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<ずっと一緒にいたかったんです>サラさんはピーマン農家


いつ頃からか、ずっと家族経営という形態にとてもあこがれがありました。自分が現実的に出産が難しい年齢になった今も(というか独身だし!)、その思いはなんとなく残っています。おそらく、千葉県で家族で蒸留所をやっている「mitosaya」の江口家を1年ほど見させていただいた経験があったからかも。

私がいいなぁと思う家族経営は大企業ではなくて、たとえばデザイン会社とか街の定食屋さんだったり、和菓子屋さんだったり、そんな小さなところ。
農家さんもそう。

鹿児島県大隅半島はピーマンの産地でたくさんのピーマンのハウスがあります。そこで、以前、すれ違うように知り合っていたピーマン農家さんに気になっていたことを聞かせていただきました。今回は奥様にインタビュー。

*ピーマン農家さんは1年のうち、6月のみがお休みということでギリギリ6月の終わりにお会いできました。

鹿児島県大隅半島の某所に住んでいらっしゃる、サラさん

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➖  最初に出会ったときに農家さんって雰囲気が全くないから、サラさんがピーマン農家さんってあとで知ってかなり驚いたんです。
サラさん いえいえ、私はまだまだほとんど助手的な存在です。
仕事も男性が上手な仕事、女性が上手な仕事とあって、私はそんな言えるほどまだそんなにできてないのですが。最盛期の時はしっかりと収穫を手伝いますけど、普段はあんまり当てにはされてないかもしれません(苦笑)。
あ、隣に農家の奥様としてのレジェンドがいますよ。

(旦那さんのご実家もピーマン農家さんで、お隣に住んでいらっしゃる。)

➖ いきなりだけど、家族で仕事するってどうですか?
サラさん 農家さんになるのはむしろ私にはよかったんです。
結婚するなら農業の人って思っていて。
父親に結婚するなら農業の人がいいよって聞かされていて。
辛いことも知っているから・・・と言っていたんです。
おじいさんはお茶農家さんで、父は会社勤めをしながらお茶の仕事もやっていました。なので、私もお茶畑の仕事を手伝ったりしていました。
だから、旦那さんが脱サラしてピーマンをやると言った時は大賛成でした。

➖ でもずーっと一緒にいるんですよね?仕事も、家でも子育てがあるから、すべて共同作業で。私は家族経営に憧れると言いながら、自分ならそれに耐え切れるかな?と思ったり(笑)。
サラさん 結婚をする前から旦那さんとはずーっと一緒にいたいなと思っていました。
あ、でもずーっと一緒なんだけど、一緒にいるようで一緒じゃないんです。
お互いに見つめ合いながらピーマンを収穫、とかそんなことはないです(笑)。
作業自体はバラバラで、それぞれラジオや音楽聴きながらやっています。
休憩のお茶の時間は一緒には飲みますが、ハウスに向かう車も別でそれぞれです。一緒にいるようでいないような、家でもそれぞれなんです。
いるようでいないような。

➖ 夫婦ゲンカなんかやってられないですねえ。
サラさん 最盛期が終わり、夏からまたピーマンの仕事が始まる時期になると、旦那さんはどうしてもピリピリするんです。常にピーマンのことを考えているみたいで、病気のこととか。
私の作業が遅かったりすると彼はイライラしているんですけど、つられて私もイライラするのもいけないんですけど・・・。

➖ イライラはどうしても伝染してしまうと思んだけど(苦笑)、サラさんがイライラするのはなかなか想像できないです。そんな時はどうしているんですか?
サラさん イライラにもいろんな場面があるんですが、あ、ひとつ印象的な出来事が。

ハウスの中にもう一枚、ビニールをはる作業があり、共同でやるんですが私がなかなかうまくいかなかったんです。
そうしたら、全然ちがうじゃん!って旦那さんだんだん怒ってきちゃって・・・。もう自分でやる!ってひとりで作業を始めてしまいました。
ああ、怒ってきたな 嫌だなと思って 冷静に観てたら、カシャってハシゴをかけると同時に駆け上がっていて、運悪いことにそのハシゴが短くて…。わぁー!ってそのままピーマンの木に倒れちゃったんです。イライラしているから、なんか漫画みたいにジタバタしていて、私は笑いたかったけど相手は怒っているから笑えなくて、そのうちだんだんかわいそうになってきました。でも旦那さんはすごい状態で、植えたピーマンもぐしゃぐしゃだし・・・そうだ、ヤケーヌを付けているから顔の表情がバレないし、目だけ必死に笑わないように帽子を深くかぶってガマンしました。旦那さんが怒っていところ見るのは嫌なんだけど、怒っているところもおもしろいなあ、なんて思ったり楽しんでいます。
ちょっとかわいそうだったり、おかしかったり…本当にいろいろあります。

(ヤケーヌとは・・・日焼け防止専用のUVカットマスクです。
これです。

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紐パンではありません。取材時、私はお茶畑のバイトをしていたのでサラさんからいただきました。)

家のことだったら、歌を歌ったり踊ったりして旦那さんにそっとアプローチするんです。”私はイライラしていますよ、ちょっと怒ってますよ”って。

➖ !!?へ?
サラさん はがした湿布のフィルムをゴミ箱に捨ててない時とか、後日また着る洋服やベルトなどがそのまま置いてある時、イラッとしてしまうんです、そんな時に。と言っても、私の歌と踊りのレベルは家族にしか見せれないレベルですけど(笑)

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➖ あ〜なんかいいなあ、私はできないかもしれないけど。そのままの感情で伝えるとどうしてもぶつかりますよね。
サラさん 薬の散布や温度管理など本当にいろいろがんばっているから(旦那さんが)、私は家のことは私がヨシ!がんばるぞってなります。
洗濯物は干してくれるんです。
でも、前の日に飲み会行って干してくれなかったときなど、いつもやっていることをやっていなかったら、ピーマンの仕事はあまりやる気がでない時があります。
そんな時は、今日はいつも以上にがんばらなくていいっか、この重い箱を降ろさなくていいかなって思ってしまたり(笑) 。

➖ うん、うん。農作業は毎日力入れて頑張ってたら心身共に大変ですよね。最盛期の時は仕方がないけど。
サラさん 自分でうまいこと力を抜く場面を見つけたりしています。でも別なところで手伝ってくれたら、お茶をそっと近くに置くなどしています。
え?旦那さんはこちらの気遣いに?うーん…気づいていないですねえ(笑)

なんでしょう、農業って最先端だなあって思う時があります。地道に力仕事ってイメージがあったけど、実際にやってみると”作業”っていうより機械も最先端のものが多いから頭良くないとさわれないし、できない。”ハイブリット”っていうか。

➖ あ、私も近いことを思っていたの。農作業ってすごく”センス”を問われる職種というか作業だと。いろんな意味でこれからの時代の最先端じゃないかって。
サラさん はい、本当にセンスですよね・・・。

➖ お子さんはピーマン好きですか?お父さんとお母さんが作ったピーマン。
サラさん 一番上の子は、命をとても大切に思う子なんでしょうか、おじいちゃんが亡くなった時すごく落ち込んでいた様子でした。ピアニカすらにも命があると言って保育園で泣いてしまったらしく。ゴミすらも捨てようとすると・・・泣いてしまうんです。あの子にとってはゴミではなかったのかも。でもピーマンは苦手みたいで、食べてくれないですね(笑)

➖ サラさんはイラストも描いてますが、世界観が全くブレることなくいつもほんわかとした気分になります。ずっと描いていたんですか?
(私がいつも行くヘアサロンの大きな黒板に、サラさんは季節ごとに伸びやかな絵を描かれています。)

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サラさん 趣味なんですけど、以前フリマなど参加してその時の縁で依頼を受けていたりしましたが、子育てとピーマンとの両立が難しくて納期が延びてしまったりしていたので、今は前ほど受けることができないのですが。

でも、最近は絵の勉強をちゃんとしようと思って通信講座に申し込んでみたりしてみました。

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➖ サラさんは教わらなくてもちゃんと世界観があるから、どんどん描けばいいだけだと思うんだけど、時間を取ったりするのもなかなか大変じゃないですか?
サラさん あのですね、ピーマンを始めてからめっちゃ寝ます。
早い日は6時半(夕方)とかに寝ます。だいたい8時(夜)には寝ます。
子供二人ももちろん一緒に。旦那さんも寝ないと病気になるタイプなので、家族全員一緒の時間に寝ます。

➖ 何時に起きるの?
サラさん 朝5時くらいですね。

➖ 理想!
サラさん はい、そうなんですけど、実は、先日、絵を描かせてもらっているヘアサロンでヒーリングのカードを引いたときに「休んでいいよ」ってカードが出たんです。
私、いつもめちゃくちゃ寝ているのに今まで昼寝をがまんしていました。
コーヒー飲んだり、つねったり(笑)
10時間くらい寝てるからって思って。
おどったり。がんばって起きて・・・・気をそらしたり。
マエケン体操したり。

➖ (苦笑)夜の睡眠と昼寝って違うらしいから、許されるなら昼寝した方がいいと思うよ。ところで結婚をする前、仕事は何をしてたんですか?
サラさん 歯科衛生士でした。

高校3年のときにこけて体育館でころんで、前歯をぶつけて歯の神経が死んでしまったんです。
それで歯医者にはなれないけど、歯科関係の仕事に就けばなんとか治せるんじゃないかって思ったのが動機です。

➖ 歯医者には行かなかったの?
サラさん 行かなかったんです・・・。
自分で治そうと思ったんです。あ、元の歯はあるんです。ありがたいことに歯は丈夫なようです。
歯科衛生士の実習中にこりゃ自分じゃ直すのは無理だと思って、その時に実習の先生に治療費を払いながら漂白などしてもらっていましたが、
20歳くらいまで黒ずんでいました。
就職してから付け爪みたいに、表面に一枚ピッて貼ってもらって、今はそのままです。

➖ え、そんな簡単に!
サラさん はい、銀歯をつける前に貼るエステニアっていう材料です。神経は掃除しました。
不純な動機で歯科衛生士になったんですが、10年くらいずーっと同じクリニックで働きました。

➖ そういえば、今日、ポートレート写真も撮らせてもらうつもりなんだけどいいですか?
サラさん あ、うれしいです。写真って家族揃ってる写真が多くて自分ひとりの写真はほとんどないんです。以前ですね、スタジオ○リスで七五三の家族写真を撮りに行きました。にかーって笑顔はよかったんですけど、仕上がりをみたら、なんと!歯に小豆が付いたまま私笑ったみたいで・・・小豆付きの家族写真なんです。

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➖ だ、だ、大丈夫(笑)。今日は何も付いてないよ。

なんだか、歯の話がとても印象に残ったけど不思議な魅力を持ったサラさんでした。(でもしっかり母親でピーマンのサポートもされています)話を聞いているこちらは終始にやにやニコニコ。なんだか癒されます。雰囲気が文字でなかなか伝わらないと思うので、動画を貼ります。
どうぞ!


(自分の家の庭にグラジオラスが咲いていたことを発見したサラさん)

(終わり)



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