1グラム
三連休の土曜日の朝。10時頃だったと思う。彼の様子がおかしいのに気づいた。止まり木の上でよろよろしている。
かごの扉を開けてそっと抱いてみたら、わたしの手にその小さな体の痙攣が伝わってきた。足に力が入っていない。真っ黒なつぶらな目も焦点が合っていない。
行きつけのペットクリニックへ急いで連れて行こうと焦ったけれど、きっともう間に合わないだろうと思った。
彼は、抱いているわたしの手の中で数回羽ばたいて暴れて、急にぐったり弛緩した。
異変に気がついてから五分か十分しか経っていなかった。十五年間も一緒にいてくれた彼は、寸前までいつもと変わらない様子だったのに、たった数分で逝ってしまった。
亡くなる前に測った体重は42グラム。彼としてはベスト体重だ。亡くなったあとに、ぼう然としながら何となく体重を測ったら1グラム減っていた。
1グラム。きっとそれが彼の命の、彼の魂の重さなんだ。そう思った。
彼にはずっと年下のラブラブの彼女がいたのだけれど、今年の春に急逝してしまった。動かなくなった彼女の体を、いつものように毛づくろいしてあげていた彼。
わたしがスマホを見ていると、いつも手の甲に乗ってきて、何時間でもまったりしていたツンデレの彼。
一緒にいてくれてありがとう。
優しい思い出をいっぱい残してくれてありがとうね。
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