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解せない。星の子

一昨日、唐突にAmazonのあなたへのおすすめに表示された「星の子」という本。
あらすじを読んで、面白そう読んでみたいと思いながら、とり急ぎ欲しいものリストに入れた。
明日になっても読みたいと思ったら買おう。

昨日、そういえば芦田愛菜ちゃんが主演で映画化される映画の名前が星の子じゃなかったかな?とふと思い出した。
その映画の紹介を聞いたときも確か面白そうって思ったんだよな、結局こういう話が好きなんだよな、と思いながらkindle版をポイントで購入した。


思ったよりもずっと短い話だった。
最後の一行を読み終わった瞬間「は?おわり??」と言ってしまった。
想像力を働かせねばならないラストだった。
登場人物の思考を思い巡らされた。

*   *   *

今も昔も私は宗教というものにあまり良い印象がない。
いや、昔は良くも悪くも思っていなかった。ただ、興味がなかった。
自分の家がどの宗教を信仰しているかなんて気にもしなかった。仏壇もあるし神棚もあるから無宗教だと思っていた。母の葬儀の時に浄土真宗だということを知り、そして、祖父の葬儀の時に檀家であることを知った。

祖父母は信仰心の強い人だったのかと聞かれれば、多分私はNOと答える。祖母は毎朝仏壇に炊き立てのごはんを供えることをサボったことはなかったし、祖父もたまに仏壇の前に座って「南無阿弥陀仏なんちゃらかんちゃら」と唱えていたけど、なんとも思わなかった。年末には仏壇に飾ってある金色の飾りを一つ一つ外して丁寧に磨いていたけどそれも毎年恒例のことだった。

多分、祖父母のそれは特定の宗教に対する信仰と言うよりも、ご先祖さまたちに対する感謝と供養の意味合いが大きかったのではないかと思う。私がまだ幼い頃、うちの仏間には祖母の母の写真が飾ってあったし、思い出話も聞かせてもらった。何より、祖父母は宗教的な何かを私に強いたことはない。怒られたのは床の間に裸足で上がった時だけかもしれない。だけどそれも行儀が悪いというだけで宗教的な意味を含んだものではなかったと思う。

宗教についてそれほど深く考えたことのなかった私は、法要のたびに坊さんにお金を包むのも、ご馳走を振舞うのも、生活習慣の一部だと思っていた。
ある時「一回ナンマイダーしてもらうといくら払うの?」と聞いたことがある。
祖母は「気持ちだから」と曖昧に答えた。
「気持ちって何?いくらでもいいってこと?じゃあ100円でもいいの??」
祖母は苦笑いした「100円はちょっと・・・」。

子供にお金の話をすることを好まない大人がいるけど、祖母もそのタイプだった。でもこういう話こそ、子供にちゃんと聞かせるべきだと私は思う。生活していく以外に、どんな出費があるのかを知っておくのはとても大切なことだ。

*   *   *

うちが檀家だと知った時、私は社会人だった。
二十歳を過ぎた大人が、「檀家って何?」から始まり、
「え?毎年お寺さんにお金渡してるの?なんで?」
「檀家だから」
「納骨堂作る時にもお金払ったの?なんで?」
「檀家だから」
「なんで檀家なんかなったの!?」
「昔からそうだから」
「檀家ってやめられないの?」
「そういう話は聞いたことがない」
「私お金払うの嫌だ!」
と、祖母を質問攻めにした。

しつこく聞き続けた結果、毎年数十万円のお布施をお寺さんに支払っていることが判明した。納骨堂を作った年はもう一つ桁が増えていた。それもこれも「檀家だから」。なんというパワーワード。年寄りの二人暮らしの家からこんなに多額のお金を毟り取るなんて悪魔だと思った。それと同時に、それをさも当たり前のように受け入れている祖母に違和感を覚えた。

*   *   *

私は知っている。坊さんがとても贅沢な暮らしをしているということを。
精進飯なんて今は昔。坊さんは毎日いろんなお宅の葬儀やら法事やらに出席して、毎日ご馳走を食べている。お酒を飲んでいる。それが原因で糖尿になったと笑い話にしている。車だって高級国産車に乗っている。私は知っている。坊さんは税金を払わなくていいってことを。なのになんでこんな一般庶民から金を巻き上げるんだろう。大体檀家ってなんだよ、そんな制度必要なの?マジで。

こうして私の宗教に対する不信感はどんどん募っていった。多感な時期にオウム真理教の事件があったり母が変な宗教にハマったりした影響ももちろんあると思うけど、自分の家から多額のお金がお寺さんに流れているという事実を知ってしまったことが一番大きかったと思う。だから私は今も宗教と聞けば「お金を取られるところ」と「洗脳されるところ」としか思わない。

でも、だから興味がある。信仰心が強い人。信仰心が強い親に育てられた子供。
私の知らない世界。理解できない思考。感情。
同じような題材の作品があったら、きっとまた私は手に取るだろう。

たとえ、解せなくても。


おわり。




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