2024.4.22 「では、そろそろ本を読みますか」

ずっと読みたかった『釜ヶ崎と福音』をようやく読み始めた。牧師の本田哲郎さんが、教会の外へ出て、釜ヶ崎の街で「貧しく小さくされた者たち」と時を過ごす。その時の中で、キリスト教という宗教をこれまでとは異なる読み方をするという話し(多分)。まだ1/5も読めていないが、心打たれる言葉に出会う度に、秋さんのことが頭に浮かぶ。この本をくれたのは秋峰善という人で、最近『夏葉社日記』という本を自力で出版した人だ。僕は『釜ヶ崎と福音』を読み進めながら、まずは『夏葉社日記』を読まなくてはいけないような気がしてきた。それでさっき、棚から『夏葉社日記』を手に取り、読み始めたところだ。

憧れの出版社、夏葉社で働き始めた秋さん。夏葉社では、昼休みに読書の時間が設けられているという。そして、その読書の時間には「なるべく難しい本」を選ぶようにと言われたらしい。秋さんが選んだのは『野生の思考』だ。いつもの店で昼食を終えたあとに「では、そろそろ本を読みますか」と島田さんが言う。ページを捲るだけの静かな時間が流れる。ちょっと背伸びをして選んだ本を、尊敬する賢者と共に静謐な空間で読む。なんて良い時間。
僕はこの箇所を読んで、中学生の時の「朝の読書」の時間を思い出していた。朝の光の中で、カーテンが揺れる。誰一人何も喋らない教室で、僕は野田知佑を読んでいた。当時の自分にとって、ちょっと背伸びした本。未知の世界を覗くことになるという予感を胸に、許された時間の中で堂々と本を読む喜び。そうだ、僕はそれが大好きだった。そのことを久々に思い出した。   

今は17時20分で、今日は一人もお客さんが来ていない。久しぶりに来店者0の日になるかもしれないと、さっきまでそのことばかり考えていた。でも、そんな日があっていい。本屋は商売だが、お客さんが来ないことと「本を読む喜び」とは関係がない。
お客さんの来ない時は「読書の時間」にしよう。許された時間をつくりたい。まずは、読んでないくせに「僕のバイブルです。読んではないけど。」とずっと言っている『野生の思考』を僕も読もうかな。『夏葉社日記』を読み終えたら。

今、17時58分。閉店まであと一時間。奇跡が起こって10万円分くらい買ってくれる富豪の来店を祈る。

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