ショッピングバッグを花かごにして

春のスイッチはある日突然オンになる。それはまるでディズニーの白黒映画がみるみる色付いてゆく光景のように。

待ちわびていたはずの冬のセールの赤い値札もすっかり見慣れて、「再値下げ」「再々値下げ」といった言葉をお腹いっぱいだと感じるようになった頃、ふとお店に足を踏み入れたならば、淡く鮮やかな色彩がお店中に広がっている。そうして私たちは冬眠していたクマみたいに目を覚ますのだ。春が来た!と。

右を見ても左を見ても冴え冴えと煌めいて見えて、端から端まで全部素敵に映る。ああ、出来るものならこう言いたい。

「ここからここまで全部ちょうだい!」

或いは気になるものを値札も見ず次々試着して選んでゆけたらどんなに愉しいだろう。気付けばそんな妄想を膨らませてしまっているのも春が近付いている証拠なのかもしれない。

桜にチューリップ、ラナンキュラ、マム。どのピンクも各々異なる美しさ。ミモザみたいな黄色にライラックの紫。マーガレットを思わせる透き通るような白も絶対はずせない。

水色のブラウス。シャーベットオレンジのマキシスカート。ミントグリーンのストール。アップルレッドのワンピース。欲しいものを思い浮かべればきりがない。

ねぇ、折角の春だもの。あっという間に行方をくらましてしまう季節だからこそ、ちょっとばかりフライングをしたって許されるはず。今のうちに花を摘みに行く気分で明るい色のアイテムを手に入れたなら、ショッピングバッグを花かごにして連れ帰ってみてはどうかしら。


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前田紀至子

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