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人と、風と、光と

枝葉を伸ばし、可憐で白いみかんの花を咲かせるには、その土地に根を張る樹と向き合い、育つ時間が必要です。さらには果実を実らせ光り輝く橙色に染め上げなければいけません。

今年で就農5年目の加屋本 一輝さん 

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この秋・冬、じっくり育ててきた彼の世界の土壌が豊かに育ち、そこから愛媛県が誇る「真穴みかん」が出荷されます。(今年が初出荷ということではなく)

元々は宮城県仙台市出身。20代の頃は季節労働で北海道のニセコと富山県立山にある山小屋を1年かけて周っていました。日本だけではなく、オーストリア・ニュージランド、他数カ国、さらにはワーキングホリデーでカナダに行ったと思ったら一ヶ月で全財産を使ってしまい、道路工事などのバイトをしてなんとか滞在費を稼いだり。と基本的には流動的な生き方をされていました。

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ところが、
「30歳くらいからどこかで腰をすえようと思ってた。」と。
(現在37歳)
そんな時に、一輝さんはみかんの収穫アルバイターとして現在の地の愛媛県真穴地区に来ました。
「最初から農業に興味があったわけではないよ。
ここにきてやってみて、ああいいかもなって。逆に農業もみかんの産地もここしか知らない。元々プラプラしてたし。」

とても小さな地域でみかんを作っていくというのは、
自由にいろんな所を周ってきた彼には大変ではないだろうか?(人付き合いとか諸々)とお節介を聞いてみました。
「うーん・・・、俺一人で孤立してみかん作ってても楽しくないでしょ。
好きなように生きてたけど住むところ決めて、家族もできて、仕事もあって、今までと全然違うけどやりがいがあるよ。自分のペースでできるからそれがよかった。」

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一輝さんは結婚をされてますが、奥様にすでに1人のお子さんがいらっしゃいました。そして今年の夏にもう一人女の子が誕生したことで、一気に家族が増えました。彼のお父さん姿を想像してみました。なんとなくにやけてしまいます。


あくまで、これは私の経験ですが、人が新しい形へとなって行くときは身の回りが一気に変化していき、人生観が変わり、これまでのものに魅力を感じなくなったりする時があります。その逆もまた然り。心の対象が変わると、行動も手立ても変わります。
土地とのつながり方も変わります。

「やるときめたらやる。
ここでいろんな人たちにお世話になっているから、途中でめげて投げ出すってそれはナシじゃん。無理して絶対続けるとは思わないけど、イヤでやってないし、意地でもないしね。笑」

自由な生き方をしてきたように見える彼ですが、きっと光が当たる生き方だけをしてきた訳ではなく、どこかで困難を乗り越えたはず。そこで自信を身につけた人の言葉だと思いました。
そしてとても楽しそう。

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「本当は四国で漁師をやってみたかった。履歴書いろいろ送ったけどダメだったから、とりあえず四国に行けるならみかんでもいいやと思った。」というのが最初の最初!
目の前には穏やかな宇和海が広がります。しかし、今、海ではなくて山にいます。人生っておもしろいですね。
”これ!”というものを見つけた彼の物事をやり通す意思の強さ。かっこいいいです。


一輝さんが真穴でみかん農業をやると決めた時に、お世話になったという、先輩農家のお二方。

金蔵さん(左)とカツオさん(右)。

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実にライトな感じで、一緒にいて楽しいお二人です。
そして、何がどうとうまく説明ができないのですがセンスがすばらしくて。

カツオさんはクリエイティブ。言葉も簡潔になのにわかりやすい。アンテナ力高めのオールマイティで明るくウェットなところないんですが、時々「え?!どうしたの?」と寡黙だったり、弱音をチラリと人間ぽいところを見せてくれます。

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金蔵さんはセンスの塊。ぼーっとうっとりしているようで、
おしゃべりが上手で、人と人の間に入っての調和の取り方が天才的です。これは本当に驚きます。いろんなバランス感覚がいいんだと思います。許容とか、ゆるみ、とかそんな感じです(どんな感じ?)

と書くと、お二人とも農家さんぽくないんですが、共通しているのは「作業」が丁寧ということ。

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こちらは公人さん

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公人さんは演出の人だと思います。おそらく想像力が豊かなのでしょう。
と書いたら、また農家さんぽくないのですが、植物を育てるって想像力は必須なような気がします。実際、公人さんのみかんはとてもおいしいらしいのです。いつか食べてみたい。

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人、
風、
光、
真穴・まあな、という地名が(真穴は地名ではないけど敢えてそう表現します)、喚起させる諸々のくくり。あふれんばかりの豊かな愛情がみかんの山々を包んでいるかのような響き。
土地がその人を作るのか、人がその土地を作るのかどちらなんだろう。

ここの農家さんたちは、何かを壊さぬように、崩さぬように、暗黙の了解のようにみんなが協力しあっている。何か?っていうのはうまく表現できないけど。
けど、それがあのおいしすぎる「真穴みかん」ができる理由のひとつなのかも。

あと数日でみかんにハサミが入り、あちこちでパチンパチンという音が響き渡ります。収穫のはじまりです。
(上の写真はすべて8月下旬に撮影)

(下の写真は10月下旬。金蔵さん撮影)

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