サウザンド リーブス(千葉県)

年末、店内に元千葉県民など関東出身者たちが偶然居合わせた時間があった。「イトーヨーカドーのポッポ、マジ大好きだった~」とOさんが言う。僕は幕張のヨーカドー内にあるポッポという名のフードコートで過ごした時の空気感を瞬時に思い出した。「高校生くらいになると友達がポッポでバイトしたりするんだよね~。秘密でポテト山盛りにしてくれたりとか。」と、Oさんは高校時代の思い出を語る。そうだった。そんな感じだった。
中学生の時の夏休み、部活を昼に終えると、とりあえずヨーカドーに集合していた。集まって口にするのは「金ねえ~、やることね~、つまんね~」だった。合言葉のようにそう言いながら、ヨーカドー内を徘徊し、最終的に辿り着く場所がいつもポッポだった。高校になると、フードコートには何人かの見知った人がバイトする姿を見た。
当時は何も楽しいと思ってもいない、むしろすべてが大規模な商業に囲まれてしまっている幕張を退屈だと感じていた。でも、あれはあれで良い時間だったかもなとOさんたちの話しながら思った。ポッポを思い出した時に意図せず口に出たのは「ポッポ!おれたちのポッポ!」だったから。
冬の関東。灯油を売る放送の音や、カラッと晴れた空気感。成田山に集う人。
店にいた関東出身者たちは年末からそれぞれの実家へ帰り、関東でお正月を過ごすのだという。千葉の冬、幕張の町に流れている時間や空気を思い、外国ぐらい環境が違うなと感じる。と同時に、漫画の「ちびまるこちゃん」で描かれている1970年代中盤の日本の町の姿も今や外国だなと思った。

で、僕は去年と同じく三徳山三佛寺へ初詣に行った。カラッと晴れない元旦にももう慣れて、雨の中を傘を差し、みちくんを抱き、あきなと一緒に三佛寺へと続く階段を登る。山にかかる霧のような雲や、雨の雫を湛える椿の葉も良い感じだと思えた。そんなふうに思える自分の変化に拍手を送りながら階段を登った。
帰り道、峠を越える頃には雲間から日が射した。良い年になる気がした。

でも夕方に能登半島で大地震が起きた。
人が助かりますように。大事なものが引き続き大事にされ続けますように。と祈った。
祈ってばかりだ。


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