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Go to Travelでもなく、Go to Eatでもなく、Go to Heavenだった

あなたが死ぬ直前に思い出したいディナーってどんなん?

私は食いしん坊な人間なので、死ぬ間際に

「あの時食べたあれ、美味しかったなぁ…」
とか

「次生まれ変わったらまたアレ食べたいなぁ…」
とか

ニヤニヤ思い出しながらヨダレを垂らして死にたい。

突然ですが、ここで

\私が死ぬ時に思い出すディナーランキング暫定一位/

を発表したいと思います。

全12皿。
これを死ぬ間際にダイジェストじゃなくフルで思い出したい所存です。
それではいってみましょう。






山羊

クスクス

ホッキ貝

茄子





フロマージュ



ショコラ



メレンゲ

連想ゲームちゃうで。
個室以外は撮影NGなレストランなので、料理の写真は一枚もありません。
一皿残らず忘れたくなくて、料理が出てくるたびに指折り復唱しながら必死に脳みその大事なところに刻み込んだ。
素晴らしいペアリングワインのアルコール度数と戦いながら…。

ご紹介が遅れました。
そう、ここは14年連続ミシュラン三ツ星獲得「カンテサンス」
わかりやすく「ミシュラン」と言いましたけど、私は自分が知らない赤の他人の味覚を信じていないので、ミシュラン自体には興味が無い。
見ず知らずの他人の評価でついた星なんてどうでもいい、私が信じる星は私がつける
(ハイ、生意気)

じゃあなんでここに行きたいかというと、ちょうど一年前のTBSドラマ「グランメゾン東京」の監修がカンテサンスだったから。
(ハイ、ミーハー)

このドラマが最高に良かったのは、フードコーディネーターが“それっぽくみせる”テレビ用のメニューではなく、“本物のレストラン”が監修に入っていたから。
ドラマを観ていない人も、「グランメゾン東京」公式サイトの料理紹介ページ「最上の饗宴」はぜひ見てほしい。


グランメゾン東京のレシピ提供を担当した「カンテサンス」の岸田周三シェフとライバル店「gaku」のレシピ提供を担当した「INUA」のトーマス・フレベルシェフ、それぞれの料理とストーリーが紹介されて、見事な神コンテンツになっている。
ドラマが終わってしまっても、このページだけでヨダレが溢れる仕様になっているのだ。

もうずっと行きたくて、行きたくて。
恋焦がれた。
さすが東京の三ツ星だけあって予算は5万円。
間違いなく、私の人生の中で一食あたりの最高値になる。

普段のご飯をほぼほぼご飯とみそ汁で生きている四十路独身。
不安定なフリーランス。
でも、休みなく働いてるし、ブランドもののバッグも貴金属も買ってない。エステや整形にも手を出していない。海外旅行なんてもう10年以上行ってない。
一生に一度くらい5万のディナー食べてもいいじゃないか?

そう、一生に一度。

12月の上旬。
Go to トラベルを総動員して、東京8泊9日の旅に繰り出した。
こんなご時世にやや長すぎるのでないかというのはおいておいて。
(他にもいろいろあったのだ)

まずね、人生最高値のレストランに行くための服がない。
普段着ているものといえばユニクロのヒートテッククルーネックT(長袖)と、ストレッチフリースパンツ、ウルトラライトダウン(弊社の冬の制服一式)なので、レストランに行くための戦闘服がなかった。
…戦闘力ゼロで東京に乗り込んでしまったので、サクッと銀座で爆買いしました(テヘペロ)
この時点でもうすでに5万以上使ってる。
いいのいいの。大人だもん。(困った時は大人の印籠を出す)

場所は「北品川」。
オーケーオーケー、品川な。
関西人も知ってるよ。
新幹線止まるから、品川は。

ほんで品川駅から北に徒歩何分なん?
「徒歩14分」
まーまーあるな。
スニーカーやと余裕やけど、ヒールがある靴だとちょときつい。
ていうかこれから極上ディナー食べるというのに、息切れ、汗だくで到着はよくない。
潔くここはタクシー乗るよ。
タクシーの中で、いよいよ幕が上がるディナーに胸膨らみ過ぎて、思わずため息がもれる。呼吸も荒い。
こんな調子で無事にたどりつくのだろうか、、、

品川駅からワンメーターちょいで到着。

ついにー!!!
重厚な扉を開ける。

いきなりシュっとしたイケメンサービスマンが出迎えてくれた。
上着を預かってくれるらしい。
薄手のトレンチコート(これも現地調達)の下にこっそりユニクロのウルトラライトダウンを仕込んでいて、どうしようと思ったけどここは正々堂々と!「ユニクロ着るタイプの美食家なんですわ」という顔でスマートに預ける。

サービスのスタッフは女性も男性も、みんな若くて美しい。
普通星付きのレストランだと、いかにもベテランのおじさんサービスマンが仕切っていて、若干上から目線なサービスを受けることも少なくない。
私、オジサンは好物だけど選り好みするタイプなので(知らんがな)
マスクしてるのに目だけで爽やかな笑顔を向けてくれる。どうしよう。まだひと口も食べてないのにすでに幸福感に包まれる。

コースはおまかせコース全12皿(26,500円)のみ。
ワインはペアリングと決めていた。(フレンチのコースはソムリエさんにワインのペアリングをおまかせするのが最適解)

「ペアリングには含まれないんですが、最初のお料理と一緒にシャンパンかスパークリングワインはいかがですか?」
美しいソムリエのお姉さんが爽やかに聞いてくれる。

ワシかてフレンチ業界の片隅に十数年すみっコぐらししたんや。
ここはシャンパン一択やがな。(男気)
とりあえず、見せてもらったボトルで私が知っているのは一つ、「ボランジェ」。しかし、ボランジェはボランジェでも

「BOLLINGER LA GRANDE ANNEE2012」

この「ラ・グランダネ」は理想的なぶどうが採れた年にしか造られない特別なキュベ。

心の第1声は「高いんやろな―!」やったけど、第2声は「次いつお目にかかれるかわからんでな」だった。

関西から北品川くんだりまでノコノコやってきて、グランダネを選ばない理由はない。2008年から4年ぶりのリリースとなった2012年のシャンパーニュをいただくことにした。

コース幕開けの合図と共に、一杯目が注がれた。
始まってしまうと終わりがくるのでもう辛い。
手の中で黄金に光る泡の粒が儚く切ない。

そして、有名な白紙のメニュー登場。
カンテサンスではその日に仕入れた食材を最高の形で調理して使い切るため、メニューがない。つまり何が出てくるかわからない。
ココから先は出てきたものを連想ゲーム方式で必死に記憶していくしかないのである。

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12皿中、「グランメゾン東京」に登場したメニューは5皿。
もちろん、食材やソースは多少変わってると思うけど、出てきた瞬間に「これは~~~~!」と思えるくらいには原型をとどめている。
ミーハーな私たちには嬉しい。

「山羊乳のバヴァロア」(第4話)

「これから始まる料理は、こういう味付けでこういう調味料を使っていきます」と、知ってもらうための「アントレ(前菜)」です。フランス語で前菜はアントレと呼びますが、この語源は玄関をさします。これがこのコースの入口になる、店の名刺代わり、という意味を込めています。
https://www.tbs.co.jp/grandmaisontokyo/cuisine/

カンテサンスのオープン当時からあるスペシャリテ。
3品目にして、いきなり大本命が出てきた。心臓がバクバクする。とても優しくてシンプルやけど、クリーミーな山羊乳と新鮮なオリーブオイルの香りが印象的。
季節によって山羊が食べる牧草が変わるため、季節によって味わいの変化が楽しめるとのこと。


「ナスのプレッセ」(第2話)

ドラマの物語は、秋から冬にかけてのお話なので、秋ナスをおいしく食べられる料理を考案しようと始まり、この料理になりました。
https://www.tbs.co.jp/grandmaisontokyo/cuisine/

ドラマの中では、グランメゾン東京の開店に必要な資金5,000万円の融資をうけるため、厳しい融資担当者を説得した一品。実際には「この料理が美味しいから」という理由だけではお金は借りれないだろうけど(実際にドラマ内でも別の力が働いていた)、人の心を動かすのは確かだと思う。

食べた瞬間に全身の細胞たちがスタンディングオベーションした一皿。(まだコースの序盤だというのに)
こっくりと濃厚なフォアグラに、酸味のあるナス、甘くないカカオの極薄チップ。すべてが最高のバランスで構成されていて、本当に味の芸術作品を口に入れているよう。

「リ・ド・ヴォーを入れたクスクスのサラダ」(第10話)

それぞれの料理人がいろいろなパーツを担当しているので全員の息が合わないと料理が完成しないチームワークが試される料理でもあります。
https://www.tbs.co.jp/grandmaisontokyo/cuisine/

ドラマの中では私が大好きな伝説のジビエハンター峰岸さんが山で採ってきた新鮮な芹をつかった料理。この日は確か芹じゃなくて、なんだったかな。でも香り豊かで色鮮やかな緑の粒粒と時折でてくる温かいリ・ド・ヴォー。
思わず、リンダ・真知子・リシャールのごとく天を仰いだよね。


「鰆のロースト」(第6話)

このお料理の最大の特徴は、火入れ。大きな塊のままで肉も魚も焼いて、焼いたあとに切り分けていくのが「カンテサンス」の代名詞にもなっている火入れの特徴です。
https://www.tbs.co.jp/grandmaisontokyo/cuisine/

ドラマに登場したメニューと全く同じではないけど、鰆の料理も出てきた。ドラマの中では、綿密に時間と温度を調整しながら“火入れ”にこだわる様子が印象的だった。
焼き目の香ばしさと極限までしっとりとした白身。
こんな鰆は食べたことがない。はじめましての鰆。

「メレンゲのアイスクリーム」(第4話)

僕が思う嫌いなものは、改善点がたくさんあるもの。自分が嫌いなものをテーマに料理をつくることが好きです。なぜならそこにはたくさんの伸びしろがあるから。
https://www.tbs.co.jp/grandmaisontokyo/cuisine/

岸田シェフが実は大嫌いだったという「メレンゲ」。これをどうにか美味しくできないかと試行錯誤してできたのが、この「メレンゲのアイスクリーム」だそう。

不思議なくらい口に入れた瞬間にフワッと溶ける。こんなに軽いアイスクリーム食べたことない。最後に吹きかけられる濃縮した海水が、塩味のグラデーションとなって波のように引いていく。お腹のキャパが粗食対応で、いつもコースのデザートは苦しみながら食べる私でも、これは覚醒するほどの美味しさだった。




ここまでで、料理人の姿は一切見えない。
終わりがけにシェフがテーブルを回ったりするのかなとドキドキしていたけど、どうやらそれもなさそう。

ちょっと残念に思いつつ、席を立って預けていたコートを受け取る。

あれ…?私のユニクロ(ウルトラライトダウン)がない…!
「あの~、、、私、もう一枚上着が、、、」
と言いかけたら、まさかの岸田シェフが持っとる~~~~~~~!!
私のユニクロを手に持ってシェフが静かに立っている。
味の芸術作品を作りだす神の手からユニクロをそっと奪い、少しはにかみながら「本当に美味しかったです…」と言葉少なに伝えた。

普段私は美味しいものを「美味しい」という言葉で片づけることを避けている。でも、本気で美味しい時は「美味しい」しか出てこないのな。(その分、今6000文字を超える文字でお届けしています)

こんなgo to heavenな料理を一切の妥協も隙もなく繰り出してくるシェフが、実際にお会いするとなんとも控えめでかわいらしくて。14年も連続で三ツ星とってるのに全然ドヤってない。シェフの形した神様なんじゃないのかな?私は自分が思うよりも早めに天国にきちゃったんじゃなかろうか?

さて、気になるお会計は?

夢見心地な話からいきなり現実的で申し訳ない。
あんまりお金の話はしたくないけれど、関西では必ず「ほんでナンボやった?」と聞かれるのでご参考までに書き記します。

おまかせコース+ワインペアリング+シャンパン+フロマージュ=59,650円

予算オーバーしてるやん!って?
でもさ、こんなに全身の細胞総動員で一生覚えておきたいフルコースだとしたら安くない?間違いなく、人生に刻まれた時間だとしたら安くない?しょうもない居酒屋で飲み過ぎて記憶なくす所業を何十回もやらかしている方が高いわ。

あの美しい味がする料理たちが、今まさに自分の細胞に取り込まれて、血となり肉になろうとしてると思うと、無敵な気分になってきて免疫力が上がる。コロナになんてかかる気がしない。(実際にフレンチって、ソーシャルディスタンス、一人一皿、大声で話さない、ので飲食店の中で一番安全な食事のスタイルだと思う)

鮮烈な味の記憶は、痴呆症になってもきっとどこかに残っているはず。ボケた私が「ナスのプレッセを食べたいと」暴れたらごめんなさい。20万くらい握らせる準備しておきますので誰かカンテサンスに連れて行ってあげてください。

ほんで、予約ってやっぱとれへんの?

「ナンボやった?」の次に聞かれるのは
「予約ってやっぱり取りにくい?」なので、一応書いておきます。
答えは「取りにくくはあるが、頑張ればとれる!」だ。
ここから先は、実際にカンテサンスの予約を自力で取りたい人だけ読んでいただければ。

カンテサンスの公式サイトによると「2か月先までの同日までの予約」とある。つまり、これはどういうことかというと「行きたい日の2か月前の同日に予約が解禁になる」ということ。例えば、12月1日に行きたければ、その2か月前の10月1日に予約をとる!

方法は2つ!
「電話予約」「ネット予約」である。

ネット予約

・予約サイト「OMAKASE」にて。
・2か月前の同日朝9:30から予約受付スタート
・3名、4名、5~6名(個室)の場合のみネット予約可。※2名は不可
・予約後の人数変更は不可(人数が変わる場合はキャンセルして取り直し)
・予約時に1席あたり390円のシステム手数料がかかる。

電話予約

・電話番号:03-6277-0090
・予約受付時間:2か月前の同日13:30~15:30
・1~2名の予約可

※この情報は2021年1月11日現在のものです。詳しくは公式サイトにてご確認ください。→https://www.quintessence.jp/reservation.html

オンラインの方が取りやすいけど、1~2名の予約ができない。となると電話予約になるんですけど、、、難易度は高いです!私は何百回とかけ続けてつながったと思ったら、「満席」でした。でも、その電話の向こうのお兄さんがとても丁寧で気持ち良くて、それだけでも電話してよかったなと思う。飲食店の予約電話なんて、何かやりながら受けるのが当たり前やけど、きっとこの時間は予約を受けることに集中してるんだろう。もうこういうところから心つかんでくるのズルい。
結論としては、1~2名は電話でがんばる、3~6人はネット予約でがんばる


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最後に、インスタでよく見る岸田シェフとのショット。実物はとてもにこやかなのに、写真の時は真顔になっちゃうタイプの人なのね♡(私は右手にユニクロを握りしめて後ろに隠しています。)

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そして、最後に私はこの人にお礼を言わなければいけない。今回このスペシャルなテーブルを見事電話でゲットしてくれたのは友人のみえちゃん(右)です。

東京某社の部長であり、ダンサーであり、めちゃめちゃおもろい関東人です。あと食いしん坊。予約をゲットした2か月前の同日10月9日は彼女の誕生日で。自分の誕生日当日13時30分に必死のパッチで電話して自力で予約をとってくれた彼女には感謝しかない。私の走馬灯のワンシーンを作ってくれてありがとう。

こんな贅沢は一生に一度でいいやって思ってたけど、、、

次はいつ行く?春くらいかな?


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