見出し画像

闇のなかの少女 with Gaspard de la Nait "Ondine"

天鵞絨の漆黒に抱かれて
光と闇が出逢う幻想詩

夜のガスパール"オンディーヌ" - ラベル

闇のなかの少女

光が強ければ強いほど闇も深くなる
だから光の手が届かない暗がりに少女は潜む

誰もが光を好むわけじゃない
誰もが闇を恐れるわけじゃない

しっとり纏わりつく漆黒の静けさにいだかれ
怯える少女は震える小さなからだを
優しい暗黒の腕に委ねる

暗がりから小さな声がしても振り返ってはいけない
闇のなかから微かな囁きが聞こえても覗き込んではいけない

黒い眠りのなかで
少女は天鵞絨ビロードの夢を見ているのだから

光の少年

光の少年は耳を澄ます
微かな囁きが聞こえた

誰かぼくを呼んだかい
答えはない

また小さな声が聞こえた

誰かそこにいるの
誰もいない

在るのは光の届かない闇だけ

天鵞絨の漆黒に引き寄せられ
少年は暗黒を覗き込む

そこに微睡まどろむ一人の少女
優しい夜の腕に抱かれた少女に
少年は心を奪われる

きみは誰
答えはない

滑らかな白い頬…

そこで何をしているの
少女は目覚めない

ふっくらした赤い唇…

沈黙の闇に恋した光は
思わず手を差し伸べる

光を恐れた闇は怯えて後ずさり
光の少年の指先は永遠に届かない
闇の少女が目覚めない限り

闇と光の出会うとき

誰かがわたしを呼んでいる
夢の向こうから呼んでいる

わたしを呼ぶのはだれ

ぼくは此処にいるよ
闇に恋したぼくは此処ここにいるよ

でもきみは誰?

わたしは柔らかな漆黒の翼
静けき暗黒の微睡
天鵞絨の夜から生まれた

黒い夢から連れ出そうとするあなたはだれ

ぼくは輝く光の塔
透き通る青空の太陽
漆黒のきみに憧れた光

閉じていた目を開き
少女は深淵の瞳で少年を見る
差し伸べた手を震わせ
少年はついに少女に触れる

闇と光が重なり溶け合い一つになって…

そして誰もいなくなった


♦︎【西骸†書房】蒼井冴夜

♦︎【大人Love†文庫】星野藍月



気に入っていただけたらサポートお願いします♪いただいたサポートは創作の活動費にさせていただきます