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5hrs of 295/週刊「移民国家ニッポン」ニュースまとめ(23.2.12-23.2.18)

約2年前の初報以来、ほとんど毎週のように故人の固有名詞が報じられてきたスリランカ女性の、文字通り断末魔を撮影した動画の一部が公開されることになりました。
事故ではなく事件と考えているし、加害者は国家組織だと思っている私ですが(=自己紹介)、その立場であっても「映像を公開しろ」ムーブメントには賛同できず、何故ってアンタ、ひとが亡くなるシーンを見る行為のおぞましさを忘れすぎでは。その正義感あふれるアジテーション背後に興味本位要素がないか、自分の胸に聞いたことあります?

……ぐらいが私の一貫した感想なんですが、事件の真相解明のため必要。という公開派のロジックはまあ頷けないではないし、なにより国会議員には見せるが遺族弁護人には見せられない「保安上の理由で」。とスジの通らないことをかたくなに言い張られて2年弱なので、本件が一歩進んだことにはさすがに感慨を覚えずにはいられません。

■という流れでいろんなニュース、それに付くコメントを見ていたのですが、いまなお故人の死の遠因を「ハンストをそそのかした活動家」に求めるひとたちが一定数確認できるの、あれは何なのか。どこでそういうテンプレートが醸成されるものなのか。
という関心を持ちながら、さらにニュースコメントに目を通していると「入管職員はいったいどういうつもりで働いているのか」という疑問が目撃され、ああ、それな。

小樽商科大学の季刊誌「商学討究」2022年春号に掲載されているテキストがいちばん分かりやすいよ、とその存在を知って以降は定番回答化しているのですが実はこれ、3本シリーズの真打というべきで。前年の同誌秋冬号に
「大村入国管理センターに聞く ― 被収容者の実態に関するインタビュー調査」「柚之原寛史牧師に聞く ― 被収容者支援の実態に関するインタビュー調査」
というテキストがありましてね。

―― ハンガーストライキを行った結果体調が悪化し、仮放免を出すということはあり得るのでしょうか。

総務課総務係長:ハンガーストライキをしたから仮放免ということではなく、ハンガーストライキをして体調不良になり、回復に相当時間がかかるという状態になれば仮放免を認めざるを得ない場合はあります。ただ、このような事態になったとしても常に仮放免しますということにはならないです。

―― 大村の死亡事件以降に仮放免者数に変化はありましたか。

処遇部門統括入国警備官:仮放免者数が増加しているのは事実です。これは実際にハンガーストライキ自体が全国的に問題になってきた頃とほぼ同じ時期です。それがあるので、死亡事件があってから増えたと言われることがありますが、運用自体を変えているわけではありません。個別の事情に応じて仮放免という結果を出しています。

大村入国管理センターに聞く

今、私が危惧しているのは、いいですか、2019年6月のナイジェリア人餓死事件から被収容者の人たちの入管に対する怒りが極限に達してしまったことです。日本政府に対しても同様です。
餓死者を出したことに対する謝罪の言葉もまだ聞いていません。怒りを放置したままにしてなりません。怒りの火は瞬時に燃え広がっていくものです。
それが表面にあらわれた一つが餓死事件の次の日から全国に広がったハンガーストライキです。
2019年6月25日、つまり死亡事件が起きた翌日の夕食は、全ての被収容者が食事を食べませんでした。追悼の思いもあったと思いますが、全員一致で食事を一口も食べず、ハンガーストライキをしたのです。

柚之原寛史牧師に聞く

ええと、何の話だっけ。
ハンストはたいてい活動家に知恵をつけられてやることで、その甘言に乗ってしまって最後は命を落としてしまうのは自業自得とはいえ気の毒でもある。諸悪の根源は活動家だな! って言説がどこ由来か、って話か。

支援者を自称する方々が在留特別許可の見込みのない帰国希望者を説得して在留希望に翻意させ、その結果心身ともに消耗し、非常に芳しくない結果に至った例もあると聞いたことがあります。反対に、自分達の方針に合わないと見るやそれまでの「支援」していたかのような態度を一変させ、さらに、個人攻撃を始めることなども含めて、果たして支援とは何なのか、再考の余地がありそうです。
その背景には、2010年に方針変更がありそうです。これは、法務省入国管理局(当時)と日本弁護士連合会との間の合意(らしきもの)です。
その時の施策により、被収容者が仮放免許可であれ、在留特別許可であれ、身柄の拘束を解かれるとの根拠のない期待を持ってしまい、それが叶わないと見るや様々な行動を実行に移しているように思われます。
長期収容は、被収容者自身の帰国意思の表明によって即時解決する問題です。これが特効薬でしょう。また、一定の要件を満たした被退去強制者には、一旦国に戻り、新たな在留資格認定証明書を取得し、出直すという方法も用意されております。その実態はこの制度を活用した当事者が他人に余り話したがらないせいか、その情報は広くは流布していないようです。

元東京出入国在留管理局長・福山宏氏に聞く

2010年3月頃に当時の入国者収容所西日本入国管理センターで被収容者によるいわゆるハンスト、正確には、官給食のみの摂食拒否が集団で行われました。差入れ品や自費で購入したものは摂食していました。
入管施設での初めての事案であったためか、かなり大きく報道され、関与された国会議員も多く、その影響もあったのか、被収容者にとって何か得るところがあったようです。
その後外国人を収容している地方出入国管理官署においてこの集団官給食拒否が頻発するようになりました。
おそらく、そのたびにそれなりに報道され、世間の注目を集め、さらに、国会で取り上げられるので、自分たちの要求が通りやすくなる、そのことを通じて自分たちの存在を示すことができるという複数の要因が絡まっていたのでしょう。
その後集団官給食拒否が発生するたびに、似たような理由から実に様々な人達が集まるようになり、この時とばかり、しかしこの時だけ、色々入管政策の問題と考える点を指摘するようになりました。
それが毎回繰り返されましたが、そのうちに注目度も下がっていきました。
注目度が下がれば当事者の中には注目度を回復するために行動を激化させるというのは世の常で、危険な兆候というべきであったかも知れません。

元東京出入国在留管理局長・福山宏氏に聞く

退官した人物の私見ではありますが、要するに2010年に法務省入国管理局(当時)と日本弁護士連合会との間の合意(らしきもの)があって、それが偽装難民申請ブームを呼び、そのころ世間に植え付けられた印象が今もなお「難民申請」というトピックについてまわっている。
……ぐらいまでは、推測してもよさそう。

■話をウィシュマさんに戻します
・収容期間(2020年8月20日~2021年3月6日)で体調悪化は2021年1月18日以降
・面会記録によれば2020年12月16日に「スリランカに帰るつもりだ」と本人が言ったのに「仮放免をすすめる日本人」が現れたので12月18日に翻意している
→ つまりそいつが扇動したんだ! 説の誕生。
なお、報告書にもこの経緯は記されていて、以下A氏はウィシュマさん、S1氏が仮放免をすすめた日本人ですが、名古屋入管職員の間でも「どうせ仮病」視されていたことが公文書に残っています。

調査チームによる名古屋局職員からの聴取を行っていく中で、名古屋局職員の中には、その立場や業務内容等に応じて個人差があり、また、1月中旬以降のA氏の体調等の変化に伴い時期によって程度が異なるものの、A氏による体調不良の訴えについて、仮放免許可に向けたアピールとして実際よりも誇張して主張しているのではないかとの認識を抱いていた者が認められ、とりわけ看守勤務者の中に多く認められた。

認識の原因となった事情名古屋局職員からの聴取等の結果、職員らが、A氏の体調不良の訴えについて、仮放免許可に向けたアピールとして実際よりも誇張して主張しているのではないかとの認識を抱く原因となった事情として、以下の各事情が認められた。

○ A氏は、令和2年12月に支援者であるS1氏らと面会を重ねる中で、S1氏らからの支援の申出を受けて、帰国希望から在留希望に転じ、令和3年1月に仮放免許可申請をした後から、体調不良を訴えるようになったが、職員の中には、それぞれの経験から、仮放免許可申請後に体調不良を訴える被収容者の中には、仮放免許可に向けたアピールとして実際よりも誇張して体調不良を訴える者がいるとの認識を有する者がいた。
○ A氏が1月20日にS1氏らと面会した際に作成された面会簿には、A氏が「胃の中に髪の毛が入っている感じがして食欲がない。」などと体調不良を訴えたのに対し、S1氏が、「お腹の不調については、病院に行って検査をしないと原因が分からないので、早く病院に連れて行ってもらえるよう担当にアピールした方がいい。」「入管は体調不良者について何もしない。病院に行って体調不良を訴えないと仮放免されない。仮放免されたいのであれば、病院が嫌いでも病院に行った方がいい。」などと述べたと記載されており、同面会簿の記載内容が処遇部門の職員に対して供覧又は周知されていた。職員らは、このような記載内容等から、A氏が「病気になれば仮放免される。」との認識を抱いたのではないかと考えていた。

令和3年3月6日の名古屋出入国在留管理局
被収容者死亡事案に関する調査報告書

で、あらためてお伺いするんですが、ウィシュマさんがハンストしていた。って説だけでもこの際デマ認定しておきたいんですが、いいですかね。
彼女の体調悪化の原因を「活動家」に求めるのは、妄想の範疇として容認するとして。
どうよ?

なお、本人が体調悪いって言い続け、何度か医師に診てもらってたとはいえ結局病死に至るまで打てる手を打たなかった。よりによって国の法機関が。という事実は変わらないわけですけれど。

そうした反省を踏まえていれば出せるはずもない「改正案」が提出されそうな状勢であることも、もちろん見逃せるはずもなく。

■ウィシュマさん以外の今週ニュースも本当はいっぱいあったんですけど、もうおなかいっぱい

技能実習と特定技能の2本立て制度を見直す会合、技能実習を推す声のほうが強い。という記事とか

2019年に浜松市が特区申請していた件、なんだかうやむやのうちに成立しそうだな、とか

性懲りもなく高度人材誘致を言う政府に、同じ口で「ただしLGBTQIA+は除く」って言っとかんかい。と思ったりとか

いま日本で天変地異が起きたら同じ愚挙がないって言えるかね。本当に大丈夫かね。って話とか。

■その他ニュース、見出しだけ

"Se7en"(1995)  from IMDb 

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