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ベーグルに何を挟むか考えながら眠る

朝起きて一番最初に緊張する瞬間は、ベーグルを半分にカットする時。無意識のうちに息を止めて、きっかり上下半分のところでナイフを回すよう努める。微かに繋がりが残っているのを我慢できず、ねじりを加えて、フライング気味に引き離したらもうこっちのもの。

バターを乗せてからトーストすると、その断面はみるみるうちに黄金色になってゆく。端っこはカリカリで中はふんわりもちもち。これこそが、たこ焼きよろしく粉ものの醍醐味ではなかろうかとさえ思わされるグルテンの魔力。ベーグルの場合、むぎゅっと感も加わるから全方位無敵。そりゃあ夢中にもなって当然かもしれない。ここでのバターは無塩バターが好い。元々に塩味があるから、無塩バターを塗ることで、甘みと塩っ気が程良く際立つ。

さて、ここまでが、朝の作業。

そしてここから先の工程は、実は前夜のうちに出来上がっているも同然なのである。

私は家にベーグルのストックがある時はいつも、明日の朝起きたらベーグルに何を挟もうかと考えながらベッドに潜り込む。まず無くてはならないのがクリームチーズ。更にプロシュットやスモークサーモンといった塩気があるものも良いし、その場合トマトやレタスなど野菜類もプラスするのも好い。否、ベリー類やバナナ、チョコチップ、ナッツなんかでとびきりスイートにするのも捨てがたい。更に仕上げはどうしようか。ブラックペッパーをガリガリ削る?ケッパーを乗せて爽やかに?アカシア蜂蜜の誘惑もなかなか強力だ。もしも万が一寝坊した場合はヌテラだけを塗って食べれば間に合う筈。脳内では食材たちが混沌と駆け巡り、口の中に涎が溢れる。そうして気付けば夢の国に半分足を踏み入れている。

翌朝目を覚まし、もう少しベッドで微睡んでいたい衝動に駆られたら、すぐさま思い出すのは寝る前の想像の世界。ベッドから飛び出たら一目散にキッチンに向かいベーグルを手にする。昨夜の想像を現実のものにするために。

ベーグルに何を挟もうかと想像することはとびきり愉しい、寝る前の遊び。

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