートボードがコミカルな音を立てて滑る。ラジオDJは父と母が若い時分に聴いていたラブソングを選曲している。そんな素晴らしい音がごちゃまぜになって、その旅は今までに無いくらい満たされたものとなった。

今思えば、あの時私はCDを持っておらずラッキーだった。手持ち無沙汰になったことによって、ふと連絡をして、そして素敵なヒントを得た。そしてあれ以降、旅先では旅先ならではの愉しみを探す面白さや、今迄知らなかったような異国の訛りがある音に出逢って感激することも私にとっての御約束となっている。

然しながら、先程の回答だって、人によっては「質問に答えて貰えなかった」と不満に思う場合もあるかもしれないし、ただの妥協案でしか無いとがっかりするかもしれない。

世の中には色々な人がいる。だからこそ、物事というものは受け手の捉え方次第でポジティブにもネガティブにも呆気無く姿を変える。まるで、見方によって二つの絵に見えるトリックアートみたいに。

強運のコツというものを時々尋ねられるけれど、私は、「朝無事に目が覚めることから始まって、やることなすことラッキーだと意識し、歓ぶこと」が幸運のからくりだと思っている。物事をポジティブに捉えて自ら幸運を作り出す強さは、いつかきっと貴方のピンチをも救ってくれる筈。

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多謝
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前田紀至子

乙女的生活手引

乙女視点の生活読本
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