来訪者48(完)

春 ちょうどマミと暮らしだして1年
あっという間だったようにも思うし
長い長い旅をしていたようにも思える
申請していた障害者年金がもらえるようになった
マミに話すとホッとしたように
実は と話を切り出した
またタイに行って来ようと思っている、と
クラのところに行くつもりだという
クラのお母さんは手術のかいがあって
また元気になったけど
クラは当分タイを離れられないらしい
だからマミのほうから会いに行くという
マミはクラのことが好きなんだね
マミも今度は語学留学ということで
最低一年は滞在するという
このマンションも引き払いたいという

家賃は年金で支払い
生活費はお給料でなんとかすればいい
ゴールボールの仲間もいる
ボランティアのツヨシくんも頑張っている
秋山さんやヘルパーさんに相談もできる
それでもダメだったら実家に戻ろう
都合が良い考え方というよりは
それしか選択肢がない
できるだけやってみるしかない
大丈夫なんとかなる
私はマミに言った
「うん、いってらっしゃい
また日本に帰ってきた時は
マミがここに帰って来られるように
できる限り頑張ってみるよ
また時々ズームで話そうね
大好きだよ マミ」

マミは行ったけど私は一人ではない
1年前にマミがこっそり連れてきた
来訪者 クロと一緒だ
今も鈴を鳴らしてリビングを走っている
遊んでほしいときは膝に乗ったり
パソコンのキーボードを叩いたりする
クロはいつも自由だ マミのように

                    完

中途半端ではありますが、「来訪者」はこれで終わります。
毎回コメントをくださって、導いてくださったShinjyさんやリョウコさん、ありがとうございました。
他にも読んでくださった方、ありがとうございました。


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