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なりたいのは、何もしていない人

「どうしたらそんな風になれるの?」

その道のプロフェッショナルに秘訣を聞きたくなる時がある。
しかしながら、少し困ったような表情や涼しげな微笑みと共に返ってくるのは、特に何もしていないという言葉ばかり。

本当に、何もしていないなんてことが有り得るのだろうか。完璧な仕事ぶりのあの人も、見惚れるほど美しい彼女も、誰もが認めずにはいられないセンスを持っている彼も。

だけど、どうやら彼らの言葉は、嘘偽りのない真実なのだ。あくまでも彼らにとっては。

仕事に対して一つも隙を作らず端から端まで的確に片付けていく。質の良いクレンジングミルクでじっくりとメイクを落とした後、ゆっくりと湯船に浸かり、お風呂上がりにはスキンケアのフルコースをする。インスピレーションに従って、好奇心と共に閃きを一つずつ形にしていく。そういったことが、彼や彼女にとっては、何一つ無理のない当たり前のことで、息をするように自然なこと。恐らく、「どうやって息をしているの?」と聞かれても困るのと同じように、特に何をしているかなんて思いつかないのだろう。

そうは言っても私がそっと見ている限り、その分野において天才的に見えるような人たちは、決して少しも努力をしていないという訳ではない。寧ろ、普通に考えると気の遠くなるような過程を積み重ねていたりする。だけど凄いのは、そんな努力を少しも苦痛だと思っていないということ。

日々の積み重ね、継続すること、そして興味を失わないこと。そんなことを当たり前に熟し愉しめる人が、「どうしたらそんな風になれるのか」と聞かれるような人なのかもしれない。

何もしていない人に、私もなりたい。

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