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地域は欧米豪の観光客をつかめ*

*2022年8月9日
佐賀新聞「私の主張」にて、一部修正して掲載。

世界経済フォーラムが発表した観光競争力ランキングでは日本が初めて首位に立った。
日本の自然や文化資源、安全性や交通インフラが世界的に高く評価されており、国内ではインバウンド需要の回復に期待は高まるはずだ。

国の統計によると、2019年、外国人旅行者の地域別内訳は、東アジア・東南アジア(以下、アジア)が83%を占め、欧州や北米、豪州(以下、欧米豪)は13%を占めた。アジアと地理的に近い九州は、アジアは95%、欧米豪は4%を占めていた。
コロナ前、外国人旅行者はアジアに偏重していた。また、アジアのインバウンドは地政学リスクの影響を大きく受けたことも記憶に新しい。

すでに、アフターコロナのインバウンド戦略は各地で検討されていると思う。
本稿では、地域が欧米豪の誘客に真正面から取り組む戦略を推奨したい。
欧米豪の旅行者は滞在期間が長く、旅行消費額も高いことが知られている。それゆえ、地理的には遠くても、欧米豪を増やすことはインバウンド需要の安定化に寄与し、また、地域の新しい観光資源の開発にも繋がると考えるからだ。

まず、欧米豪の旅行者の特徴に触れておきたい。日本政策投資銀行と(公財)日本交通公社が共同で実施した直近の外国人旅行者の意向調査によれば、欧米豪の旅行者は、アジアの旅行者とは違う関心や傾向を示しているので興味深い。
例を挙げると、旅行者の関心として、アジアでは桜見物や温泉の入浴に人気があるが、欧米豪では日本庭園や史跡・歴史的建築物の見物、日本文化の体験が上位に入る。
また、欧米豪はサステイナブルな取り組みに敏感な傾向があり、徒歩や自転車での移動、自然を損なわないアクティビティ、地元の人との対話・交流などを期待しているようだ。

ちなみに、同調査によると、観光地の認知度は、東京、京都、大阪を除くと、北海道、沖縄、広島、長崎などに限られている。欧米豪ではそれ以外の地域はあまり知られておらず、逆に言うとポテンシャルがある。

以上、欧米豪の旅行者の関心や傾向、認知度からすれば、彼らと地域との相性は悪くはない。
そこで、地域の誘客の施策としては、例えば5日間の滞在型旅行商品をゼロから作ることをお勧めしたい。そのためには、宿泊や飲食に関わる事業者だけでなく、博物館の学芸員やガイド、工芸や芸術に携わる人、老舗の商店主、クリエーターや建築家、学生などが集まって、知恵を出し合いたい。地域の個性豊かな観光資源を引き出した欧米豪向け商品の開発は、いずれアジアの旅行者にも活かされるはずだ。

欧米豪の旅行者の開拓は敷居が高いという人も多いと思うが、国内には、約17万人の欧米豪の人たちが住んでおり、まずは、日本に馴染みのある彼らに向けて旅行商品を作ってみてはどうか。英語はデジタルのデバイスに任せ、方言で堂々と旅行者と向きあうことで、地域の良さは必ず伝わると信じている。
インバウンド需要の回復は、新しい地域と欧米豪の旅行者との出会いから始まることを期待したい。

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