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アイスクリームとボンベイサファイア。流浪の月

 今の私がこの小説の感想を書くのは厚かましい、と思う。まだ一回しか読んでいない。咀嚼も反芻もできていない。人間としても未熟だ。だけど初めて読んだ感想を記しておきたいと思った。だから迷ったけど、残しておく。「流浪の月」第一回読書感想文。

 この本を読み終わった日、うちの夕食はハンバーガーとポテトにした。本当ならピザが良かったんだけど生憎体調があまり良くなくてピザを十分味わえないと思った。ハンバーガーも十分重いけれどチーズがないだけ幾分かましだ。ポテトは冷凍のやつを揚げた。フレンチフライじゃなくて一口大のマッシュポテト。ハニーマスタードとかアイオリソースなんていう洒落たものもないから代わりにスイートチリソースとケチャップを用意する。代わり代わりばっかりで全然小説の世界を表現できてないけれど、私らしくて良い、ってことにした。

 本当はお酒も飲みたかった。昔大好きだったボンベイサファイア。「ボンベイ・サファイア」って言う単語が出てきたときは懐かしくてニヤッとした。ボンベイサファイアはジンの中でも瓶のデザインが抜群にいい。今で言う“バエル”ってやつだ。更紗が自分の部屋に飾りたい気持ちになるのもわかる。

 目の前に座るのは文でも更紗でもなくて中年のおっさんだったから雰囲気は全然出なかった。だけど近場のマックじゃなくて少し遠くのモスバーガーまで車を走らせてくれたのだから感謝しよう。文じゃないけどこの人も優しい。文じゃないけど。

 文と更紗のように映画を見ながら、寝転がりながら、って思ったけれど私は更紗と違って床に食べかすが落ちるのは嫌だしリモコンが汚れるのも嫌だし、ましてや布団が汚れたら機嫌が悪くなって全てが台無しになるので普通にダイニングテーブルで食べた。文みたいに汚れたら掃除すればいいとも思えない。私は掃除が嫌いだ。だからなるべく汚さないように気をつけて生きている。
 そのあとは普通にお風呂に入って普通に寝た。なんてつまらない休日だろう。だけどとても満たされた気分。ずっと文と更紗のことを考える。怠惰な休日は最高だ。


逃れようのない重さを知ったそのとき、わたしの子供時代は終わりを告げた。

 この一文から先は、自由に生きる子供の更紗と文との生活を想像した時のように満たされた気分になることはない。だから最初の読書感想文はここまでにする。もう少し、幸せな気分に浸っていたいから。


おわり

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