約2年前の初報以来、ほとんど毎週のように故人の固有名詞が報じられてきたスリランカ女性の、文字通り断末魔を撮影した動画の一部が公開されることになりました。
事故ではなく事件と考えているし、加害者は国家組織だと思っている私ですが(=自己紹介)、その立場であっても「映像を公開しろ」ムーブメントには賛同できず、何故ってアンタ、ひとが亡くなるシーンを見る行為のおぞましさを忘れすぎでは。その正義感あふれるアジテーション背後に興味本位要素がないか、自分の胸に聞いたことあります?
……ぐらいが私の一貫した感想なんですが、事件の真相解明のため必要。という公開派のロジックはまあ頷けないではないし、なにより国会議員には見せるが遺族弁護人には見せられない「保安上の理由で」。とスジの通らないことをかたくなに言い張られて2年弱なので、本件が一歩進んだことにはさすがに感慨を覚えずにはいられません。
■という流れでいろんなニュース、それに付くコメントを見ていたのですが、いまなお故人の死の遠因を「ハンストをそそのかした活動家」に求めるひとたちが一定数確認できるの、あれは何なのか。どこでそういうテンプレートが醸成されるものなのか。
という関心を持ちながら、さらにニュースコメントに目を通していると「入管職員はいったいどういうつもりで働いているのか」という疑問が目撃され、ああ、それな。
小樽商科大学の季刊誌「商学討究」2022年春号に掲載されているテキストがいちばん分かりやすいよ、とその存在を知って以降は定番回答化しているのですが実はこれ、3本シリーズの真打というべきで。前年の同誌秋冬号に
「大村入国管理センターに聞く ― 被収容者の実態に関するインタビュー調査」「柚之原寛史牧師に聞く ― 被収容者支援の実態に関するインタビュー調査」
というテキストがありましてね。
ええと、何の話だっけ。
ハンストはたいてい活動家に知恵をつけられてやることで、その甘言に乗ってしまって最後は命を落としてしまうのは自業自得とはいえ気の毒でもある。諸悪の根源は活動家だな! って言説がどこ由来か、って話か。
退官した人物の私見ではありますが、要するに2010年に法務省入国管理局(当時)と日本弁護士連合会との間の合意(らしきもの)があって、それが偽装難民申請ブームを呼び、そのころ世間に植え付けられた印象が今もなお「難民申請」というトピックについてまわっている。
……ぐらいまでは、推測してもよさそう。
■話をウィシュマさんに戻します
・収容期間(2020年8月20日~2021年3月6日)で体調悪化は2021年1月18日以降
・面会記録によれば2020年12月16日に「スリランカに帰るつもりだ」と本人が言ったのに「仮放免をすすめる日本人」が現れたので12月18日に翻意している
→ つまりそいつが扇動したんだ! 説の誕生。
なお、報告書にもこの経緯は記されていて、以下A氏はウィシュマさん、S1氏が仮放免をすすめた日本人ですが、名古屋入管職員の間でも「どうせ仮病」視されていたことが公文書に残っています。
で、あらためてお伺いするんですが、ウィシュマさんがハンストしていた。って説だけでもこの際デマ認定しておきたいんですが、いいですかね。
彼女の体調悪化の原因を「活動家」に求めるのは、妄想の範疇として容認するとして。
どうよ?
なお、本人が体調悪いって言い続け、何度か医師に診てもらってたとはいえ結局病死に至るまで打てる手を打たなかった。よりによって国の法機関が。という事実は変わらないわけですけれど。
そうした反省を踏まえていれば出せるはずもない「改正案」が提出されそうな状勢であることも、もちろん見逃せるはずもなく。
■ウィシュマさん以外の今週ニュースも本当はいっぱいあったんですけど、もうおなかいっぱい
技能実習と特定技能の2本立て制度を見直す会合、技能実習を推す声のほうが強い。という記事とか
2019年に浜松市が特区申請していた件、なんだかうやむやのうちに成立しそうだな、とか
性懲りもなく高度人材誘致を言う政府に、同じ口で「ただしLGBTQIA+は除く」って言っとかんかい。と思ったりとか
いま日本で天変地異が起きたら同じ愚挙がないって言えるかね。本当に大丈夫かね。って話とか。
■その他ニュース、見出しだけ
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"Se7en"(1995) from IMDb