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漂白剤=美白❓

 次男が使っているピアノ、もう随分長い間メンテナンスもせずにほっぽってある。

 鍵盤のうちのひとつは下に降りたままで、すぐには戻ってこないという。

 機械モノなら、私が油を差したり、磨いたり削ったり、しばいたりしてやるところだが、楽器とあってはなかなかそういう訳にもいかない。

 何年振りになるであろう調律をお願いすることにした。

 それで鍵盤の動作まで回復するのかどうかは知らないが、専門家に見てもらうのが一番だということになったのだ。

 しかしその前に・・・
 ピアノの上の写真や置き物、賞状を入れた額縁やトトロのぬいぐるみ、雑多なものがところ狭しと並んでいる。
 こいつらを処分・・ひとまず片付けねば。

 そして真っ白であっただろうレースのカバーが黄ばんで。埃を纏っている。

 これは普通に洗っていては埒が明かないと言いながら妻は、バケツに漂白剤と共に放り込んでムギュムギュと押し洗いし始めた。

その後、しばらくして、

「おー!すごいすごい!見てみてこれ~白くなった!」

 そりゃ漂白剤につけたら白くもなるだろうと思いきや、レースのカバーではなくて、妻の手のことだった。

 見ると、確かに指先から手首の上辺りまでがあきらかに白っぽくなっている。

 妻は陸上競技をしていたこともあり、夏は無理に美白なぞせずに焼いてしまえというタイプだ。
 なのでまだ夏の始めであるにも関わらず、すでにかなり黒い。

 本人それで良いのだと表面的には豪語しているが、日焼け止めは欠かさず塗るものの抗えない運命のようなものに振り回されている心境であることを私は知っている。

 その妻が、漂白剤により白くなった自分の手を見て歓喜しているのが、なんともあはれを誘うではないか。

 ひとつ私が心配なのは、今晩のお風呂が、まさか漂白剤風呂になることはないだろうかということのみである。



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